OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マクリーンの無愛想な過激盤

2009-02-02 10:09:47 | Jazz

Right Now! / Jackie McLean (Blue Note)

ジャッキー・マクリーンは歴史的に云々される存在ではありませんが、モダンジャズ全盛期を大いに面白くした人気者ですよね。その「青春の情熱」としか形容出来ないアルトサックスの泣き叫び、せつない心情吐露、やるせない思いを激白したようなアドリブソロには、何時も胸が熱くなるサイケおやじです。

このアルバムは数多いジャッキー・マクリーンのリーダー作の中では、比較的忘れられがちな1枚ですが、その内容は思いっきりの良いワンホーン演奏!

録音は1965年1月29日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as) 以下、ラリー・ウィリス(p)、ボブ・クランショウ(b)、クリフォード・ジャーヴィス(ds) という新進気鋭のリズム隊も魅力的です。

A-1 Eco
 簡単なリフというよりも、ジャッキー・マクリーンがキメに使っているアドリブフレーズから作られたようなオリジナル曲で、アップテンポの痛快な演奏が繰り広げられています。
 とにかくシャープで躍動的なクリフォード・ジャーヴィスのドラミングを筆頭に、鋭い感性で必死の追走を聞かせるリズム隊と激情の爆発としか言えないジャッキー・マクリーンのアルトサックスが、文字通りに暴走しまくっていますよっ!
 ちなみにラリー・ウィリスは当時、ジャッキー・マクリーンに見出されて第一線に出たばかりということで、モード系のスタイルを基調にした真摯な演奏姿勢は良い感じ♪♪~♪ また、フレディ・ハバードのバンドレギュラーも務めるクリフォード・ジャーヴィスのドラミングも、本当に爽快ですよ。

A-2 Poor Eric
 ラリー・ウィリスが書いた哀切のバラードで、一説によるとエリック・ドルフィーに捧げられたと言われていますから、まさにジャッキー・マクリーンの資質にはジャストミート! もちろん、あのせつない音色とギスギスしたフレーズ展開が特有の「マクリーン節」が全開となった、隠れ名演の極みつきが聞かれます。
 沈んだムードをヘヴィなビートで支えるボブ・クランショウのペースにも地味な良さがあり、ラリー・ウィリスの美しいピアノタッチとクールな感性が醸し出す深い味わいアドリブも秀逸! 似たようなスタイルのハービー・ハンコックのような完成美はありませんが、逆にフレッシュな印象は感度良好だと思います。

B-1 Christel's  Time
 これもラリー・ウィリスのオリジナル曲で、今度は一転して激しくドライブした演奏が最高です。あぁ、テンションの高いテーマアンサンブルからして、歓喜悶絶ですねぇ~♪
 最初っから全力でブッ飛ばすジャッキー・マクリーン、それをビシバシに煽るクリフォード・ジャーヴィスの熱血ドラミング、揺るぎないビートを支えるボブ・クランショウ、そして弾ける若さのラリー・ウィリスというバンドが一丸となった自己主張こそが、モダンジャズ最良の瞬間かもしれませんねぇ~♪
 こういう何のヒネリも思惑も感じられないストレートな演奏、私は大好きです。

B-2 Right Now
 ちょっと疑似ジャズロックのような味わいも深いアルバムタイトル曲は、同じくジャッキー・マクリーンの子分だったチャールズ・トリバーのオリジナルということで、モード系の熱くてヘヴィな爽快演奏になっています。
 それはテンションが高すぎてアブナイ雰囲気満点というリズム隊の大奮闘、そして負けじと好き放題に吹きまくるジャッキー・マクリーンの物凄さ! これを聴いて熱くならないファンは皆無と思われるほどですが、サビで一瞬の和みが表出する曲の構成が、これまた絶妙なんですねぇ~~♪

ということで、非常にハードな演奏集です。妥協なんて甘い言葉は、このアルバムには無縁だと思いますねぇ。それゆえにジャズ喫茶では相当な御用達になっていた店もあるほどでしたし、これが鳴りだすと、思わず飾ってあるジャケットを見るお客さんも珍しくありませんでした。

ただ、このアルバムが不幸なのは、自宅鑑賞に向いていないということでしょうねぇ……。実際、私も好きなのに長い間、入手するのを躊躇っていました。しかし内容は、やっはり痛快なモダンジャズの真髄で、こういうハードな雰囲気って、どんな世界でも必要だと思うんですよ。

しかもそれは決してフリーとかデタラメじゃなくて、ある意味では同時期のジョン・コルトレーンの諸作よりも、ずっと聞き易いはずです。アルバム全体に直球勝負の快感があるんですねぇ~♪

愛想の無いジャケットデザインも、そうした中身を端的に表現しているようで、逆に潔い感じです。

コメント
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