OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

シダー&クリフ

2006-09-12 18:51:02 | Weblog

最近、目標を見失っている感じです。時間の無さが原因かもしれません。

いろんなものに流されている自分、まあ、それに気づいているだけ、マシかもしませんが……。

ということで、何もかも忘れて夢中になれるジャズといえば――

A Night At Boomers, Vol.1 / Cedar Walton (Muse)

フュージョンブームだった1970年代のジャズ喫茶では、とにかく4ビートの新譜が待望されていました。

特に中堅どころのモロジャズは大歓迎で、バリバリのモード系やハードバップは「事なかれジャズ」等と一部では揶揄されつつも、やはり魅力に満ちたものでした。

その中でメキメキと人気を得ていったのが、本日の主役であるピアニストのシダー・ウォルトンです。その履歴はジャズ・メッセンジャーズでのレギュラーを筆頭に、常に王道を究めんとする姿勢が潔く、また演奏スタイルはマッコイ・タイナー系のモード手法に仄かなファンキー味という、如何にもジャズ喫茶向けでした。

つまり指が良く動いてハードの演奏、それでいて和みもあるという♪ 本日の1枚は、当にそうした中の人気盤です。

録音は1973年1月4日、当時のシダー・ウォルトンが根城にしていたニューヨークのクラブ「ブーマーズ」でのライブを収めており、メンバーはシダー・ウォルトン(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) というレギュラートリオに、盟友のクリフ・ジョーダン(ts) を入れています――

A-1 Holy Land
 厳かで爽やかなテーマが印象的なシダー・ウォルトンのオリジナル曲です。仕込まれたクラシック調のパートがミソで、やや後に発表されたアル・ヘイグのピアノトリオ・バージョンでもお馴染みですが、ここではクリフ・ジョーダンのテナーサックスを前面に立てたハードバップ大会です。
 アップテンポでグイグイと吹きまくるクリフ・ジョーダンは、その音色が何故か腑抜け気味ですが、シダー・ウォルトンのピアノも安物のアップライトみたいな薄っぺらな音なので、これは録音の所為かもしれません。
 ただし2人とも本当に熱演で、特にシダー・ウォルトンのツボを押さえたアドリブの展開には惹き込まれます。
 またサム・ジョーンズのベースは電気増幅されたような、これもやや芯の無い音ですが、早弾きのソロでは破綻無く、キャノンボール・アダレイ(as) のバンドやオスカー・ピーターソン(p) のトリオ等々で長年共演してきたルイス・ヘイズのドラムスとの相性もバッチリです。

A-2 This Guy's In Love With You
 おぉ、これは有名なバート・バカラックの作曲による、永遠の美メロ・ヒット曲♪
 ここではクリフ・ジョーダンが抜けたピアノトリオで演奏されますが、ネタが良いので、シダー・ウォルトンも忌憚無くメロディをフェイクし、グルーヴィな雰囲気でアドリブを展開しています。
 ただし、このピアノの音色は、どうにかならんかったのか……。

A-3 Cheryl
 チャーリー・バーカー(as) が書いたビバップの見本のような難曲を、このバンドは余裕でこなしていますが、その熱気は如何にもライブの醍醐味が横溢しています。
 なにしろリズム隊がブリブリにドライブしていますから、クリフ・ジョーダンも単なるハードバップに止まらず、ヒステリックなフレーズを織り交ぜて烈しい吹奏を聴かせてくれます。それはジョン・コルトレーンになりそうで成らないという、微妙な匙加減! ここでも腑抜けの音色ですが、それが逆に個性的で結果オーライ♪
 シダー・ウォルトンも張り切ったアドリブでそれに続き、ルイス・ヘイズのドラムスも冴えに冴え、サム・ジョーンズもグイノリです!

B-1 The Highest Mountain
 そういうノリの良さはB面にも継続され、この曲はクリフ・ジョーダンが書いたモード系のテーマがたまらないという、白熱の名演です。しかもミステリアスな哀愁が隠し味ですから、ヒステリックな「泣き」も許せてしまいます。
 そして絶好調のリズム隊が本当に凄く、ついついボリュームを上げてしまうのでした。

B-2 Down In Brazil
 一転、アップテンポですが、お馴染みの楽しいテーマメロディで和みます。あぁ、ついつい、一緒に口ずさんでしまいますねぇ~♪
 全くこういう変則ラテンロックな曲調では、クリフ・ジョーダンのフワフワしたテナーサックスの音色がピッタリです。もちろんアドリブでの歌心も原曲を活かした柔らか味があります。
 そしてシダー・ウォルトンは、ややスケールで逃げている部分もありますが、ベース&ドラムスと上手く絡みながら、楽しさ極まりないアドリブを展開しており、こういう演奏こそが、当時のジャズ喫茶では求められていたのです。

B-3 St. Thomas
 ソニー・ロリンズ(ts) の決定的名演が残されている人気曲を、このバンドは前曲のノリを引き継いで楽しく演じています。とにかくルイス・ヘイズが叩き出すラテンビートが快調ですから、クリフ・ジョーダンもソニー・ロリンズに負けじと熱演し、途中からは高速4ビートに突入して激烈に吹きまくりです!
 もちろんリーダーのシダー・ウォルトンも負けていません。ペラペラした音色のピアノが壊れんばかりの烈しいタッチで、流れように弾きまくりです。
 このあたりは、特に歌心が感じられるわけでは無いのですが、この勢いと潔さが最高! ルイス・ヘイズのドラムスも歯切れ良く、サム・ジョーンズのベースも落ち着いたドライブ感があるので、ジャズの醍醐味が堪能出来るのでした。

B-4 Bleecker Street Theme
 熱演続きのB面を締め括るのが、このクラブ「ブーマーズ」のテーマともいうべきグルーヴィなブルースです。作曲はもちろんシダー・ウォルトンで、実はバンドテーマでもあります。短い演奏ですが、これが有ると無いとでは、ライブ盤としての楽しさが極まらないと思います。

ということで、アルバム丸ごとが楽しく熱気に満ちた傑作です。惜しむらくは、各楽器の音色、特にピアノがショボイ録音なのが???

しかしバンドとしての纏まりの良さ、演奏の熱気、演目の良さ、さらにマスコミに左右されない、当時のジャズ界の一端を切り取ったプロデュースの狙いがスバリと決まった名作だと思います。

これには「Vol.2」も出ていますが、個人的には演目からして、こちらが好み♪ とはいえ、機会があれば両方聴いてみて下さい。いつまでも愛着が持てるアルバムになりますよ♪

コメント (2)
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