OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

地獄の入口ピアノトリオ篇

2007-04-16 20:46:48 | Weblog

仕事にも本格的に復帰した本日、なんだっ! 仕事が山積み状態であり、来客は途切れず、トラブルもあったりして、クタクタでした。

つまり、なんだかんだ言っても、人間ドッグで安らいでいたというテイタラクなのでした。

ということで、本日は――

A Most Musical Fella / Lou Leve (RCA)

ピアノトリオのアルバムはジャズ者にとって避けて通れない地獄の街道だと思いますが、中でも白人ピアニストは奥が深くて恐い世界です。

本日の主役=ルー・レヴィは、西海岸派の名手で、けっこう知名度が高い存在ですが、残されたリーダー盤は全て入手困難度が極めて高く、しかも内容が良いんですから、実は嬉しい悲鳴状態でしょうか。

さて、ご紹介の1枚は、その中でも特に人気が高いブツで、有名スタンダードを正統派ピアノトリオで料理した逸品です。

録音は1956 & 1957年、メンバーはルー・レヴィ(p)、マックス・ベネット(b)、スタン・リーヴィ(ds) という、個人的に大好きな3人が揃い踏みしていますが、演目がまた魅力いっぱいです――

A-1 Night And Day (1957年1月2日録音)
 コール・ポーターが書いた有名曲ですから、妙な解釈は許されないところを逆手にとった快演になっています。もちろんテーマにはラテンのリズムが施されていますが、どういうわけか最初と最後がボサノバの「One Note Samba」みたいになっているんですねぇ~♪ もちろん、こっちが時代的には早い録音なんでしょうが、何かの秘密を垣間見たような気分にさせられます。ボサノバはブラジルのモダンジャズですから!
 肝心のここでの演奏は、バド・パウエル~ホレス・シルバーという美しき流れの上にあるルー・レヴィのピアノが躍動しまくりです。

A-2 Angel Eyes (1957年1月2日録音)
 これも有名スタンダード曲なんですが、絶妙のイントロが魅力的です。
 そしてムード満点なテーマ解釈には、これも味のあるオカズというか、装飾フレーズがあって、そのセンスの良さには脱帽です。

A-3 Lou's Blues (1956年11月15日録音)
 ルー・レヴィのオリジナルブルースですが、トリオの3者が一体となったグルーヴィな展開に心底、痺れます! あぁ、これが白人のトリオでしょうか!? 野太いマックス・ベネットのベースワークが主導するノリは最高ですし、ルー・レヴィのビアノは歯切れの良いタッチとネバリのフィーリングのコンビネーションが絶品!
 なかなかに黒い雰囲気が横溢していますから、本当に何時までも聴いていたい演奏です。

A-4 Yesterdays (1957年1月2日録音)
 スローな出だしで陰鬱な気分を誘い、インテンポしてからはバリバリとハードバップ真っ只中の演奏が展開されていきます。このあたりの静と動の対比は、まあ、お約束の世界かもしれませんが、ルー・レヴィの力強いタッチとマックス・ベネットのハードコアなベース、さらにグイノリのスタン・リーヴィのシンバルワークが堪能出来る名演になっています。

A-5 Apartment 17 (1956年11月15日録音)
 これまたルー・レヴィのオリジナルで、全篇が猛烈なビバップ魂に彩られています。つまりバリバリ弾きまくるという本領発揮のピアニストからは、バド・パウエル直系のエキセントリックな部分が感じられます。
 ちなみに当時、この3人はペギー・リーの歌伴奏をやる事が多かったそうですが、こういう演奏こそ、本当にやりたかったという本音の心情吐露が憎めません。

B-1 How About You (1956年11月15日録音)
 B面に入っては、これも人気スタンダードが快適なテンポで演じられます。
 しかしテーマ部分には、ちょっと茶目っ気のある解釈が加えられ、またアドリブパートでも全く手抜きしないグイノリの展開が、当に人気ピアノトリオの必要充分条件を満たしていると思います。
 マックス・ベネットのウォーキングベースのソロも良い感じですねぇ~♪

B-2 Baubles, Bangles And Beads (1957年1月2日録音)
 これこそ彼等が伴奏していたペギー・リーの十八番とあって、ここでの演奏も緻密で暖かい雰囲気が存分に楽しめます。もちろんグルーヴィな部分も抜かりなく、分かっているとしか言えない仕上がりになっています。
 意外とファンキーな歌心を披露するルー・レヴィの実力が良く出ているんじゃないでしょうか♪

B-3 Woody‘N’Lou (1957年1月26日録音)
 ルー・レヴィのオリジナル曲で、もちろんビバップの名曲「Woody‘N’You」を大いに意識した躍動的な演奏になっています。
 それは正統派ビバップであり、時代的にはファンキー味もありながら、このバリバリの雰囲気は何かしら白人的でもあると感じます。ただしその答えが見つからないうちに終わってしまうという、短い演奏なのが残念なのでした。

B-4 We'll Be Together Again (1957年1月26日録音)
 これもピアニストにとっては必須の有名スタンダードということで、お手並み拝見の演目なんですが、流石はルー・レヴィ! スローな出だしは全くのピアノソロでテーマを聞かせ、リズムが付いた部分からは「間」と「歌心」の絶妙な味わいが最高になります。
 ただしそこにはヒネリが加えられていますから、一筋縄ではいきません。このあたりに好き嫌いが出る仕上がりだと思います。

B-5 I'll Remember April (1957年1月26日録音)
 さてオーラスは、これもモダンジャズには必須の名曲なんで、どうしても名演を期待してしまうのですが、それに見事に応えてしまったという素直さが、どうにもとまらない! 本当にスカッとしますよ!
 特に中盤のブロックコードの乱れ打ちとか、ハードタッチの躍動感、さらにファンキーな味わいまでも披露して突進するルー・レヴィは魅力がいっぱいです♪
 もちろんベースとドラムスが絶妙のサポートに撤しているあたりが、本当の凄みではありますが♪

ということで、決してガイド本に載るような名盤ではないのですが、こういうブツが気になりはじめると、奥の細道を歩み始めることになります。

それは知らないピアニストが有名曲をやっているという誘惑が強かったり、あるいはジャケットが素敵だとか、聴いたことが無いのにそれだけが優先的に気になるというち、まあ、ある種の病気なんでしょうが、正直に告白すれば、私はこのアルバムによってその道に目覚めた過去があるのでした。

コメント
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