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小児科って(その6)・・・

2012-08-08 11:04:01 | Weblog
 小児科では、親御さんから、「大丈夫でしょうか?」とよく尋ねられます。本心は、「大丈夫ですよ・・・(私を信じて)」と言って、親御さんを安心させたい所ですが・・・医学の場合には、個人差が大きく、思わぬこともあり、それが不信感の始まりになることもあって、言えないですね・・・。
 「大丈夫だと思います・・・」と言うと、受け取る側は、「先生からあの時、大丈夫と言われたのに・・・」と言われ兼ねないことになりますが・・・。
 小児科の医師は、検査データや病名を説明することに重点を置きたがりますが、親御さんにとっては、病名や状態よりも、子どもがこの先大丈夫かどうか、それが一番問題になるかと思いますが・・・?!
 実際には、経過を見て判断できることが多いのですが・・・。(←小児科の場合は、外来で病名が来院時に付いたり、入院時に既に病名が付いていることが多いのですが・・・)
 例えば、お腹をとても痛がって来院したとしましょう・・・。
 平成○○年8月6日の16:00過ぎに、8歳の男児が、お腹をとても痛がって、(熱がなくて)嘔吐して、祖母と一緒に(当院を初めて)受診しました。左の腹痛、特に上腹部を痛がりました。部位的には、便秘や腸炎かと思いましたが・・・便秘で嘔吐のことは少なく、今日も普通に便が出たと言い、腹部を触っても、さほど硬い便が触れませんでした。
 頭痛や咽頭痛や鼻汁や咳嗽などもなく、夏休みと言うことで、里帰りで、○本市から田舎に来て、祖母の家に住み込んでいる所でした。祖母の話では・・・→11:30過ぎに、ドーナツと梨を食べていて、他の人も食べて、どうもなっていないとのことでした。下痢がないので、(ブドウ球菌性)食中毒ではなさそうですが・・・。
 痛みが止まらないので、(腸閉そくなどを疑って)腹部の立位写真を撮らせてもらいました(レントゲン写真を撮る時には、親御さんの了解を得てしていますが・・・)。左上腹部にガスが沢山貯まっていました。外科の先生にも診てもらいましたが、病名がはっきりしませんでした。
 血液検査では、白血球は、1万4000と多いのですが、炎症反応を示すCRPは正常で、肝機能や腎機能の検査も、正常でした。(←白血球は、直ぐに多くなるのですが、CRPは、12時間前後しないと上がってきません・・・)
 祖母と相談して(電話で母親の了解も得て)、一般状態が良くないので、入院と言うことになりました。入院して点滴を続けていると、幸いに、次第に痛みが軽減してきました。
 母親が遅れて○本市から来ました。母親の説明ですと・・・→学校でもお腹を痛がって、保健室に行ったことが何回かあるとのことでした。
 入院後、患児は、よく眠れた様子で、翌朝の朝食もちゃんと摂れ(この時には、まだ、少し腹痛あり)、昼食もしっかりと摂れ(この時には腹痛全くなし)、昼過ぎに目出度く退院となり、○本市の主治医に、紹介状を書くことにしました。
 私の今までの経験の中には・・・→同じ8歳の女児で、やはり同じ様な腹痛で時間外に(ショック状態で)来院して、血圧が上がらずに亡くなり、剖検の結果、内ヘルニア(腸間膜裂孔ヘルニア)だったことがありました。
 同じ年齢の男児で、頑固な腹痛が続く為、大学に紹介して、「腹性てんかん」と診断を受けた例もありました。
 もちろん、急性胃腸炎(や時に急性虫垂炎、時にアセトン血性嘔吐症、それに、乳幼児ですと、腸重積症)のことが最も多いのですが・・・大きい子どもですと、内科で内視鏡で調べてもらって、潰瘍になっていたこともありました。
 検査所見に特に異常がない場合では、便秘や腸の機能的な疾患のことが多く(反復性腹痛、腸のけいれんなど・・・)、稀には、S字状結腸茎捻転症のこともありました。
 又、心臓外科や交通事故の後に、とてもお腹を痛がっていた子もいました(虚血?やアセトン血性嘔吐症?の為・・・)。
 診断を付ける上では、特に小児科の場合には・・・→小児は、変化が激しいので、忙しく診て行く必要がありますね・・・そうすることで、無駄な検査もしなくていいし、無駄な治療もしなくてもいいし、いい医療が出来ることになります。しかし、小児科医にとっては、生身の体、大変ですね。それに、いざと言う時の他の医療機関との連携も大切ですね。

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