YS Journal アメリカからの雑感

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マサチューセッツ 兵どもが夢の跡

2010-01-21 10:27:36 | アメリカ政治
テッド・ケネディー(日本では、エドワード・ケネディーで報道されていた)死去に伴うマサチューセッツ州の上院議員特別選挙で、共和党候補が当選した事は昨日 WOW で伝えたが、その衝撃はアメリカ政界を激しく揺さぶっている。

まず選挙結果であるが、テッド・ケネディーが47年保ってきた上院議席が共和党議席となる。マサチューセッツ州は、1972年以来、常に民主党が上院2議席を独占しており、全米でも民主党の強い州として知られていた。つい3週間前までの調査でも、民主党候補が圧倒的なリードを保っていた。そんななかでの共和党候補の当選なのだ。

この一議席の持つ重要性を見てみる。

まず、健康保険改革法案であるが、現在、両院で可決された案の調整が行われているが、上院でスーパーマジョリティが無くなった事で、共和党が引き続き一枚岩である限り、調整案の上院での可決が出来ないので法案にならない。議会運営の手段として、何らかの法案を通す術はあるのだが、今日の民主党議員のコメントを聞いている限り、裏技での法案可決はなさそうだ。今の政治環境でごり押しすれば、大変なことになる事をやっと民主党も理解し始めた。もし、可決されたらテッド・ケネディーの名を冠した法案になる予定だったので、皮肉以外の何ものでもない。

今後も、オバマ大統領が力を入れていた炭素税(Cap and Trade)、移民法改革、金融改正法案、そして景気刺激策第2弾は、まず可決しないであろう。オバマ大統領は、就任正にちょうど一年目で死に体になった。

今年11月に、両院の選挙(中間選挙)があるが、共和党が両院で過半数を獲得する可能性が高まっている。マサチューセッツ州のリベラルライオンと呼ばれたテッド・ケネディーの議席が、共和党に奪われた事で、基本的にどの民主党の議席も安全ではなくなった。

では、オバマ大統領はどう対応するのだろうか?かなり動転しているようで今日の会見で「昨日の選挙結果は、去年の大統領戦の結果と同質のものである。8年続いたブッシュ政権への怒りと不満が、炸裂した結果である。」と奇妙なコメントをしている。共和党候補は、マサチューセッツ州を代表するだけでなく、この一議席がオバマ大統領の進めている法案、特に健康保険改革法案をストップできる事を一貫して強調していたし、選挙直前のオバマ大統領の民主党候補への応援演説でも、自分の政策を推進するために是非、民主党候補に投票して欲しいと訴えたばかりなのにである。完全に混乱している。

では、今後オバマ大統領はどのように政権を持っていくのであろうか、オプションに一つは、クリントンの一期目のように、共和党よりの中道路線にシフトする事だろう。但し、昨日の選挙までは、両院で圧倒的多数を持っている事で、昨年一年を通して、不必要に敵を増やしている。又、一方で民主党のもっとも左よりのリベラルからは、特に健康保険改革法案で妥協しすぎていると言う批判もあり、孤立無援になりつつある。二つ目のオプションは、ここまでの路線を修正せず、元々の立ち位置、つまりかなり左なリベラルとして、玉砕の道を進むかである。

結局、オバマは No man's land の住人になったのである。この蟻地獄から出ようともがこうとすればするほど、墓穴を掘るであろう。副島隆彦とは全然違うところからの結論ではあるが、ちょっとすると大統領辞職もあるかもしれない。そんなところまで追い詰められつつある。もしオバマが放り投げれば、バイダン副大統領?下院議長ペロシ女史?アメリカも寂しい政治風景だ。

2期目の大統領選では、現職大統領が所属する民主党の候補者にもなれないと言う珍現象が見れるかもしれない。(そういう状況になれば出馬もしないだろうけど)今頃、2012年に向かって、ヒラリーが準備を始めているかもしれない。

オバマ大統領、民主党首脳が兵かどうかは、別次元の議論が必要であるが、今回の選挙結果で、アメリカの保守回帰の流れがはっきり現れたと思う。