OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ニューボーン・タッチ♪

2006-09-02 15:55:18 | Weblog

ようやく爽やかな気候の中、こういう時こそ、ジャズが聴きたくなる私です。

そこで、本日は私の日常的愛聴盤を――

The Newborn Touch / Phineas Newborn Jr. (Contetemporary)

ジャズの本質はアドリブ命! これにはどんな言い訳も通用しないでしょう。

しかし素材の選び方、つまり曲そのものがつまらなかったら、どうしようも無いのも、また事実です。

面白くアドリブ出来るコード進行だけ抜き出して、リスナーを満足させてしまう荒業なんて、真の天才、例えばチャーリー・パーカー(as) のような人だけが出来ることですから、ここで勘違いされるとファンには地獄ですし、ジャズが一般的な人気を得られないのも、そこが問題のひとつだと思います。

ですから私はアルバムを買う時、自然と演目の良さを第一義にしてしまいます。そしてこの1枚こそ、私好みの隠れ名曲がぎっしり詰まって、さらに演奏も豪快という愛聴盤です。

録音は1964年4月1日、メンバーはフィニアス・ニューボーン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、フランク・バトラー(ds) という西海岸黒人激烈ピアノトリオ♪

A-1 A Wakin' Thing
 「私の好みの隠れ名曲が~」等と偉そうに書いてしまいましたが、実はこの曲は、それまで知らず、アルバムを買って聴いた瞬間に歓喜悶絶したという♪
 作曲はジャズ創成期から活躍したアルトサックスの大御所=ベニー・カーターで、クラシックの「運命」と「悲愴」を足してジャズで煮しめたようなマイナー調が、たまりません。
 もちろんゴスペル味は、お約束♪ 力強いビートと行進曲リズムに乗って、フィニアス・ニューボーンが抜群の解釈を展開します。特に1分55秒目と2分50秒目からのブロックコード弾きは、火山の爆発です! そしてその合間に単音弾きでコントラストをつけ、3分18秒目からの大噴火に繋げていくあたりが、もう名人芸を越えた天才の成せる技なのでした。
 もちろん大団円が待っていますよ!

A-2 Double Play
 これこそ私のお目当ての名曲です。それはセミ・クラシックを使った哀愁の歌謡曲モード♪ 作曲は西海岸派の名ピアニスト=ラス・フリーマンで、アンドレ・プレビンとのピアノデュオ・アルバム「ダブル・プレイ(Contetemporary)」が初演だと思います。
 で、ここでのフィニアス・ニューボーンは、テーマ部分で最高のメロディ解釈を聴かせ、一転、アドリブパートはファンキーフレーズを用いてリスナーをせつない心情へ追い込むのです。
 あぁ、これがジャズです! 日本人でこれが嫌いな人はいないでしょう。なんか大野雄二が作る映画音楽のテーマのようにも聞こえてきます。
 もちろんドラムスとベースのサポートもジャズの力強さを演出し、フィニアス・ニューボーンは得意の両手ユニゾン弾きを繰り出して、グイグイとっ♪

A-3 The Sermon
 ハンプトン・ホース(p) が作ったゴスペルブルースですが、裏ジャケット解説によれば、何とフィニアス・ニューボーンは左手だけで弾いているとかっ!
 う~ん、聴いてみると確かにそのとおりです。しかしその蠢きからは、かなり早いフレーズがバリバリと放出されてくるんですから、これは嫌味です。
 まあ、いいか……。

A-4 Diane
 これも私がお目当てにしていた「泣き」の名曲で、もちろん皆様ご存知のとおり、アート・ペッパーが自己のリーダー盤「ゲッティン・トゥゲザー(Contetemporary)」で自作自演の決定版を残しています。
 そして、ここでのフィニアス・ニューボーンは、超スローテンポで美しきテーマメロディを徹底分析し、原曲が持つ素直な「泣き」を、さらに増幅してくれますから、たまりません。
 的確なベースとドラムスも存在感がありますが、フィニアス・ニューボーンの素晴らしさ、上手さには完全降伏の演奏です。

A-5 The Blessing
 モダンジャズの革命児と言われたフリー派のアルトサックス奏者=オーネット・コールマンの代表曲ですが、それも含めて、フリーだからデタラメということは無く、フィニアス・ニューボーンはモダンジャズ王道の解釈で、強烈なハードバップを聴かせてくれます。
 フランク・バトラーとの対決も楽しく、若干、道筋を見失う場面も、ご愛嬌です。

B-1 Grooveyard
 これまた私が大好きなファンキー曲♪ ウェス・モンゴメリー(g) の演奏が有名ですが、このフィニアス・ニューボーンのバージョンも名演だと思います。
 それはダイナミックなコード弾きや両手ユニゾン弾き、力強く繊細なピアノタッチ等々、当に天才の技を駆使して盛り上げていく様が全く自然! という恐ろしさを含んでいます。
 つまり当たり前のように、こんな凄い演奏をやってしまうのが、魅力なのでした。

B-2 Blue Daniel
 ラテンタッチの楽しい名曲で、書いたのは名人トロンボーン奏者のフランク・ロソリーノですが、本人の演奏は聴いたことがありません。
 とにかく、この愛らしいテーマメロディを、フィニアス・ニューボーンがどう料理していくかが焦点で、アドリブパートではアップテンポの4ビートに方針転換しつつ、驚異的なテクニックで、バリバリと出し惜しみせずに美メロを出していくあたりは、即興とは思えない感動があります。

B-3 Hard To Find
 マイナーな哀愁を含んだゴスペル調のテーマメロディにグッときます。
 作曲はこのセッションのベーシストであるリロイ・ヴィネガーで、自身のリーダー盤「リロイ・ウォークス・アゲイン(Contetemporary)」でも演奏していますが、実は当時の人気アイドルバンドだったゲイリー・ルイス&プレイボーイズが軽快にカバーしたバージョンも有名でしょう。 
 ここでの演奏は、フィニアス・ニューボーンの強弱が鮮やかなピアノタッチを存分に活かしたところから、歌心たっぷりの「泣き」のメロディ展開まで、分かり易く素晴らしすぎるアドリブが最高です。
 もちろん両手ユニゾン弾きや2分44秒目の爆発的コード弾きもド迫力!
 あぁ、一緒に歌えるテーマの楽しさよ♪
 擬似ジャズロック風のノリを隠し味にしたドラムスとベースが、その秘密かもしれません。

B-4 Pazmerte / 平和の死
 知る人ぞ知る存在のアルトサックス奏者=ジミー・ウッズのオリジナルで、タイトルどおり、かなり重いものを含んだ曲なので、演奏そのものも自分で苦しんでしまう要素がたっぷりみたいですが、このトリオの演奏は、それを巧みに切り抜け、尚且つ、原曲を大切にしたヘヴィな展開を聴かせます。
 その要はフランク・バトラーの変態ポリリズムのドラムスで、混濁と圧縮解凍がゴッタ煮状態の演奏展開を上手く纏めているのでした。

B-5 Be Deedle Dee Do
 前曲の混乱を一気にハッピーエンドへ持っていくのが、名ギタリストのバーニー・ケッセルが書いた、如何にもモダンジャズな、この曲です。
 そして、その秘められたファンキー節を遮二無二ゴスペルにしていくのが、このトリオの凄いところです。特に1分12秒目に炸裂するフランク・バトラーの一撃には悶絶します!
 もちろんフィニアス・ニューボーンの爆発的なブロック・コード弾き、さらにその裏で細かいフレーズを入れまくるあたりは、本当の神業♪ 最高にシビレます。

ということで、これは素直にジャズの楽しさと本質に接することが出来るアルバムだと思います。平たく言えば、イイんです♪ 激オススメのピアノトリオ盤なんですよっ!

ちなみに現在、紙ジャケット仕様でCD復刻されており、聴きすぎてアナログ盤がイカレ気味な私は、迷わず買いましたが、そこには2曲のオマケがついていて、さらに楽しいという保証付きです。ただしそれは、フィニアス・ニューボーンが暴走しすぎてオクラになったような雰囲気で、まあ、それもファンにとっては納得済みの楽しみということです。

例によってジャケ写から試聴出来るところへリンクしてあります。機会があれば、聴いてみて下さいませ。

 

コメント
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