昨日とは全く逆に、肌寒い1日となりました。
しかしフッと気がつくと、プロ野球パリーグは日ハムの大暴れで風雲急を告げる展開に! さらに大相撲も熱くなってきましたですね。
肝心の国のリーダーを決める選挙は、全く盛り上がりませんし、寄らば大樹という議員の情けなさが……。
ということで、本日もハードパップでいかせてもらいます――
■4, 5, And 6 / Jackie McLean (Prestige)
ジャズのガイド本などでは定番! あまりにも有名なマクリーン版「Sentimental Journey」がウリという人気盤です。
録音は1956年7月13&20日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、マル・ウォルドロン(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) を核として、曲によってドナルド・バード(tp) とハンク・モブレー(ts) が加わるという大ハードバップ・セッションを収めています――
A-1 Sentimental Journey (1956年7月13日録音)
さて冒頭に分かったような事を書きましたが、この演奏が何ゆえに人気名演なのか、正直に告白すると私には、しばらくの間、理解出来ませんでした。
このアルバムを聴いたのは、本格的にジャズに入門し、ジャッキー・マクリーンという激情型プレイヤーの虜になってからわりと早い時期で、しかも活字からの情報で素晴らしいとされていただけに、この演奏を初めて聴いた時は完全に肩透かしでした。
なにしろジャッキー・マクリーンは、緩いテンポで伸びやかに吹いているだけなのですから! もちろん、あのギスギスした音色は何時もと変わらぬ魅力なんですが、ストレートな「情熱」や「泣き」が、当時の私には感じられなかったのですねぇ……。
それが 20代の終り頃、短い人生でもいろいろとあった頃でしたが、たまたま入ったカフェバー(古い!)で流れていたのが、この曲でした。体質的に日頃はあまり酒に酔わない自分が、珍しく適度に酔っていた所為もあったんでしょうが、ジャッキー・マクリーンが変奏するテーマの快適さに、酔いましたねぇ♪
まず31秒目からの変奏があってサビに入っていくところが、ゾクゾクします。そしてブレイクからアドリブパートに入ってからも、全てがその調子というか、テーマの変奏を基調としたところに気がつくと、後はもう、たまらない「泣き」の世界が待っているというわけです。
リズム隊も重く、しなやかなビートを送り出してきますから、本当に気持ち良く、シラフでも充分に酔えます♪ 特に3分8秒目あたりからのワザとらしいフレーズなんか、普通は顰蹙なんですが、妙な仲間意識が芽生えて許せてしまうんです。
A-2 Why Was I Born ? (1956年7月13日録音)
これは最初っから好きな演奏でした。
アップテンポで「泣き」を存分に聴かせてくれるジャッキー・マクリーンは、やっぱり素敵です。その音色のクドサも、ここまで来ると芸術でしょう。フレーズはもちろん、チャーリー・パーカーからのイタダキが多いわけですが、この音色があればこそ、充分に個性として認められるという、そのあたりの真髄が、この演奏で楽しめるのです。相変わらず随所でワザとらしいフレーズもやっていますが、憎めません。
リズム隊も一体感があって、強靭だと思います。
A-3 Contour (1956年7月13日録音)
これはドナルド・バードが入ったクインテットの演奏で、タイトルからすれば「5」ということになります。
曲は幾何学的なハードバップですが、秘められた哀愁が心地良く、アート・テイラーの躍動的なドラムスに煽られて、まずジャッキー・マクリーンが泣きじゃくります。
続くドナルド・バードも絶好調で、意外に落ち着いた雰囲気を醸し出しながら歌心優先で聴かせてくれるアドリブは、魅力満点です。もちろん随所でクリフォード・ブラウン(tp) のフレーズをイタダキました状態♪
さらにマル・ウォルドロンは自然体で出てしまうモールス信号が!
B-1 Confirmation (1956年7月20日録音)
ビバップの定番曲を、ここではさらにハンク・モブレーが加わったセクステットで演奏されますので、「6」というわけです。
内容はジャムセッション色が強く、先発のジャッキー・マクリーンは遺憾なく情熱を吐露し、ドナルド・バードは丁寧に吹奏していますが、それが裏目というか、やや若さが足りません。
しかし続くハンク・モブレーは落ち着いた中にも柔らか味優先のアドリブで、その音色とフレーズはモタレとタメの美学♪ ややモゴモゴした音色なんか、ちょっと聴くとダサいわけですが、これ無くしてはハンク・モブレーとは言えません。贔屓の引き倒しであることは、充分、自覚しておりますが……。
B-2 When I Fall In Love (1956年7月20日録音)
またまたジャッキー・マクリーンのワンホーン演奏で、通常はスローで解釈される哀愁のスタンダード曲を、ここでは思い切ったアップテンポにして情熱を吐露していきます。
リズム隊もアート・テイラーを中心に好調で、暗い情念を伴ったマル・ウォルドロンの伴奏がジャストフィットです。
それにしてもジャッキー・マクリーンは自然体で泣いているという、本当にこの人の1950年代の演奏は、何を聴いても素晴らしいと思います。
B-3 Abstraction (1956年7月20日録音)
マル・ウォルドロンが書いた、あの有名な「Left Alone」系のスロー曲です。
それと同じく、ここでもジャッキー・マクリーンが主役に据えられていますから、哀愁モロ出し大会!
しかもここではドナルド・バードが、終始、リーダーを前面に押出しているというか、密かに裏で絡むだけという、効果的な演出が効いています。ただし煮えきり方がイマイチというか、やや格好をつけてしまった感が……。
ということで、人気盤にはちゃんと理由があるにせよ、それはやっぱり聴き手の感性という証明が、この盤でしょうか。万人が挙って楽しめる作品ではないと思いますが、冒頭の「Sentimental Journey」はやっぱり魅力的なのでした。
私は結果として、10年はソンをした気分ではありますが……♪