goo blog サービス終了のお知らせ 

OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

続・俺だけのS級盤

2006-07-07 17:55:23 | Weblog

Good Pickin's昨日に引き続き、本日も俺だけのS級盤です――

Reach Out ! / Hank Mobley (Blue Note)

どんな世界にもひとりはいるが、イイ人♪

人望とか信頼とは一味違う、頼りになるけど必要以上の自己主張をしない人♪

物分りが良いというか、頼まれるとイヤとは言えない人?

内向的でもシンのしっかりした人!

こういう人は、苦境に落ちた時に最期まで残る友人のような存在かもしれません。

ジャズ界では、その残された音源やジャケット写真に接する度に、私の大好きなハンク・モブレーは、きっと、そういう人だろうと、勝手に決めつけてしまうのですが……。

それは、このアルバムでも濃厚に感じられます。

録音は1968年1月19日という、当にフュージョン前夜! メンバーはハンク・モブレー(ts) 以下、ウディ・ショウ(tp)、ジョージ・ベンソン(g)、ラモント・ジョンソン(p)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) というコアな面々です――

A-1 Reach Out I'll Be There
 アメリカの黒人ソウルグループ=フォー・トップスの代表的ヒット曲を演奏していますが、その主役は、なんとサイドメンのジョージ・ベンソン! ブルーノート伝来のジャズロック・ビートに気持ち良くノッて、冒頭からジョージ・ベンソンのギターがメロディを楽しくフェイクしていきますので、最初聴くと、思わずアレッ? と驚愕してしまいます。ハンク・モブレーは何処!?
 するとようやく2分35秒目あたりでモッサリと登場してくれるんですよ、この人は♪ しかもそのアドリブがモタレのR&Bフレーズばっかりで、これこそがハンク・モブレーの素顔なの? と思うしかないんですねぇ、ファンとしては!
 そしてそれが他のメンバーにも伝染したんでしょう、ウディ・ショウは何時もの熱血ぶりを隠してオトボケ、ラモント・ジョンソンは楽しけりゃいいんだろう、と開き直りの楽しさです。
 そして演奏はラストテーマで和みの大合奏♪ ビリー・ヒギンズのブレイクも味が決まってミもフタも無いところが素敵です。
 それにしても、ここではやっぱりジョージ・ペンソンです。前半2分目あたりからのアドリブの冴えた楽しさはハイライトでしょう。
 しかし、ハンク・モブレーは自分のリーダーセッションだというのに、どうしてこんなに控えめなんでしょう? これではジョージ・ベンソンのレコードです。というか製作側は、もしかしたらジョージ・ベンソンを売り出すために、このトラックを作ったのかもしれません。
 だとすれば、そのあたりにハンク・モブレーの物分りの良さが表れているように思います。もしこれがリー・モーガン(tp) だったら、こんなことはやらないでは? ちなみにリー・モーガンは駆け出し時代、ハンク・モブレーのリーダーセッションに多数参加して、自分を売り出してもらった借りがあるはずなんですけどねぇ……。
 全く憎めない人です、ハンク・モブレーは♪

A-2 Up Over And Out
 で、ここからがハンク・モブレーの本領発揮! 物凄い勢いがある強烈なハードバッブが展開されています。
 なにしろハンク・モブレー自身が書いたオリジナルのテーマが最高にカッコ良く、先発のウディ・ションは遺憾なく熱血ぶりを発揮! 続くハンク・モブレーは誰も真似の出来ないモブレー節の連発です。
 リズム隊ではビリー・ヒギンズの白熱のシンバルが素晴らしく、ジョージ・ベンソンも野太いシングル・トーンでバリバリと弾きまくりです。そしてこの人! ラモント・ジョンソン! 独自のグルーヴでジャズ者の琴線に触れるその豪放なピアノは、隠れ人気の秘密です。
 ちなみにこの曲は、近年になってエリック・アレキサンダー(ts) が十八番にしていますが、ここでのノリには敵いません。

