今日は「母の日」です。皆様、お母様にプレゼントを、ねっ♪ 感謝の言葉のひとつでもいいわけですよ。
それにしても「母の日」は輝いていますが、「父の日」の影の薄さよ……。
ということで、本日は元気の出る、豪放な、これをっ――
■A Day In Copenhagen / Dexter Gordon & Slide Hampton (MPS)
正統派モダンジャズがフリージャズやロック&ポップスに食い荒らされた1960年代後半、それでもジャズに拘りぬいたベテラン達の多くが、欧州に活躍の場を求めたことは正解でした。
そこではライブばかりでなく、素晴らしいアルバム製作も行われたのですから♪
この作品もそんな1枚で、録音は1969年3月11日、メンバーはディジー・リース(tp)、スライド・ハンプトン(tb)、デクスター・ゴードン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アート・テイラー(ds) という実力派が勢揃い♪ もちろんタイトルどおり、コペンハーゲンのスタジオでのセッションです――
A-1 My Blues
いきなり快調なテンポでリズム隊がペース設定、ここはケニー・ドリューが主役ですが、ニールス・ペデルセンとのコンビで作り出されるグルーヴは、欧州系ハードバップではお約束のノリ♪ つまりこの頃の「時代の音」になっています。しかもここではドラムスが本物のハードバップを叩けるアート・テイラーということで、ズバリと核心をついた演奏になっています。
そして続けて3管による豪快なテーマ吹奏からデクスター・ゴードンが悠々自適なアドリブを展開すれば、気分は完全にグルーヴィです。う~ん、それにしてもアート・テイラーは良いですねっ! この人はもっと評価されてもいいドラマーだと思います。
それに煽られてケニー・ドリューも気持ち良くスイングしていますし、ディジー・リースからニールス・ペデルセン、そしてスライド・ハンプトンへとリレーされていくアドリブソロは、全員が快調そのものです。
A-2 You Don't Know What Love Is
モダンジャズはでは通常、スローテンポで演奏されるスタンダード曲ですが、ここではアップテンポで最高にカッコ良いハードバップに作り変えられています。
そのアレンジはスライド・ハンプトンによるもので、この人はトロンボーンの豪快な演奏スタイルと同様に、作編曲面でも野太いところが特徴です。
アドリブパートでは、まずスライド・ハンプトンが大暴れした後、デクスター・ゴードンが負けじと豪快なスタイルを披露し、ディジー・リースの引き締まったトランペットにバトンタッチされています。
しかし最大の聴きものは、やはりこれぞハードバップという変奏されたテーマそのものでしょう。余韻と潔さが同居したエンディングも最高です。
A-3 A New Thing
これまた痛快なハードバップで、作編曲はスライド・ハンプトン!
アドリブパートはほとんどデクスター・ゴードンのツボを外さない一人舞台ですが、リズム隊も好演です。
B-1 What's New
これもモダンジャズでは定番のスタンダードをハードバップにアレンジした秀逸な演奏です。アドリブパートはデクスター・ゴードンが堂々と先発を務め上げ、それを受け継ぐディジー・リースもジャズの雰囲気を大切にしています。この人はジャマイカ生まれのイギリス育ち、1950年代後半にはアメリカでも活躍した隠れ名手ですが、ここでは新しいフレーズも取り入れて頑張りを聴かせてくれます。
演奏はこの後、スライド・ハンプトンからケニー・ドリューにソロが受け渡されますが、次に飛び出すニールス・ペデルセンのベースが凄すぎる快演です。
B-2 The Shadow Of Your Smile / いそしぎ
これもモダンジャズの定番と言っていいでょう、デクスター・ゴードンの十八番でもありますから、ここは緩やかなムード満点で演奏されています。そしてリズム隊の素晴らしさも特筆物で、特に派手さを押さえたニールス・ペデルセンのベースが素晴らしいと思います。
B-3 A Day In Vienna
大団円はド派手なリズムの豪快なハードバップ♪ もちろん作編曲はスライド・ハンプトンです。そしてアドリブ先発のデクスター・ゴードンが文句無しの豪放さを発揮すれば、ディジー・リースはドライなスタイルで応戦! 続くスライド・ハンプトンも大健闘しています。
そしてリズム隊の素晴らしさ! 特にアート・テイラーは流石の快適なクッションで場を盛り上げていきますので、ケニー・ドリューはバカノリですし、ニールス・ペデルセンも遺憾なく驚異のテクニックを披露していくのでした。
ということで、これは往年のハードバップを、本場を遠く離れた地で再現した趣向と解釈していいんでしょうか? 形式的に再現したというには、あまりにも熱気ムンムンです!
実はジャズ史的には、このセッションの直後、ネオ・ハードバップ旋風が欧州から本場のアメリカへ吹き込んでいくのです。結局それはフュージョン・ブームには勝てませんでしたが、ジャズ喫茶文化のある日本では大歓迎されています。
このアルバムもその流れの中で、当時はジャズ喫茶の人気盤でした。個人的にもケニー・ドリューのグルーヴィなスイング感にKOされた記憶が鮮明ですし、このリズム隊でピアノ・トリオのアルバムを作って欲しかったと、今でも思っています。特に、繰り返しますが、アート・テイラーの真の凄みが良く出ていますねっ♪
ハードバップ好きには激オススメの1枚です。