日本共産党の参議院議員を2期12年(兵庫)つとめた安武ひろ子さんの最後の歌が新日本歌人協会の『新日本歌人』2019年11月号に載った。まず、表紙に「無為に過ごす日などあらざり命かけ戦への道に大手ひろげん」安武ひろ子 とある。この歌は安武さんの生涯そのものだったろう。表紙裏の「解説と鑑賞」によれば、この歌は2018年の歌集『あすに花束を』の「国会」の中の一首だそうだ。表紙裏には、さらに7首が載せられている。その中から4首。
許せるが忘れはできぬと民族の痛みの歴史をガイドは語る 『いのち愛おし』「ソウルの空」
歌いましょうと元慰安婦は鳩ポッポを巧みに歌う明るき声で 同 「ナヌムの家」
「自衛隊イラクへ入る」と太き字で今日の日記は一行のみ書く 同 「閃 光」
銃口を塞ぐ盾に我もならん街宣マイクはしかと握りぬ 同 「憲法の危機」
安武ひろ子さんは、わたしがまだ若い教員になりたてで川西市に住んでいたころ、参院選の兵庫選挙区からすい星のごとく当選した。川西市では市会議員選挙などで4000票台しかとっていなかったのに、なんと12000票も取ってみごと当選したのだ。希望の星だった。
安武さんは、『新日本歌人』に毎月投稿し、何首か掲載されていた。8月、安武さんの訃報を新聞で見た。『新日本歌人』11月号の楠山繁子さんの作品評に安武さんの歌と作品評があった。そのまま引用する。
めぐり来ぬ「あす」という日を思いみるゆっくり朝の髪とかしつつ 安武ひろ子
息絶ゆるその間際まで反戦を貫き通すと声にしてみぬ 同
安武ひろ子さんは8月8日に亡くなったと新聞で知りました。その直後に届いたこの歌は、死を予期していたかのような、まさに辞世の歌と思います。「めぐり来ぬ『明日』という日を思う」とはどんな気持ちでしょうか。それでも朝の身支度をする。静かに毅然として。二首目の歌の通り、息絶えるそのときまで戦争に反対し、平和を求めて戦い抜いた生涯に敬意を表します。
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