あぁ、今日は朝から忙しまくって、今は疲れきっています。
こういう時には癒しのボーカルということで――
■Sarah Vaughan With Clifford Brown (EmArcy)
サラ・ボーンは厚ぼったい声でベタベタ歌うので、個人的には好きではありませんが、このアルバムだけは別格です。黒人らしい粘っこさを残しつつもサラリとしていますし、伴奏陣がまた、たまらないプレイを聞かせてくれますから♪
録音は1954年12月18日、メンバーはサラ・ボーン(vo)、クリフォード・ブラウン(tp)、ハービー・マン(fl)、ポール・クイニシェット(ts)、ジミー・ジョーンズ(p)、ジョー・ベンジャミン(b)、ロイ・ヘインズ(ds)、アーニー・ウィルキンス(arr) という、これ以上無い素晴らしさです――
A-1 Lullaby Of Birdland
いきなりアレンジされたイントロをスキャット&伴奏で始まる魅惑のメロディ♪ サラ・ボーンの歌い方には微妙なタメとモタレがあって、なおかつベタベタしないので最高です。
演奏ではジミー・ジョーンズのピアノがソロも伴奏も同じスタイルで微笑ましく、ジョー・ベンジャミン&ロイ・ヘインズも当時のレギュラーだったのでしょう、なかなかのコンビネーションです。
そして後半はサラ・ボーンとホーン陣の掛け合いがあって、もちろんクリフォード・ブラウンがお目当てながら、実はサラ・ボーンのスキャットが素晴らしいスリルなのでした。
ズバリ、出来すぎ!
A-2 April In Paris
自由な情感を込めて歌うサラ・ボーンに寄り添うジミー・ジョーンズが、本当に上手いピアノを聞かせてくれますねぇ~♪
またバックのアレンジも淡くてカラフルという、当に4月のパリって、こんな感じでしょうか? 行ったことないので、分かりませんが♪ ポール・クイニシェットのテナーサックスがソフトに泣けば、クリフォード・ブラウンはミュートで丁寧に歌っています。あぁ、この2人は歌伴の名人でもあるのでしょうねぇ~♪ 地味ながらハービー・マンのフルートも光ります。
A-3 He's My Guy
重いビートで軽やかに歌うサラ・ボーンのキュートな魅力が全開です♪
原曲メロディを大切にしたアレンジは自由のようで、けっこう細部までキメていたように感じます。
アドリブパートではポール・クイニシェットがスカスカと歌って気持ち良く、クリフォード・ブラウンは明朗闊達! ジミー・ジョーンズが小粋にスイングすれば、ロイ・ヘインズのブラシとバスドラが、快適なビートを作ります。う~ん、ハービー・マンの神妙なソロも捨てがたいです。
A-4 Jim
スローな展開ながら、決してダレない歌まわしが流石の実力という、これこそサラ・ボーンの真骨頂だと思います。繰り返しますが、このセッションではベタベタしていないのが、個人的には好みなんです♪
B-1 You're Not The Kind
実はこのセッションで私が一番気に入っているのが、当時、サラ・ボーンの専属伴奏ピアニストだったジミー・ジョーンズの存在で、その最高の妙技がこの曲で存分に聴かれます。
もちろんポール・クイニシェットやハービー・マン、そしてクリフォード・ブラウンも大名演だと思いますが、ここはやっぱりジミー・ジョーンズ♪ その小粋にスイングする伴奏ピアノ中心に聴いていると、ウキウキしてきます♪
当然、サラ・ボーンとの相性も完璧ではないでしょうか♪ 特にラストコーラスなんかゾクゾク、ウキウキの連続ですよ♪
B-2 Embraceable You
これは繊細かつディープな表現も目立ちますが、むしろメロディを素直に歌っているあたりに好感が持てます。ひかえめな伴奏トリオも本当に趣味が良いと思います。ジミー・ジョーンズ最高♪
B-3 I'm Glad There Is You
ちょっと思わせぶりが強いサラ・ポーン……。あまり好きでは無いのですが、バックのアレンジが秀逸なんで、なんとなく納得してしまうのですが……。
ポール・クイニシェットが清涼剤……?
B-4 September Song
これもスロー系の歌唱ですが、けっこう気にいっています♪
余計な力みを感じないというか、実は良く分からないのですが、雰囲気だけで酔わされてしまうような……。
サラ・ボーンは本性を現して低音ゲロ吐き歌唱に入っていますが、クリフォード・ブラウンのミュートトランペットが絶品の輝き♪ 流石です!
B-5 It's Crazy
オーラスは楽しくスイング致しましょう!
という雰囲気で、ジミー・ジョーンズ以下のトリオは絶妙の歌伴を聞かせてくれますし、サラ・ポーンも軽いグルーヴで通しています。
そしてクリフォード・ブラウンの輝かしいトランペットは、ややラフな部分も珍しく、こういうのを聴いていると、このジミー・ジョーンズのトリオでのワンホーン盤を残して欲しかったと思いますねぇ。
あとハービー・マンの真摯な吹奏とポール・クイニシェットの軽妙なスイング感にも脱帽です。あぁ、ジャズを聴いている幸せに浸ってしまいます。
ということで、これは名盤として認定されていますが、アナログオリジナル盤は大変に希少でした。それが日本では簡単に手に入っていたので、海外のコレクターも日本盤を持っている人が多いという噂です。
今はボートラ付きCDで発売中♪ ジャズボーカル入門盤としても最適かもしれません。
ただしサラ・ボーンは、このセッションが本領ではありませんので、念のため……。
個人的にはジミー・ジョーンズに目覚めた1枚なのでした。