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司法省、アリゾナ州移民法を提訴

2010-07-08 08:33:56 | アメリカ政治
司法省は昨日、アリゾナ州及びアリゾナ州知事(個人名だが、州知事の権限において)に対し、アリゾナ州の移民法が憲法違反であるとして、アリゾナ州の地方連邦裁判所に提訴した。

州法が成立した時に、オバマ大統領、ホルダー司法長官、ナアポリターノ国土安全保障省長官が雁首並べて、たった16ベージの原文も読まずに、Racial Profiling (ヒスパニックに見えるというだけで、警官が職務質問出来る)など、人種差別、人権侵害の危険性がある法律であると、事実無根のデマを並べ立て、ヒスパニックや人権保護団体をいたずらに煽った経緯がある。挙げ句の果てに、ホワイトハウスはメキシコ大統領まで利用して、アリゾナ州を非難している。

今回の訴状をみてみると(原文はこちら)、提訴内容は、アリゾナ州の移民法は、憲法の Supremacy Clause (連邦法は州法に優先する)に違反するというのが、骨子である。つまり移民法は、連邦政府の専任事項であるので、州が法を定めるのは憲法違反と言っているのである。

アリゾナ州を訴えると言い始めた当初は、Racial Profiling の可能性があり、人道上よろしくないと言っていた事を覚えているので、充分な検討もせず思わず挙げた手をすごすごと下ろす訳にも行かず、無理矢理提訴に漕ぎ着けた感、たっぷりである。

アリゾナ州の移民法(くどいですが、再び原文)は、アリゾナ州の警察や地方自治体が、連邦移民法を執行強化する事で不法移民による問題の減少を目指すとしており、連邦(国)の移民政策については一切触れていない。よって、連邦移民法の執行不足で窮地に陥っているアリゾナ州が、やむを得ず自衛の為に連邦移民法に基づいて不法移民を取り締まろうとしているのに、連邦政府は、責任を果たさないばかりか、いちゃもんをつけているのである。

現在、アリゾナ州以外でも17州が同様な移民法を検討しており、オバマ政権としては牽制の意味もあると思われる。

今回の提訴は、この秋の中間選挙へ向けてのオバマ政権(民主党)の選挙活動の一環と考えている人もいる。つまり、ヒスパニックや人権保護団体へのアピールだというのだ。(それ以外の理由は考えられないのも事実)

アリゾナ州移民法の施行日は7月29日。裁判は先ず、アリゾナ州の地方連邦裁判所から始まるのだが、いつ判決が出るのだろう。(追記:29日までに何とか判決を出そうとしているようだ)でも、結局は最高裁まで行く可能性が高い。但し、過去の判例からすると連邦政府が勝つ事が多いとの事だ。でも、連邦政府が裁判で勝とうが負けようが、連邦政府に勝ち目はない。世論調査でも圧倒的(70%)にアリゾナ州支持が多いし、移民改革法案でもしゃべるばっかりで何もしないオバマ大統領への不満が高まっている。

アリゾナ州知事の Jan Brewer (女性、共和党)は徹底抗戦の構えである。こちらも今秋の再選の為のなり振り構わない戦略だという声もあるが、この州法の成立で俄然支持率も上がってきている。彼女は、この提訴は税金の無駄遣いであり、裁判で連邦、州が浪費するお金で国境警備がいくらかでも出来ると訴えていたが、全くその通りである。尚、彼女は州の裁判費用を寄付で賄おうと募金も開始している。

では、政治的計算ばかりのオバマ大統領に、2008年の民主党大統領予備選でのヒラリーのオバマに対するセリフをお借りして結びとしよう。

"Shame on you, Barack Obama."


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