今日は暑かったですねぇ、午後3時頃に国道の気温計を見たら、28℃! 車の中はクーラー全開! そして聴くのはボサノバが定番ですが――
■Stan Getz - Laurindo almeid (Verve)
軟弱そうで、実は硬派という人は大勢いますね。ジャズ界では白人テナーサックス奏者のスタン・ゲッツあたりが、そういう最右翼かもしれません。
それは歌物スタンダードばかりか、ボサノバを演奏してさえもです! 例えば聴いてほしいのがこのアルバムで、録音は1963年3月22日、メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、ローリンド・アルメイダ(g)、ジョージ・デュヴィヴィエ(b)、デイヴ・ベイリー(ds)、エジソン・マッシャード(ds,per)、ホセ、ソーレス(ds,per)、ルイス・パルガ(ds,per)、ホセ・パウロ(ds,per) あたりがクレジットされていますが、実際には正体不明のピアニストが参加していますので、確定的なことは言えません。
しかし演奏は極上♪ 何時聴いても、グッときます――
A-1 Menina Moca / 若い娘
軽快なリズムに泣きのテーマ・メロディ♪ これをスタン・ゲッツはクールに熱いフレーズで歌い綴ります。いゃ~あ、本当に良いですね♪ メロディを縦横に展開させていくスタン・ゲッツは、甘さに流れることなく、かなり硬派なツッコミをいれてくるのですが、リズム隊が全く崩れないところも最高です。
また相方のローリンド・アルメイダはナイロン弦の生ギターで応戦しますが、ここではテーマ・メロディをストレートに弾いて、尚且つ感動させてしまう、ある種の大技を披露しています。
そして次に出るのが正体不明のピアニスト! 正直言ってヘタウマ系なんですが、妙に憎めません。おまけにそれを受けて、再びアドリブを展開しつつラスト・テーマに帰していくスタン・ゲッツには脱帽です。
A-2 Once Again
アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲した魅惑のメロディをスタン・ゲッツはクールに吹奏し、アドリブに入っても軽快なリズム隊の意図を理解しつつ、膨らみのある展開を聴かせてくれます。
ローリンド・アルメイダは、ここでも元メロディの変奏に終始しますが、それがまた、良いんですねぇ~♪ つまり原曲が良すぎます♪
A-3 Winter Moon / 冬の月
スタートから、これはムード満点♪ こんなん洒落たキャバレーで聴いていたら、もう、たまらんでしょうね……。もちろん隣の席には日活アクション系の女優さん、例えば芦川いづみとか南風夕子とか……♪
しかしスタン・ゲッツは硬派です! かなり烈しい思惑を秘めたフレーズを吹いているのです。またローリンド・アルメイダも懐の深いソロを聴かせてくれるのでした。
B-1 Do What Yo Do, Do
アップテンポで泣きのテーマ・メロディが提示されますが、ここはノッケからシビアなものを含んでいるようで、スタン・ゲッツが過激なノリを聴かせてくれます。ただしそれは奥底の話で、表向きには爽やかな力強さ♪ そこが天才性の表れかもしれません。聴き手は曲の終わりまで気を抜けない演奏だと思います。
B-2 Samba Da Sahra / サーラのサンバ
ローリンド・アルメイダ作の名曲です。ややネクラなテーマをスタン・ゲッツが哀愁を滲ませて吹奏すれば、ローリンド・アルメイダは微妙なメジャーコードを混ぜて応戦していきます。う~ん、好きですねぇ、このメロディ展開と解釈は!
そして後半は、このセッションにおけるスタン・ゲッツのガチンコぶりが良く表れていると思います。
B-3 Maracatu-too
アルバムの締め括りは陽気な打楽器の競演からハードなスタン・ゲッツが大ブローしていくという、なかなか迫力のある仕上がりになっています。おそらく、きちんと作られた曲というよりは、即興性を大切にしたジャム・セッションから生まれた曲なんでしょう。
しかし演奏は鋭さがいっぱいです。ラストだからといっても、和みなんてありません。ここでも正体不明のピアニストが登場したり、またアドリブ全体がモードの解釈に基づいて展開されるところもあります。
リズム隊も強烈です!
ということで、スタン・ゲッツのボサノバ物の中では、やや人気薄の盤なんですが、私は好きですねぇ~♪ かなりジャズ寄りでありながら、原曲メロディを大切にした演奏がたっぷりです。
それはローリンド・アルメイダの参加がミソでしょうか。
この人はボサノバがブームになる以前にブラジルからアメリカにやってきて、主に西海岸派のジャズメンと共演していたのですが、リーダー盤としてはかなり軟弱なムード系の作品を多数出しています。最近ではそれがソフトロックとかラウンジとかの括りで再発見されて人気盤化していますが、こういう硬派な作品も、ぜひ聴いていただきたいものです。
原曲メロディをストレートに弾いて、尚且つジャズにしてしまうところが、凄いです。