最近仕事が忙しく、私的にも落ち込む事があったりして、どうも朝に調子が出ません。ブルーにこんがらがって、というのはディランですが、ブルースどっぷりの朝には、これを聴くことにしています。
■The Soulful Piano Junior Mance (Jazzland)
ジャズとブルースには、切っても切れない宿縁があり、ジャズとソウルは腐れ縁!?
このアルバムは聴いているうちに、そんなことが心を過ぎる1枚です。
録音は1960年10月25日、メンバーはジュニア・マンス(p)、ベン・タッカー(b)、ホビー・トーマス(ds) というトリオ物です。
ジュニア・マンスはブルースとブギウギをルーツにしながら、バド・パウエル以降のビバップも吸収した、いかにもハードバップ愛好者が御用達の存在♪ ベン・タッカーは堅実なシブイ脇役ですが、ボビー・トーマスは息の長い活動をした名手で、なんと末期のウェザー・リポートにも参加している隠れ実力者です――
A-1 The Uptown
変拍子ながら、なかなか楽しいブルースで、両手のバランスとブルースそのものというフレーズばかりのアドリブが魅力です。ビートがグイノリでは無いので、なんとなく地味な雰囲気なんですが、それが深いブルース・フィーリングに彩られていくあたりに、グッときます。
A-2 Ralph's New Blues
お馴染みMJQの持ちネタに果敢に挑んで、最高の結果を出してしまった演奏です。感情を押し殺したような出だしから、徐々に熱していくブルース・フィーリングは、クライマックスでゴスペルに転化し、最後には昇天!
ジュニア・マンスのピアノスタイルはブロックコードを多用していますが、タメの効いたシングルトーンとの対比も鮮やかですねぇ~♪
A-3 Main Stem
デューク・エリントンが作った隠れ名曲をアップテンポのハードバップで処理していますが、バカノリのように見せかけて、実は考え抜かれたアドリブになっているのではないか? という疑念も感じられます……。
A-4 Darlin Je Vous Aime Beaucoup
一転、哀愁のスロー演奏です。
これはナット・キング・コール(vo,p) の持ちネタということで、ここでは黒い感覚に加えてジェントルな雰囲気も滲ませた、ジュニア・マンスの二面性が楽しめます。それが全く、上手いんです♪ 当に名曲・名演でしょう♪
A-5 Playhouse
ジュニア・マンスが書いたゴスペル味のハードバップ曲で、十八番のフレーズの連発には、何となく同系のピアニストであるレイ・ブライアントを想起させられます。もう少し派手さが欲しいという……。
B-1 Sweet And Lovely
お馴染みのスタンダード曲がブルースに彩られてハードバップに変換された演奏です。スローな展開がなんともグルーヴィで、しかも原曲の甘さも活かされているという素晴らしさです。
ここでもタメの効きまくったブルースのフレーズが多用されていますが、クセやクサミが無いところは、良いですねぇ♪
B-2 Oo-Bal-Dee
落ち着いた出だしから、破壊的なブロックコード弾きが飛び出したりする、これもジュニア・マンスならではのグルーヴが満載! もちろん途中からは大ゴスペル大会になるのでした。
B-3 I Don't Care
これも落ち着いた演奏ですが、そこはかとない哀愁やエキゾチック感覚が不思議な味になっています。
アルバムもここまで聴いてくると、ジュニア・マンスは何時も同じ手ばかり使う、融通の利かないタイプだとわかってくるのですが、それでも止められない魅力が確かに有るピアニストだと思います。
B-4 Swingmatism
これも地味~な演奏で、まあ、聴くほどに味が滲みて来るといったところでしょうか……。それでも徐々に盛り上げて、2分目あたりから大ゴスペル&ファンキー大会に突入していきます。あぁ、間違いなく、これもハードバップです!
ということで、派手さがほとんど無く、全篇がジュニア・マンスのピアノを中心にベースとドラムスが堅実にサポートしているだけのアルバムなんですが、これが朝一番とか、仕事をしながら聴くと威力を発揮します。
つまり私は聴くほどに魂が高揚していくのです。まさにタイトルに偽り無し!
ジワ~っと周囲が黒くなっていく快感に酔い痴れるアルバムだと思います。