今日も暖かな好天気でした。アチコチの花壇ではチューリップが咲いているんですねぇ~♪ やっぱり春は和みます。
ということで、本日はヘヴィな和み盤を――
■Soul Stirrin' / Bennie Green (Blue Note)
黒人トロンボーン奏者のベニー・グリーンは、陽気でファンキーなフィーリングを持ったオトボケ派の名人ですが、たまには凄んでみました! というのが、このアルバムでしょうか。
とは言え、全く憎めない仕上がりになっているんですねぇ~♪
例えば任侠映画に出演する長門勇とか伴淳三郎あたりの演技を想起させられます。つまりトボケタ顔してババンバァ~ン♪ ってスパイダースになっちゃいましたが、とにかく濃~いアルバムだということです。
録音は1958年4月28日、メンバーはベニー・グリーン(tb)、ジーン・アモンズ(ts)、ビリー・ルート(ts)、ソニー・クラーク(p)、アイク・アイザックス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds)、そしてパブス・ゴンザレス(vo) という重量級の面々が揃ってしまいました――
A-1 Soul Stirrin'
ちょっとエキゾチックなイントロが合奏され、それが忽ちハードボイルドなテーマに変わりますが、ここがスキャットになっているのがミソ! エグミの強いボーカルはパブス・ゴンザレスという黒人シンガーで、この昭和歌謡グループの香りがする作曲も見事です。
ミディアムテンポを思いっきりヘヴィにするリズム隊も強力ですし、分厚いホーン陣の鳴りといい、あたりは真っ黒になりますねぇ~。ファンキーなオカズを入れまくるソニー・クラークも良い感じ♪
アドリブパートはベニー・グリーンがドロ臭い雰囲気で押し切れば、続くジーン・アモンズがボステナーの面目躍如という「泣き節」です。
またソニー・クラークが最高で、涙がボロボロこぼれます! あぁ、こういうマイナーなファンキー物では右に出るピアニストはいないかもしれません。
そして最後に出るのがディジー・ガレスピーのオーケストラで看板だったビリー・ルートいうハードバップ野郎! ハンク・モブレーとデクスター・ゴードンの中間を行くようなスタイルが好ましい限りです。
ちなみに、この曲はモノラルとステレオの両バージョンでちょっとした違いがありますので、それは聴いてのお楽しみ♪ 現行CDには両方入れているブツもあると思いますが、まあ、基本は一緒ですから♪
A-2 We Wanna Cook
初っ端からエルビン・ジョーンズのドラムスが炸裂するアップテンポのバップ曲! ここでもパブス・ゴンザレスのスキャットがテーマを彩りますが、いきなり始まるベニー・グリーンの爆裂アドリブに完全KOされるでしょう♪ 背後から襲い掛かるリフもお約束ながら、やはり楽しいです。
さらにジーン・アモンズがエグイ音色とフレーズ展開で続きますから、悶絶です。全体を引張るエルビン・ジョーンズの重量感満点のドラミングも強烈! ビリー・ルートのブローテナーにもノセられますねぇ♪
A-3 That's All
個人的には大好きなスタンダート曲で、そこに秘められた一抹の哀愁をジックリと堪能させてくれるベニー・グリーンのスローな吹奏にグッときます。寄り添うテナーサックスのハーモニーも素晴らしく、ソニー・クラークが中心の伴奏もソツがありません。
そしてこうなるジーン・アモンズが俺に任せろっ! 当にキャバレームード全開のアドリブながら、グッとこらえて心で泣いたテナーサックスの真髄を聞かせてくれます。
またソニー・クラークが珍しくも両手をフルに使ったカクテルピアノっぽいソロを披露しているのにも、和みます♪
全体にジンワリと心が温まる名演ですねぇ~♪
B-1 Lullaby Of The Doomed
これもパブス・ゴンザレスが書いたハードボイルドな名曲です。
スローでミステリアスなムードを演出する管楽器の響き、力強いリズム隊の蠢き、そしてベニー・グリーンの真摯な吹奏には、ちょっと既成のハードバップとは違うような感覚があるようです。
そして中盤で大活躍するのが御大ジーン・アモンズで、その存在感は流石の一言!
B-2 B.G.Mambo
タイトルどおり、ベニー・グリーンが書いたラテン調のウカレ曲です。
そしてこういう曲になるとエルビン・ジョーンズが十八番のポリリズムラテンビートを敲きだし、続けてアドリブパートではヘヴィな4ビートに転換するという絶妙なノリが楽しいところ♪
もちろんベニー・グリーンも本領発揮のオトボケ全開で、そのアドリブは陽気な歌心に満ちていますし、ジーン・アモンズはハードバップがド真ん中の激辛フレーズで勝負してきます。
またソニー・クラークは楽しいラテンビートで愁いが滲むフレーズを聞かせるという禁じ手ですから、泣かずにいられません♪
さらにビリー・ルートが、また良いんです♪ あぁ、これこそハードバップだと思います。
B-3 Black Pearl
オーラスは正統派ハードバップというか、いかにもブルーノートという重厚で颯爽とした演奏になっています。
アドリブパートではソニー・クラークがいきなりの快演♪ 例の泣き虫単音弾きを中心にスイングすれば、ジーン・アモンズは余裕のブローです。そしてベニー・グリーン、あんたは何時だって最高だけど、もっとオトボケ聞かせてよぉ!
さらにビリー・ルートが締め括るわけですが、エルビン・ジョーンズのドラムスが、実は一番熱いのでした。
ということで、非常に重量級のハードバップだと思います。特にエルビン・ジョーンズの存在感は抜群ですねぇ♪ もちろんソニー・クラークも、しかりです。
そんなリズム隊に支えられているのですから、ホーン陣も本領発揮というか、実は何時もとちょっと違ったヨソ行きの演奏になっているのですが、それでも最高にグルーヴィで黒~い出来上がりになっています。
正直言うとベニー・グリーンでは、もっと他の楽しいアルバムがあるんですが、この作品については聴く度に、やっぱり良い! と思わざるをえません。