朝鮮近現代史研究者の姜徳相さんが、2021年6月12日亡くなった。一橋大学教授、滋賀県立大名誉教授だった。関東大震災時の朝鮮人虐殺関連資料の発掘で知られる。
わたしがお世話になったのは、1997年岩波書店発行の『朝鮮人学徒出陣』だ。北野定時制の廃校に際し、最後の1クラスの担任をしていた2008年から09年、『北野定時制72年史』を書いた。そのひとつの中心テーマが戦時下の学校だった。校史資料のなかから、憲兵隊が朝鮮人生徒の思想調査を学校に求めた一連の文書を発見した。そこから朝鮮人生徒の動向と学校の対応が浮かび上がってきた。5人の朝鮮人生徒は、本来なら卒業を許されるはずなのに、民族運動をしているとの嫌疑で取り調べ中を理由に落第扱いとなった。のち5人とも学校を去った。姜徳相さんの『朝鮮人学徒出陣』は朝鮮人を軍に志願させるためにありとあらゆる手段、脅し、脅迫で追い込んだ実態が詳述されている。とうぜん抵抗が激しくなる。北野の朝鮮人生徒5人は強制的な志願を忌避すべく帰省したが、朝鮮の方がむしろ圧迫は厳しかった。5人のうち何人が特別志願したかはわからないが、韓国の国立公文書館で調べたところ、1人が1944年11月入営し各地を転戦した軍歴を確かめることができた。
『72年史』のあと、『おおさかの子どもと教育』(大阪教育文化センター発行)59号2009・9に「発見された資料 憲兵隊による朝鮮人生徒の思想調査」と『大阪の歴史教育』(大阪歴史教育者協議会発行)第43号2010・5に「北野夜間中学とアジア太平洋戦争——朝鮮人生徒の思想調査など――」を書いた。姜徳相先生の研究に導かれて深めることができた。
あらためて姜徳相先生に感謝したい。
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