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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

困った嬉しさ

2006-07-12 17:17:47 | Weblog

どこで情報を得たのか、最近私の保険が満期に近いことを知って、保険屋のセールスレディが頻繁にやってきます。大抵は昼メシ時なんですが、夏とはいえ、その服装がなかなかセクシーという、困った嬉しさがありますね♪

なにせ胸元が、どうぞ見て下さい状態ですし、もちろん巨乳がウリなのは言わずもがな……。見たから、あるいは見せてくれたからといって保険に入るほど私は青くないつもりですが、まあ、それは……。いったいその巨乳で幾つ契約を取ったんですか?

そんなことよりも、どうやって私の個人情報を得たのかが問題!

ということで、本日は第一印象が大切という、これを――

Free Form / Donald Byrd (Blue Note)

森羅万象、第一印象の影響は大、ですね。

その意味で、このアルバムは長らく私の中で避けられ続けた1枚です。

それはズバリ、タイトルに原因があり、「フリー・フォーム」じゃあ、フリー・ジャズかなぁ……? という思い込みだったのです。

ところがある日の某ジャズ喫茶、なんとなく居眠りモードに入っていた私の耳を直撃したのが、このアルバムA面1曲目でした。その第一印象は、おぉ、なんて気持ちの良いっ♪

というこの作品が録音されたのは1961年12月11日、メンバーはドナルド・バード(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ブッチ・ウォーレン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という硬派な面々です。

実はそこがクセモノで、実はジャズを聴き始めた頃の私は、このアルバムの存在だけは知っていたのですが、当時の先入観念としてウェイン・ショーターとハービー・ハンコックはフリージャズもやる恐い人、ビリー・ヒギンズはオーネット・コールマンという、これもフリージャズの大御所と共演していた人! というところから、このアルバムもてっきりフリー系の内容と思い込んでいたのです。

なにしろブルーノート・レーベルと言えば、ハードバップ~ファンキー物と同じ位の量で所謂新主流派~フリー物も出していたのですから……。しかし、これは――

A-1 Pentecostal Feeling
 取っ付き難いタイトルとは裏腹に、とても快楽的なジャズロックです。しかも録音年月日にご注目! なんとリー・モーガンの演奏で破格のヒットとなったジャズロックの代表作「The Sidewinder」よりも2年以上早い演奏なのです!
 まあ、ビートはラテンリズムの変形というところですが、4ビートとは一線を隔して楽しいロックという雰囲気は抜群ですし、基本がブルース進行なので、否が応でもウキウキさせられます。もちろん、前述した居眠りモードの私を直撃したのは、この曲です。
 まず出だしこそ不気味なブッチ・ウォーレンのベースが蠢きますが、直ぐにビリー・ヒギンズの軽快なドラムスが響き、気分は完全にジャズロック♪ テーマ~ドナルド・バードのアドリブに入っても、とにかく分かりやすいメロディの連続です。
 しかし続くウェイン・ショーターは、やはり一筋縄ではいきません。全く楽しく無い音の羅列で盛り上げておいて、いきなり脱力するような変態フレーズでの展開が、妙に心地良いのです。
 そしてハービー・ハンコックはいきなりファンキー♪ 当然、これから半年後に吹き込まれる「Watermelon Man」を想起させる楽しいソロを聴かせてくれます。
 それとビリー・ヒギンズの快演は言わずもがな、全くこの人のジャズロックは快適の一言です♪ おぉ、最後はゴスペルっ!

A-2 Night Flower
 ハービー・ハンコックが作った静謐なスロー曲を、ドナルド・バードが丁寧に歌い上げます。あぁ、このテーマが、なんとも魅力的なんですねぇ~♪
 しかしここでのハイライトは、やはりハービー・ハンコックの美しいタッチのピアノです。ちょっと正体を見せないようなミステリアスなアドリブは絶品! 当時はドナルド・バードのバンドでレギュラーを務めていたわけですが、マイルス・デイビスが目を付けていたのが肯ける演奏です。
 そしてウェイン・ショーターが、これまた、良い! やはり同根のミステリアス・ムードで迫っており、独自のウネリと低音での呻きが印象的です。

A-3 Nai Nai
 こんなタイトルのバラエティ番組がありますが、ここでは生真面目にハードバッブが演奏されてます。そこには和みのムードが漂い、まずドナルド・バードが歌心満点のアドリブを披露すれば、ウェイン・ショーターは脱力感だけで勝負! これが当時在籍していたジャズ・メッセンジャーズでの演奏とは微妙に違うという、このセッションのミソになっています。
 そしてハービー・ハンコックは、もはや後年のマイルス・デイビスとの共演で聴かせていたものと同質のノリとフレーズで、粋なところを披露しています。
 ただしビリー・ヒギンズが意想外に大人しく、全体に緊張感が足りないと……。

B-1 French Spice
 ところが一転、これが出だしからハードボイルドな緊張感に包まれた名演になっています。このファンキーな雰囲気はジャズ・メッセンジャーズに似て非なるもので、まずウェイン・ショーターが思いっきりブッ飛んだアドリブで飛翔しています。そこにはフリーに近いフレーズとノリがあり、アート・ブレイキーとの共演では出せないものが聞かれるのです。
 そこでドナルド・バードは得意のフレーズを連発し、お約束のハードバップに流れを引き戻すのですが、ハービー・ハンコックがどちらに付こうか迷ったようで、そこが面白い演奏になっています。
 ビリー・ヒギンズの張り切ったドラムスとブッチ・ウォーレンの直向に蠢くベースも効果的で、テーマの衝撃性が最後まで持続しています。

B-2 Free Form
 おぉ、やっぱりタイトルどおりのフリージャズだぁ~!
 なにしろビリー・ヒギンズがオーネット・コールマンと共演して生み出したのと同質のリズム&ビートを叩き出していますし、なによりテーマが思わせぶりです。
 もちろんアドリブパートには集団即興演奏の趣が加味されています。そしてウェイン・ショーターは、これがやりたかった! というような、当時としては破天荒な展開を聴かせてくれるのです。
 またハービー・ハンコックも当然、ツッパリ気味の演奏に終始しますが、意外なことに、この人はこういう部分になると保守的なものを消すことが出来ない体質を露呈するのです。
 しかし全体をリードしているのは、明らかにビリー・ヒギンズの尖がったドラムスで、その色彩豊かで刺激的なビートは最高です。もちろん演奏は収拾がつかなくなってフェードアウトするのですが、今聴くと、なんとも憎めないものに満ちています。

ということで、最初と最後の落差があまりにも大きい作品集ですが、そこはドナルド・バードの先進性の表れと思います。

このセッション当時のジャズ界は、ジョン・コルトレーンやエリック・ドルフィーあたりのハード&タフな世界、あるいは爛熟したハードバップ&ファンキーな泥沼、はたまたマイルス・デイビスのような拘りのジャズ王道派等々が入り乱れ、そこにフリージャズの波が押し寄せていたという、ある種の幸せな混迷状態にありました。

その中で様々な可能性に臨んだ作品が生み出されていたわけですが、このアルバムはそれをやりすぎて一回転、元に戻って迷盤にもなれなかったという雰囲気でしょうか……。もちろんガイド本にも載っていないと思われます。

ですから、いくらウェイン・ショーターのファンとはいえ、こんな盤を買ってしまった私は、全くのハズミで、当に一期一会を痛感しているのでした。もちろん、後悔していません!

コメント (2)
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