昨日は友人の急逝があって、うろたえました。突然死でした。
思えば、ここ1年で、私の周りでは2人目……。けっこうストレスが蓄積していたようですし……。
で、私の場合もストレスと疲労が……。なんて言うと、いつもノーテンキな私は笑われるかもしれませんが、他人事ではないはずで……。
という暗い自問自答はこのくらいにして、本日の1枚は爽快なこれを――
■Sonny Rollins Plus 4 (Prestige)
CD時代になってもなお、アナログ盤の存在は廃れることがなく、特にオリジナルプレス盤の価値は絶大になるばかりですが、それではCDでの鑑賞とは、所詮後付なのか? というモヤモヤしたものが、最近、広がりつつあります。
それについての私の結論は、否です。
何故って、アナログ盤でもCDでも、それは結局マスター音源のコピーに過ぎないわけですし、そこに拘り始めたらもう、オリジナルマスターを入手する以外にないわけですが、それは極論としても、本日の1枚なんかアナログ盤ではオリジナルプレスも含めて、どれも満足出来る音質ではありませんでした。
なんか抜けが悪いというか……。
で、このアルバムはソニー・ロリンズをリーダーにしていますが、実質的には当時のクリフォード・ブラウン&マックス・ローチの双頭バンドによる演奏になっていますので、本家の録音から作られたエマーシー・レーベルのアルバムに比較すると、その音の悪さが顕著でした。
ただし内容は極上♪
ですからCDが発売された当時、最も早い時期に私が購入したものの1枚が、これでした。もちろん、その狙いは少しでも良い音質で聴きたい! そこに集約されています。
録音は1956年3月22日、メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、リッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) という最強バンドです――
A-1 Valse Hot
ソニー・ロリンズが書いたワルツ曲を徹底的にモダンジャズ=ハードバップで解釈した名曲・名演です。
その要は絶対に崩れないマックス・ローチのドラムスですが、それに対して緩急自在のノリで豪快にスイングするのがソニー・ロリンズならば、クリフォード・ブラウンは律儀なタメとグリグリの突進!
もちろん両者共、歌心とスリルに満ちたアドリブに撤していますし、特筆すべきはマックス・ローチがワルツタイムに固執しながらも、実はポリ・リズムという暗黙の了解でバンドを煽っていることです。
こういう危ない部分は、結局、優秀なバンドメンバーが揃っているからこそ可能な秘儀でしょう。正直、リズム隊だけの演奏になると脆さが露呈する瞬間もあるのですが、そこはマックス・ローチのエグミの効いたドラムソロで帳消しです。
それにしても、この楽しく覚えやすいテーマ・メロディは素敵ですね♪
A-2 Kiss And Run
スタンダード曲を素材に正統派4ビートでハードバップの真髄が披露されます。
先発はもちろんソニー・ロリンズ! 豪放磊落、天才的なリズム感に裏打ちされた白熱のアドリブが余人を寄せ付けない迫力です。
続くクリフォード・ブラウンは、もう待っていられないとばかりに、ソニー・ロリンズのソロの最後に飛び込んで爆裂です♪ あぁ、これが即興演奏でしょうか!? 全てが完全な「歌」であり、リズム的興奮とスリルは、もう神業であり、その音色も大きな魅力です♪
したがって、次に登場するリッチー・パウエルは完全にワリをくって、アドリブの出だしでは、どうして良いか迷い道になっているほどです。まあ、それでもなんとか格好だけはつけますが、その後にはソニー・ロリンズとクリフォード・ブラウン、そしてマックス・ローチという天才3人による激突があるのですから、いやはやなんともです。
本当に良い時代でした♪
B-1 I Feel A Song Comin' On / 胸に歌があふれ
タイトルに偽りなしの快演です。もちろん素材はスタンダート曲ですが、テーマ部分や演奏全体にマックス・ローチの自在なドラムスを活かした巧みなアレンジが施されているので、全員が油断出来ない雰囲気です。
もちろんアドリブパートは大充実! ソニー・ロリンズは自分だけの「節」で天下一品の域に達していますし、クリフォード・ブラウンは言わずもがなの強烈さ♪
リズム隊も要所の仕掛けを軽くクリアしての熱演になっています。
B-2 Count Your Blessings Instead Of Sheep
この曲だけ、クリフォード・ブラウンが抜け、ソニー・ロリンズのワンホーン演奏になっています。
それゆえに短い演奏ですが、ミディアム・テンポでグルーヴィに歌うこの時期のソニー・ロリンズは、やはり凄いですね! あの名盤「サキソフォン・コロッサス (Prestige)」が聴きたくなると言えば、その雰囲気はご理解いただけるかと思います。
B-3 Pent-Up Horse
出だしからゾクゾクするグルーヴィな雰囲気! これがハードバップです!
アドリブ先発のクリフォード・ブラウンはソフトでパワフル、シャープでぬくもりのあるソロを存分に聴かせてくれますし、ソニー・ロリンズは大らかなノリと自在なタイム感覚で勝負しています。
ここでのリズム隊はピアノのリッチー・パウエルが休んでドラムスとベースだけがホーンの2人をバックアップするところもあり、当時としては進歩的というか、今日聴いても、なかなかスリルとサスペンスに溢れた演奏になっています。
ということで、これもジャズの歴史的名盤となっている演奏集です。
そして冒頭に述べた音質の問題は、CD化によって、かなり改善されています。というか、私の知っているアナログ盤は、盤質そのものが粗悪でチリチリ・ジャリジャリしていましたし、日本プレス盤もカッティングレベルが低く、音そのものの迫力がイマイチでしたから、いろいろと悪く言われるCDであっても、ここでは聴き易く、鑑賞に集中出来ると思います。