A-3 Lookin' East
 これもハンク・モブレーのオリジナル曲で、如何にもという和みとファンキー味が魅力の演奏になっています。
 とにかくハンク・モブレーが初っ端から黒くキメていますから、ウディ・ショウも熱くなる他はありませんし、ジョージ・ベンソンも硬派に迫っています。
 そしてビリー・ヒギンズのバックビートを強めたドラムスが、これまた最高です♪ それとラモント・ジョンソンの新主流派ゴスペルとでも名付けたいようなブロック・コード弾きも強烈で、和みのラストテーマを上手く導いています。

B-1 Goin' Out Of My Head
 ウェス・モンゴメリーも取上げているソフトロック系の名曲です。
 もちろんここでも和み優先のボサロックに仕立てており、ハンク・モブレーの些か芒洋とした吹奏が、ここではジャストミートの快感です。
 そして続くジョージ・ベンソンは、当然、ウェス・モンゴメリーを意識しないではいられないはずですが、必死でマイペースを守る心意気が健気です。したがってやや精彩が感じられないのですが、まあ、いいんじゃないでしょうか……。

B-2 Good Pickin's
 タイトルどおり、またまたジョージ・ベンソンを活躍させるための曲・演奏になっています。
 なにしろ冒頭からジョージ・ベンソンのギターが全体をリードし、死ぬほどカッコ良いテーマ曲を作り上げていくのです。さらにそのままアドリブパートに突入し、白熱の弾きまくりです。
 そしてこれに刺激されたウディ・ショウが怒りのツッコミを爆発させるあたりは、もうゾクゾクしてきます。カッコ、イイ! バックで炸裂するビリー・ヒギンズのシンバルとブレイクの素晴らしさ! ジョージ・ベンソンのオカズも強烈です。
 もう、こうなるとハンク・モブレーも黙っていられないとばかり、最後に登場するや、あたりはモブレー色で塗り潰されるのです。あぁ、これがハードバップの醍醐味です。必聴です!

B-3 Beverly
 おぉ、ついに出ました♪ ブルーノートならではの重いビートのジャズロックです。作曲はピアニストのラモント・ジョンソンで、ちなみにこの人は当時のジャッキー・マクリーン(as) のバンドではレギュラーだった隠れ名手です。
 アドリブ先発はもちろん、我等がハンク・モブレーで、そのファンキーな資質が全開♪ モタレとタメの二重奏から一転、泣きと滑らかさのコントラストの妙は、唯一無二の必殺技です。
 続くジョージ・ベンソンも得意の早弾きを披露しますが、やや調子が出ていません。しかしウディ・ショウは生真面目に手抜きしないフレーズを繰り出して、聴き手を熱くさせるのでした。

ということで、これはハンク・モブレーの新機軸というよりも、ジョージ・ベンソンのリーダー盤という趣さえ感じられます。しかし如何にもハンク・モブレーという、例えば「Up Over And Out」や「Good Pickin's」あたりの熱い演奏は強烈な魅力で、モブレー・マニアならずとも、夢中になる快演になっています。

おそらくこういうプロデュースは、リーダーがハンク・モブレーだからこそ可能だったと思われます。なにしろハンク・モブレーと言えば、ブルーノート・レーベルではバリバリの看板スタアですから、普通はこういう目論みは頼めないはずなんですが、多分ハンク・モブレーはイイ人というよりも物分りの良い人、協調性のある人というよりも、俺はいいよ、自分のペースでやれればねっ、というような控えめで憎めない人だったんじゃないでしょうか?

このアルバムを聴く度に、私はそんなことを想います。

ちなみにジャケ写には、フランスのエッフェル塔をバックにしたものが使われていますが、ハンク・モブレーはこのセッション前年の秋に欧州巡業を敢行、さらにこの録音直後に再び渡欧し、フランスを中心に2年間を異国の地で過ごしています。

願わくば、その当時のライブ音源等が発掘されると嬉しいのですが……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする