OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

デューク・エリントンとレイ・ブラウン

2009-02-13 10:09:21 | Jazz

This One's For Blanton! / Duke Ellington And  Ray Brown (Pablo)

偉大なバンドリーダーにして20世紀アメリカを代表する作曲家でもあったデューク・エリントンは、また個性的なピアニストでもありました。一説によれば、そのスタイルと感性はセロニアス・モンクやセシル・テイラーにも繋がるらしいのですが、確かに直截的なピアノタッチと硬質なスイング感、ツボを押さえた歌心やコードの使い方は、現代でも全く古びていないと思います。

ですからデューク・エリントンのピアノを中心としたセッションからは、チャールズ・ミンガス&マックス・ローチという猛者と組んだ「Money Jungle (United Artists)」が怖すぎる名盤になり、あるいはジョン・コルトレーンの畏敬の念が滲み出た人気盤「Ellington & Coltrane (Impules!)」が誕生するのも、ムベなるかな!

そしてジャズの歴史本によれば、デューク・エリントンのピアノが最高の偉業とされるのは、1940年に自分の楽団に在籍していたベーシストのジミー・ブラントンとデュオで録音したセッションだとされています。

このジミー・ブラントンという人は、モダンベースの開祖とされる偉人で、1930年末にデューク・エリントン楽団に入り、1942年には病死するという早世の天才でした。しかも残された録音は、ほとんどがデューク・エリントン楽団でのものばかりで、前述したデュオのセッションは特に重要作とされていますが、実際にはジャズ喫茶で鳴ることはほとんどないの我が国の現実でした。

さて、このアルバムはそんな歴史的偉業を現代に再現しようとした企画で、ジミー・ブラントンの代役には、その直系の名手とも言うべきレイ・ブラウンが抜擢されています。

録音は1972年12月5日ですから、録音の良さも当然ということで、これは発売当時のジャズ喫茶でも、ちょっとした人気盤となり、偉人の過去の業績がようやく認識されたというか、私は素晴らしき錯覚に酔いましたですねぇ~♪

 A-1 Do Nothin' Till You Here From Me
 A-2 Pitter Panther Patter
 A-3 Things Ain't What They Used To Be
 A-4 Sophisticated Lady
 A-5 See See Rider
 B-1 Fragmented Suite For Piano And Bass

まずはベースの響きの生々しさ、そしてピアノタッチの鮮烈さが見事に楽しめる秀逸な録音が高得点です。今となっては、このあたりの感想なんか当たり前になっていますが、1970年代前半では、ちょっとした驚きでした。

肝心の演奏はデューク・エリントンのピアノよりも、レイ・ブラウンのペースワークの素晴らしさと協調性に感動させられます。

まず「Pitter Panther Patter」と「Sophisticated Lady」の2曲はジミー・ブラントンとのセッションから再演されたものですが、オリジナルバージョンのベースばかりが目立っていた録音とは異なり、こちらはデューク・エリントンのピアノが相当に活躍していますから、レイ・ブラウンも忌憚の無い大ハッスル! 特にジミー・ブラントンがアルコ弾きを演じていた「Sophisticated Lady」では、繊細で力強いピチカートの美技を披露しています。

また「Do Nothin' Till You Here From Me」や「Things Ain't What They Used To Be」というデューク・エリントンではお馴染みの曲も、そのグルーヴィなムードや原曲メロディの魅力を存分に活かしたヘッドアレンジが素晴らしく、ピアノはベースを信頼し、またベースはピアノを尊敬した協調ぶりが伝わる名演だと思います。

う~ん、実に良い雰囲気でモダンジャズの真髄が楽しめますねぇ~♪

そうです、これはとても「モダン」であり、既にして不滅のジャズの魅力が横溢しているとしか言えません。

その意味で古いブルースの「See See Rider」が、楽しくもエグイ表現を忍ばせて演じられるのは流石だと思います。デューク・エリントンのピアノが素直に鳴れば、レイ・ブラウンの凄いテクニックが裏ワザを披露する展開には、思わずニヤリです。

そしてB面全部を使った「Fragmented Suite For Piano And Bass」は4つのパートで構成された組曲形式の演奏ですが、決して勿体ぶったものではなく、タイトルどおりにピアノとベースの魅力が存分に楽しめると思います。

もちろん即興演奏の緊張感、スリルとサスペンスがジャズならではの快感に繋がるのは言わずもがなでしょう。

おぉ、確かにデューク・エリントンのピアノからは、セロニアス・モンクやセシル・テイラーへと繋がる「何か」を秘めているのが実感されますし、レイ・ブラウンの変幻自在のペースワークは決してビートの芯を失わない見事さで演奏全体を絶妙にリラックスさせるのですから、全体で20分近い構成も飽きずに聴き通せるのです。

ということで、これは狙い通りの企画が見事に実現された好盤♪♪~♪ 聴く前には、あまりにも生真面目な印象も強いのですが、実際はなかなか和みの名演集として、麻薬的な魅力があるんじゃないでしょうか。

コメント
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