永遠のゼロを書いた百田尚樹氏の変わった習慣に、財布を持たない、
というのがあるそうだ。ごきげんようの客席から一斉に「えーっ」と声が上がる。
札は胸ポケットに、小銭はズボンのポケットに入れているらしい。
理由はほぼ察しがついた。私と同じだからだ。要するに、早い、という理由。
長財布を取り出す手間が要らない。なんだかうれしい。大作家と同じくせ、同じ理由。
私の方が、これを始めてから長いかも。30年とか言っていたようだ。
私は勤続年数とほぼ同じ。36年以上。つまり長財布は持ったことも、
使ったこともない。
そもそもの始まりは、飲み屋の勘定をするのに、いつも負けていたから。
金を出す気持ちはあるが、スピードで負ける。すると大体、「いいから」と
言われる。それが嫌で、ワイシャツの胸ポケットに札を入れて歩くように
なった。札の順序も決まっている。千円札から順番に出しやすいように
重ねてある。
このやり方にも欠点はある。夏場、上着を脱ぐ季節は、札が透けて見える。
このことに長いこと気が付かなかった。冷や汗をかいてからは、札の前に何かを
入れるようになった。例えばメガネ拭きの布とか。
小銭はさすがにジャラジャラ言わないように、小銭入れに
入れている。これで常に勝てるようになった。タクシーの場合でも、
めしでもなんでも。ついでに言うと、割り勘も好きではない。
1軒目におごられたら、2軒目で返す。そういう飲み方が好きだ。
占いの先生、こともあろうに、財布を持たない人は運気が上がらない
と、のたまう。
誰に向かって言ってるの、300万部突破の売れっ子先生ですよ。
言うならオレでしょうよ。
なんて庶民感覚な占い師さんでしょう。
去年の10月26日の、或る晴れた日のことです。