OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ポール・デスモンドの品格と和み

2009-02-14 10:43:12 | Jazz

First Place Again / Paul Desmond (Warmer Bros.)

世の中、相性というものが大切なのは言わずもがなですね。

人気アルトサックス奏者のポール・デスモンドにしても、単独行動よりは、長年のバンド仲間だったデイヴ・ブルーベックのゴツゴツしたピアノがあってこそ、持ち前のソフトで浮遊感満点という個性が最高に発揮されていたと思います。

そしてもうひとり、こちらは盟友ともいうべき同じ資質を持ったギタリストのジム・ホールとの共同作業も素晴らしい限りです。それは残されたポール・デスモンドのリーダーセッションで名盤とされるアルバムのほとんどが、この2人を主役としたものという事実でも明らかでしょう。

実際、一聴してシビレるソフトな情感と品格さえ感じる歌心優先主義の演奏からは人気盤が続出していますし、本日ご紹介のアルバムも、そのひとつとして世評の高いものでしょう。

録音は1959年9月5~7日、メンバーはポール・デスモンド(as)、ジム・ホール(g)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds) という、思わずニヤリのカルテット♪♪~♪ ほとんど最初から目論見がミエミエの企画にして、これが見事に当たってしまったのです。

A-1 I Get A Kick Out Of You
 思わずウキウキしてくるような軽快なテンポ、そして絶妙の歌い回しが冴えわたる有名スタンダード曲の演奏♪♪~♪ それがホール・デスモンドでしかありえない、あのソフトなアルトサックスの音色で楽しめるのですから、初っ端から桃源郷へと誘われます。
 ドラムスとベースのMJQコンビが送り出す、安定して鋭いビートも心地良く、ポール・デスモンドのアルトサックスは自在に空間を浮遊しつつ、時折、思い切ったフレーズも繰り出すという得意技を完全披露していますが、ジム・ホールも味わい深い伴奏とアドリブソロで存在感を誇示しています。

A-2 For All We Konw
 せつない「泣き」のスタンダード曲を、このメンツが演じてくれるという嬉しさに、テーマメロディが出た瞬間から涙がこぼれそうになるほど、心が震えます。
 ポール・デスモンドのアルトサックスは、最高の思わせぶりとメロディフェイクが絶品! またジム・ホールの伴奏の上手さは閃きに満ちていますし、アドリブパートでの抑制された感情の高ぶりが、これまた職人技なんでしょうねぇ~♪
 淡々としたドラムスとベースも自分達の役割を弁えた個人芸だと思います。

A-3 Two Degrees East, Three Degrees West
 MJQの親分であるジョン・ルイスが書いた不思議なブルースで、実はジム・ホールとパーシー・ヒースは既に1956年製作の人気盤「Grand Encounter (Pacific Jazz)」で快演を残していた曲ですから、ここに生まれた新バージョンが名演となるのも必然でしょう。
 とにかくポール・デスモンドの演奏は畢生として間違いないほどに充実し、その抑制されたブルースフィーリングは白人ジャズの頂点かもしれません。淡々としながらグイノリの黒人ビートを出してくるドラムスとベースの存在感も強く、また奥深いイントロと伴奏、さらにクールな熱気に満たされたアドリブが凄いジム・ホール!
 全く聴くほどに感動が湧きあがってくると思います。

B-1 Greensleves
 誰もが一度は耳にしたことのある有名なイギリス民謡のメロディですから、それを堂々と演じて臆することのないポール・デスモンドは流石! 爽やかにして哀愁が滲むテーマ部分からのフェイクとアドリブの素晴らしさは唯一無二です。
 そしておそらくは生ギターを使っているジム・ホールが、これまた最高級のイントロから伴奏、そして短すぎるアドリブソロまで完璧な助演で、間然することの無い仕事をしています。

B-2 You Go To My Head
 これもまた有名スタンダード曲ですが、まさにこのカルテットにはジャストミートの演目でしょう。フワフワとメロディをフェイクしていくポール・デスモンドのアルトサックスには、春風のような温もりと爽やかさがいっぱい♪♪ 何よりも、そのソフトな音色の魅力に完全KOされてしまいますし、もちろんアドリブフレーズは歌心の塊ですねぇ~♪
 ジム・ホール以下のリズム隊も、完成度の高い纏まりとスリルを感じさせるインタープレイを両立させた素晴らしさだと思いますが、このあたりは譜面とかあったのか否か、ちょいと気になるところでもあります。

B-3 East Of The Sun
 いきなり流麗にしてクールなアルトサックスが個性的なメロディフェイクというテーマ部分だけで、ポール・デスモンドのジャズセンスが横溢した名演だと納得させられます。自然体で盛り上げていくリズム隊も、実に上手いですねぇ~♪
 そしてアドリブパートでは快適なテンポで気持ち良い演奏を繰り広げるバンドの一体感が最高の極みつきです。特にジム・ホールの伴奏は絶妙にして快感を呼ぶコードの使い方が抜群! アドリブソロの素っ気なさも、逆に新鮮な感じだと思いますし、終盤でのソロチェンジからアルトサックスとの絡みを聴けば、ゾクゾクするしかありません。。

B-4 Time After Time
 オーラスは和みのバラード、その決定的な演奏バージョンが、これです。
 ジム・ホールが耳に馴染んだメロディを、全くの独り舞台で演じた後からは、ソフトな音色でアルトサックスのアドリブが続くいう、このあたりはデイヴ・ブルーベックとのバンドでも十八番としていたポール・デスモンドならではの展開ですから、安心感があります。
 全体としては淡々として墨絵のような味わいの演奏かもしれませんが、それゆえに何度聴いても味わいが深まるばかりというか、アルバムの締め括りには最適かと思います。

ということで、穏やかな温もりが心地よい演奏集です。

最近の世相からギスギスしがちな雰囲気や心持には、必需品になるかもしれませんねぇ~♪ 実際、仕事に責められているサイケおやじは、これを聴いて和んでいるのでした。

コメント
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