OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

濃縮5倍のミンガス

2009-02-19 12:18:44 | Jazz

Mingus, Mingus, Mingus, Mingus, Mingus / Charles Mingus (Impulse!)

俺はお前のことを考えて、鬼のような事をする!

という言い訳が続く今日、この頃です……。

本当は相手の事よりも、自分が大切だという台詞に他なりませんね、これは。相手から鬼と思われても、納得するしかないのでしょうねぇ……。あぁ、哀し……。

というゴタゴタしてギトギトの日常から少しでも逃れるために、本日はこのアルバムを出してきました。

長ったらしいタイトルは、通称「ファイブ・ミンガス」と呼ばれる名盤で、ミンガス親分が集めた白黒混成の大型バンドが、デューク・エリントン風味に彩られた脂っこいモダンジャズを聞かせてくれます。

録音は1963年1&9月、メンバーはチャールズ・ミンガス(b) 以下、ロルフ・エリクソン(tp)、リチャード・ウィリアムス(tp)、エディ・プレストン(tp)、ブリット・ウッドマン(tb)、クェンティン・ジャクソン(tb)、ドン・バターフィールド(tu)、エリック・ドルフィー(as,fl)、チャーリー・マリアーノ(as)、ジェローム・リチャードソン(ss,bs,fl)、ブッカー・アーヴィン(ts)、Dick Hafer(ts,fl)、ジャッキー・バイアード(p)、ウォルター・パーキンス(ds)、ダニー・リッチモンド(ds) 等々が入り乱れの、基本は11人編成のバンドです。

A-1 Ⅱ B.S. (1963年9月20日録音)
 いきなり響きわたるミンガス親分の強靭なベースをイントロに、これが典型的なミンガス流儀のリフが熱く合奏され、そのアンサンブルにはデューク・エリントン楽団に敬意を表したというよりも、完全な真似っ子という彩が添えられています。
 このあたりはパクリというよりも、尊敬の念というか、「愛のあるいただき」でしょう。
 そしてアドリブパートではブッカー・アーヴィンとジャッキー・バイアードがモードも使った熱血、さらに温故知新の表現を聞かせてくれますが、やはり短い演奏時間の中に、カッチリと纏まったバンドアンサンブルが最大の楽しさに、思わずイェ~♪

A-2 I × Love (1963年1月20日録音)
 これも曲名は変えてありますが、ミンガス親分の以前のオリジナル曲を丹念にアレンジし直した演奏で、それはもちろん、デューク・エリントンの手法を忠実に取り入れたものです。参加したサックスプレイヤーがフルートからバリトンサックスまで、いろいろと持ち替えて作り上げるハーモニー、またブラス陣の細かい芸が本当に秀逸ですねぇ~♪
 ジョニー・ホッジスを思わせるアルトサックスはチャーリー・マリアーノでしょうか、なかなかにシビレますよ。

A-3 Celia (1963年1月20日録音)
 これもチャーリー・マリアーノのアルトサックスが大活躍する情念の名曲で、混濁したハーモニーを聞かせるバンドアンサンブル、さらにゴスペル風味のリズム隊が強烈なドライヴ感と芯の強いビートを聞かせてくれる名演です。
 全体のテンポは緩やかな部分と熱気に満ちたハードバップど真ん中のパートが交互に現れますが違和感は無く、グッと惹きつけられます。

A-4 Mood Indigo (1963年9月20日録音)
 これはご存じ、本家デューク・エリントン楽団の代表曲を完全コピーに近い雰囲気でカバーしていますが、しかし決してパロディとは思えない演奏です。
 特にミンガス親分のペースがソフトで深みのあるバンドアンサンブルと協調しながらも、強烈な自己主張を聞かせていますから、これは1939年頃から同楽団に在籍し、モダンベースの基礎を作ったとされるジミー・ブラントンへのトリビュートにもなっているようです。

B-1 Better Get Hit In Yo' Soul (1963年1月20日録音)
 これもまたミンガス親分の代表曲「Better Get It In Your Soul」の改作バージョンで、強烈にアクの強いゴスペルハードバップが堪能出来ます。アップテンポで突撃していくバンドの勢い、アンサンブルの混濁した状況と激しいリズム&ビートの嵐には、圧倒されると思います。
 ゴッタ煮のアドリブパートでは叱咤の掛け声や各種楽器の咆哮、さらに手拍子も賑やかに盛り上がっていく展開が、最後には予定調和へ収斂していくと思いきや、土壇場では痛快なカーテンコールが楽しいですよっ♪♪~♪

B-2 Theme For Lester Young (1963年9月20日録音)
 これも曲名は変えられていますが、実はミエミエに有名な「Goodbye Pork pie Hat」がデューク・エリントン風味にアレンジされた、ミンガス親分会心のオリジナルです。
 スローで、そこはかとない佇まいが強く滲むテーマメロディとハーモニーの麻薬的な魅力は、プッカー・アーヴィンの秘めた情熱のアドリブでさらに濃縮され、ジワジワと効いてきます。

B-3 Hora Decubitus (1963年9月20日録音)
 初っ端から熱いミンガス流儀のハードバップが大編成で演じられるという、この快感がたまりません。イケイケでグイノリのバンドアンサンブルは、参加メンバーがそれぞれの役割をしっかりと果たしながら、決して迎合していません。
 そういう挑戦的な姿勢はアドリブパートで尚更に鮮明となり、ブッカー・アーヴィンからエリック・ドルフィーへと繋がる背後では怖いリフ、おまけに強烈な存在感を示すミンガス親分の4ビートウォーキングがありますから、一瞬の油断が命取り!
 ですからリチャード・ウィリアムスのトランペットが、つんのめったような勢いになるのもムペなるかな! もはやバンドの全員が火の玉となった大熱演です。

ということで、演目のほとんどはミンガス親分ではお馴染みの名曲ばかりですから、案外と聴き易い仕上がりだと思います。しかもコクがあって熱気に満ちた演奏は、モダンジャズでは特級の名演ばかり! ある意味ではチャールズ・ミンガスのベスト盤かアンソロジー的な面白みもあるように思います。

ちなみにジャズ喫茶ではB面が定番だと思われますが、個人的にはA面でのチャーリー・マリアーノの活躍が印象的で、自宅ではこちらを聴くことが多いと、告白しておきます。

それと同時期のセッションからは、もう1枚、「The Black Saints & The Sinner Lady (Impulse!)」という凄いアルバムも作られていますから、合わせてお楽しみ下さいませ。

コメント (2)
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