OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

絶品のケリーとソニー・クリス

2009-02-24 09:56:59 | Jazz

Sonny Criss At The Crossrroads (Peacock)

1970年代初頭からの幻の名盤ブームによって、日本は諸外国からも再発天国と羨ましがられる状況となりましたが、それはCD時代になっても尚更に継続していますよねぇ。

例えば本日ご紹介の1枚は私にとって、長年の夢の憧れというアルバムでした。それが1994年になって、しかも当時は目からウロコの温故知新という、紙ジャケット仕様で再発されたのですから、感涙でした。

実はその遥か以前、1974年頃のラジオ番組で、私はこのアルバムに収録の「Sweet Lorraine」を聴き、そのあまりの素晴らしさに絶句して憧れていたのです。しかしレコードそのものはウルトラ級の幻盤であり、ジャズ喫茶でも置いてあるところは……。

ちなみに制作レーベルの「Peacock」は黒人大衆音楽がメインでしたから、決して盤質が良くないというか、良質の塩ビが使われていないようなプレス状態が多く、それゆえに廉価だったかもしれませんが、思わずタメ息というブツも少なくありません。

それが我が国で再発されたCDは、なかなかリマスターの満足度も高い仕上がりでした。

録音は1959年3月、メンバーはソニー・クリス(as)、オレ・ハンセン(tb)、ジョー・スコット=ウイントン・ケリー(p)、ボブ・クランショウ(b)、ウォルター・パーキンス(ds) という、実に琴線に触れるバンドです。

01 Sweet Lorraine
 これが私を心底シビレさせていた演奏で、曲はご存じ、せつないメロディが涙を誘うスタンダード♪♪~♪ もちろんソニー・クリスは、それを情感満点に吹奏してくれますが、ウイトン・ケリーの愁いが滲むイントロからして、グッと惹きつけられます。
 あぁ、このミディアムテンポのジャズ的なムードの良さ! そして泣きじゃくるソニー・クリスの黒っぽさ、さらにウイントン・ケリーの思わせぶりにスイングするせつない歌心♪♪~♪ もはや何も言えません。
 ただ、ただ、ジャズを好きになって良かった……。全ての皆様に聴いていただきたいと、願うばかりです。

02 You Don't Know What Love Is
 これもまた、陰鬱にして泣きそうになるほど優しいメロディのスタンダード曲で、ここではオレ・ハンセンのトロンボーンが加わり、素晴らしい表現でテーマメロディをリードしていますが、ソニー・クリスのアルトサックスも泣いています。
 そしてウイントン・ケリーの絶妙にコントロールされたピアノの存在感♪♪~♪ ちなみに契約の関係で、ジャケットには Joe Scott と記載されていますが、聴けば簡単に正体がバレバレです。あぁ、最高っ!
 まさにブルーで、本当にせつなくなってしまう名演だと思います。

03 I Got It Bad
 これまたウイントン・ケリーの作るイントロが絶品! そして思わせぶり満点というソニー・クリスのアルトサックスが優しく泣いてくれますから、たまりません。本当に心が震えてしまうほどです。ちなみに曲はデューク・エリントン楽団の代表的な演目ですが、ここまでツボを押さえた秀逸なカバーも珍しいと思います。
 あぁ、それにしてもウイントン・ケリーは最高♪♪~♪ この時期はマイルス・デイビスのバンドレギュラーを務め、また他にも数多くの名演を残していた全盛期とはいえ、ここまで味わい深い表現は、生涯のベストセッションのひとつではないでしょうか。
 
04 Sylvia
 ソニー・クリスが十八番の泣きを披露したブルースで、その黒い表現とグルーヴィなリズム隊の快演によって、たまらないファンキーハードバップの魅力が横溢しています。
 またトロンボーンのオレ・ハンセンが、これまたハートウォームな味わいで高得点! ソニー・クリスの泣き節も含めて、全てが「歌」のアドリブフレーズは、思わず口ずさんでしまうほどです。
 そしてウイントン・ケリーがアドリブはもちろん、絶妙の伴奏で盛り上げていくんですから、そのあまりの素晴らしさには感涙して絶句するしかありません。あぁ、この粘っこいグルーヴと飛び跳ねフレーズの快感は、ジャズを聴く喜びに他なりませんねぇ♪♪~♪
 控え目ながら、健実なドラムスとベースも好サポートです。

05 Softly, As A Morning Sunrise
 これもご存じ、ウイントン・ケリーの十八番ですから、躍動的なイントロからスイングしまくった伴奏にサポートされたフロント陣も快調です。幾分、ホンワカムードのテーマ合奏から忽ち自分のペースでアドリブに突入していくソニー・クリスは、やっぱり良いです!
 もちろんウイントン・ケリーのアドリブは「お約束」の桃源郷ですし、オレ・ハンセンの安定感も侮れません。ちなみに私は、このトロンボーン奏者については、ほとんど知らないのですが、なかなかの実力者だと思います。
 
06 Butt's Delight
 アップテンポで突進する、これがソニー・クリスの得意するビバップ系モダンジャズ!
 とにかく一瞬も休まないアルトサックスの暴走を楽しめますが、強烈なドライヴ感でそれを支えるリズム隊も最高です。特にウイントン・ケリーの弾けた姿勢はヤバいほどですよっ!
 それと急速テンポを全く苦にしていないオレ・ハンセンの爆裂トロンボーンも強烈至極ですし、終盤のソロチェンジでメンバー全員が持ち味を発揮するあたりは、如何にこのセッションそのものが快調であったかの証明だと思います。

07 Indiana
 オーラスは古くからの有名スタンダードにしてビバップ創成のカギともなった曲ですから、ソニー・クリスも偉大な先人に敬意を表したかのような熱演フェイクが楽しめます。おぉ、チャーリー・パーカー!? ベニー・カーター!? いや、これはソニー・クリス!!
 そしてウイントン・ケリーが、もう最高としか言えませんよっ! この粘っこいスイング感は唯一無二、ファンキーにして歌心優先のフレーズ展開♪♪~♪
 さらにオレ・ハンセンの温もりトロンボーンが楽しくも、実にせつないアドリブを聞かせてくれますから、モダンジャズ万歳!

ということで、今回は特にサイケおやじの独善的歓喜悶絶が噴出したご紹介になっているかもしれませんが、これは真実だとご理解願います。とにかくハードバップ好きには、絶対に感涙の演奏だと思うんですよ。

ちなみにこのCDを入手して、ちょっと疑問に思えるのが、アルバムの曲構成です。原盤復刻を摸した紙ジャケットには、A面に前半の3曲が、B面には後半の4曲がアナログ盤の構成とされていますが、収録時間を考慮すれば、A面には最初からの4曲が入っていないとバランスがとれないのでは?

このあたりはオリジナルアナログ盤を見たことが無いので、気になるところです。

気になるリマスターの音質については、もちろんオリジナル盤との比較は出来ていないわけですが、なかなか力感がハードバップっぽいと思います。ちょっとドラムスが引っこんだステレオミックスのバランスも、結果オーライだと思います。

あぁ、こうなると、オリジナルのアナログ盤が欲しいですねぇ……。

しかし、このCDだって、個人的には棺桶盤! 皆様にも、ぜひとも聴いていただきたい傑作盤だと確信しております。

コメント (4)
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