今場所の大相撲は、近年稀な熱戦が多いですね。物言いとかキワドイ勝負が頻発して、おもわずテレビに釘付けに! うへぇ、仕事が進まん……。
ということで、本日は何の脈絡もなく、これを――
■Boss Guitar / Wes Montgomery (Riverside)
アドリブ名人はどんな企画・編成でも不滅の輝きを放つと、以前書きましたが、やはりジャズ者としては、小編成でバリバリとアドリブをやった演奏を聴きたいのが、本音だと思います。
このアルバムは当にそれで、実はウェス・モンゴメリーは同じ時期にガチガチにアレンジされたストリングス入りの作品を製作中だったことから、その反動とも解釈出来る自由奔放な演奏が楽しめます。
録音は1963年4月22日、メンバーはウェス・モンゴメリー(g)、メル・ライン(org)、ジミー・コブ(ds) というトリオ編成です――
A-1 Besame Mucho
ラテンの人気曲に真っ向から勝負するウェス・モンゴメリーはワルツっぽいニュアンの速い4ビートという、怖ろしい解釈を聴かせてくれます。しかし難解なところは全く無く、爽快そのもの! 溢れ出るアドリブ・メロディは歌心に満ちており、十八番のオクターブ奏法からコード弾きという展開も、お約束を超越した迫力です。
脇を固めるジミー・コブのドラムスも歯切れ良く、メル・ラインのオルガンも控えめながら健闘しています。
A-2 Dearly Beloved
ミュージカルの大スタアであるフレッド・アステアの小粋な歌があまりにも有名なこの曲を、ウェス・モンゴメリーは高速4ビートで聴かせてくれます。ジミー・コブのシャープなドラムスをバックに、全く乱れぬ運指が神業です。親指だけのピッキングも力強く、やはりこれは神の領域か!?
そこへいくと、メル・ラインのオルガンは人間らしくて憎めません。
A-3 Days Of Wine And Roses / 酒とバラの日々
一転してムード満点な演奏で、この名曲の解釈としては、ファンが望むところを大切にしての大サービスだと思います。
ジミー・コブのサクサクいうブラシも気持ち良く、ウェス・モンゴメリーは即興とは思えぬ美メロを弾きまくりです♪
A-4 The Trick Bag
初っ端からド迫力のハードバップ曲は、ウェス・モンゴメリーのオリジナルということで、十八番のフレーズがピンピン飛び出してきます。あぁ、これがウェスですねぇ~♪
メル・ラインのオルガンも疾走感がありますし、ジミー・コブのドラムスは何時だって素晴らしい! 終盤ではドラムソロとリフの掛け合いという見せ場も用意されていますし、全体にバンドとしての纏まりも最高です。
B-1 Canadian Sunset
このアルバムのハイライト♪ まずジミー・コブが叩き出す快適なボサビートに乗って抜群のテーマ解釈を聞かせるウェス・モンゴメリーが、最高です! しかも、この部分だけ聴いて、もう辛抱たまらん状態なんですが、その後のアドリブが素晴らしさの極致! これも神の領域です♪ この和みと緊張感のバランスが余人には真似出来ない境地でしょうねぇ~♪
そしてメル・ラインも畢生の名演! こんなん、何処かのラウンジで聴かせてもらったら悶絶必至です♪ あぁ、何度聴いても最高です!
B-2 Fride Pies
これもウェス・モンゴメリー作曲によるハードバップで、ビシッとキメまくりのリズム的快感が楽しめます。それはトリオ3者のコラボレーションの妙技が冴えている証で、ツボを押さえたブルース進行の楽しさ、奥深さを堪能させられます。
ちょっと聴きには簡単そうなウェス・モンゴメリーのここでのソロは、いざ、コピーすると地獄へ直行の物凄さで、特に後半のオクターブ奏法からコード弾きは天使と悪魔の鬩ぎ合いです。
B-3 The Breeze And I / そよ風と私
またまた人気ラテン曲を聴かせてくれるウェス・モンゴメリーは、ここでも高速4ビートで神業を披露しています。う~ん、全くこの人は人ではなくて、神です。厳密に言えばミスタッチもあるのですが、それすらも完成形の一部にしてしまう凄みが!
それとジミー・コブのドラムスも最高で、シンバルとオカズの美学がたっぷり楽しめますし、メル・ラインのオルガンソロのバックでウェス・モンゴメリーとグルになって聞かせる煽りも強烈です。
B-4 For Heaven's Sake
アルバムのラストはスローな歌物、グッとクールダウンを狙った演奏になるはずが、この内側からこみあげてくる情熱はなんでしょう……! 押さえた表現の中に泣きの美メロをちりばめてアドリブを完遂するウェス・モンゴメリーは、やはり……。あぁ、絶句して聞き終えるこのアルバムの素晴らしさ……!
ということで、これはムード満点、迫力たっぷりの名盤です。小編成ということで、自宅で聞き流してもイケますが、そうしているうちに、いつしか聴き惚れてしまうこと請け合いです。
ちなみに現行CDには別テイクのオマケがついていますが、ウェス・モンゴメリーのアドリブは全く違う展開になっているあたりが、聴きところでしょう。やはり名人は違います。
そして一番凄いのは、緊張感と同等に和みも大切した、その演奏姿勢だと思います。