YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

2010 一般教書演説

2010-01-28 19:37:49 | アメリカ政治
2010 一般教書演説 予想で、一ヶ月前に今日の事を考えたのですが、内容予想はさっぱりだったが、「中身が伴わない空虚な一般教書演説」と言う結論については、自慢できる位大当たりであった。

過去一ヶ月を振り返ると、デトロイトでのテロ未遂マサチューセッツ州の連邦上院補欠特別選挙での共和党候補の勝利とオバマ大統領のこの一年を悪い意味で象徴する出来事があり、今回の一般教書演説にも大きな影響を与える事となった。1995年のクリントン大統領を倣って、中道に舵を切るという噂もあったが、基本姿勢に変化は見られなかった。

端的に言うと、オバマはアメリカ合衆国を代表する大統領ではなく、民主党を代表する大統領と言う事がより一層明らかになった。

オバマ大統領の頭の中は、民主党対共和党という構図が根強くあるのだと思う。就任以来、両党協調でやろう言い続けながら、両院絶対多数で事を進めてきたのに、これを失った事で改めて、両党の協調を呼びかける事自体が、使い古された政治修辞であり、人々はオバマ大統領の言動不一致を鋭く嗅ぎ取っていると思う。議会運営に関しても、積極的に関与すのか、任すのかも判然としなかった。

気付いた事を思いつくまま記す。

景気回復と雇用改善を2010の最重点として取り組むとの宣言。方針としては大きな政府を志向しており、内容的に新しい物は無い。議会通過が難しくなってきている健康保険改革法案、炭素税(Cap & Trade)も、景気回復の一環として引き続き取り組むと言う妙な事になっている。位置付けを変えてトーンダウンしたが、基本的な政治姿勢は少しも変えていないことを示した。しかし、健康保険改革法案については、現在の窮地をカバーアップするようにジョークにしていたが、これは不適当であった。

急激に悪化する財政赤字については、やっぱりブッシュ政権批判がでた。就任して一年になるが、どうしても言っちゃうんだなー。来年度からの予算凍結を訴えたが、昨年20%も予算増をした上でのフリーズなので、政府金満体制の固定化(大きな政府の固定化)ではないかという噂もある。ばら撒いた住宅、車購入の補助金を減税と称していたのは、嘘といわれても仕方ないと思う。

一番驚いたのは、最近出た最高裁判決「政治献金において企業、NGOも個人と同じ権利を有する」を名指しで批判した事である。判決自体について最高裁判決になるくらいなので大いに議論があるのは当然だが、大統領が、それも一般教書演説で判決内容そのものについて言及するのは、司法に対する尊敬の念の欠如であろう。

アフガン増兵、イラン撤退、テロとの戦いについては、軽く触れたに過ぎない。キューバの収容所(ギズモ)を大統領命令どおりに閉鎖できなかった事、テロ容疑者のNYでの裁判については、触れず。核兵器絡みで、北朝鮮とイランへの経済制裁の徹底についてだけであった。外交については、今回はダボス会議で姿の見えないヒラリー国務長官の存在感が増した感じ。

ゲイ(同性愛者)の入隊について、「聞かず、言わず」の方針(ゲイかどうか聞かないが、ゲイであるとカムアウトすると除隊)の廃止、つまり軍隊でのゲイを差別(?)をなくすことを明言。これには賛成。

中国、EUの話題も無く、唯一、雇用改善のところで、保護主義を匂わす発言があった。

演説の最後で「私は諦めない」とキャンペーン風の力強い連呼があったが、一体何をと突っ込みたくなった。

待ちに待ったオバマ大統領の初めての一般教書演説であったが、悲観的な予想が大当たりと言う残念な結果に終わった。