山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

国際芸術祭に補助金取り消し、安倍首相官邸の検閲・統制

2019年09月27日 23時12分20秒 | Weblog
 加計学園問題の中心にいた萩生田光一文部科学相が9月26日(2019年)、愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への7800万円の補助金を4月に採択したのをくつがえして不交付とした。交付取り消しの理由は、日本国憲法の下、さすがの極右政権といえども表向きは展示内容とはいえず、「手続き上の不備」だという。
 文化庁によれば、交付には「実現可能な内容か」「事業の継続が見込まれるか」が重要だそうだ。県が警備態勢で早い段階から警察と相談していたにもかかわらず、文化庁には開幕後まで報告しなかったため適正な審査ができなかったとして不交付にしたというのだ。だが大村知事が当日テレビカメラに向かって、交付採択の4月には警察に相談もしていない、事実関係がむちゃくちゃだと厳しく批判していた。採択決定後の審査で適正な審査ができなかったというのであっても、直前の妨害行為への対応を問題視するのはやはり、こじつけだ。開幕直前、官邸とも近い維新・松井や名古屋市長の河村らが展示内容を攻撃し、右翼による開催妨害の動きが出、開催数日にして中止に追い込まれた。政府は、断固として表現の自由を守るために妨害は許さないと声明を出すべきなのに何もしないどころか、「朝日新聞」27日付けによれば、官邸内では展示にいらだつ声が上がっていたという。民主社会の政府の姿とはいえない。
 不交付の理由として文化庁は、「表現の不自由展・その後」が問題なのではなく、円滑な運営に対する懸念があったのに申告しなかったことだという。だが、交付申請の段階では全く問題はなかったのだから、筋違いもはなはだしいし、言いがかりだ。懸念が生じたのは表現の自由を破壊する連中によるものであって、警察がきちんと対処すべき問題だった。
 この点について、萩生田文科相は、「正しく運営ができるかどうか、きちんとした管理ができるかどうか、この一点」と囲み取材で答えた。これは一段とひどい発言だ。文化庁は、(存在しなかった)警察との相談を申告しなかった手続き上の不備を問題にした。萩生田氏はきちんと管理運営できるかどうかが問題だという。手続きではない。ここは重要だ。こうなると、右翼が脅迫をして混乱をつくりだす、管理運営に問題が出れば、それを理由に補助金を停止するということになる。加害者を問題にせず、被害者の責任を問うという、人権問題の逆転状況を広げようという発想だ。
 「不自由展」はトリエンナーレの一部であって、予算的には全体12億のうち420万円にすぎない。予算全体の0・35%だ。悪い決定であっても、この比率分だけにとどめるべきだ。だが、全額を削ったというのが安倍政権の本質を表している。つまり、安倍政権の下で「不自由展」のようなものをやるのは許さないということを示した。見せしめとして全額削除をしたのだ。検閲そのものだ
 表向きは展示内容ではないというが、本心は誰が見てもわかりきっている。菅官房長官が8月始めの時点で、「事実関係を確認、精査したうえで適切に対応したい」と述べて、不交付への道をつけている。
 この不交付決定は、日本の民主主義、人権にとって由々しき問題だ。「手続き上の不備」はこじつけで「不自由展」の内容を嫌悪して不交付にしたことは否定できない。憲法21条の表現の自由に対する重大な侵害だ。
 大村知事が裁判で争うというのはもっともだ。ところが、主催の一員である名古屋市の市長河村氏は安倍政権に同調して市の分担金2億円を払わないといいだした。かつては大村氏と河村氏は協調していたが、ここにきて両者の違い、河村氏の異常ぶりが際立ってきた。河村市長は憲法遵守義務があるのをおそらく知らないのだろう。哀れな姿だ。
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