【ニューカマー・レコメンド】人情に篤いワンタッチゴーラー:興梠慎三(鹿島→浦和) (13.02.19)
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2012年のリーグ最終戦が終わり恒例の監督挨拶が行われている間、興梠慎三はベンチウォーマーのフードを目深にかぶり溢れる涙を隠していた。ライバルである鹿島から浦和への移籍は過去に例も少なく大きな波紋を生んだが、もともと情に篤いタイプだ。サポーターが慰留を望んでいることは痛いほど感じていたのだろう。しかし、それでも移籍する決断に踏み切ったところに、興梠の決意を感じる。
宮崎・鵬翔高校から加入した当時はドリブラーという意識を本人も持っていた。カウンターになると中盤からゴール前まで一気にドリブルで持ち上がる場面をつくり、「ドリブラーなんで、そこは仕掛けていかないと」と意欲的に仕掛けていた。しかし、マルキーニョスとコンビを組むようになったあたりから、その意識が変わりだす。「ペナルティエリア内でのプレーが自分の特長」と話すようになり、事実、エリア内でのワンタッチゴールや鋭い反転からのゴールが代名詞として変わっていった。だからこそ、シーズン途中から1トップに切り替わり、そこでスペシャルな活躍を見せる大迫勇也が不動の地位を築けば築くほど、FWとしてプレーさせてもらえない昨季の状況は、興梠の心情に少なからず影響を与えたはずだ。特にシーズンオフに自分を見直し、調子の良かったシーズンにどういうプレーをしていたのかをチェック。ペナルティエリア内こそ自分の仕事場という思いを強くして臨んだシーズンだっただけに傷は深かったのかもしれない。
「自分のプレースタイルだと選手寿命は30歳くらいだと思う」
速さを武器にするタイプであることを自認し、それがいつまでも持続するものでないことも常に認識していた。今年で27歳となることを考えると、サッカー選手としてのピークを楽しめる時間も限られており、このタイミングでの移籍がラストチャンスになると感じていたようだ。「来年がほんとうに勝負の年になる」そう言って鹿島を飛び出していった。
やんちゃな印象が強いかもしれないが、信頼に応えようとする気持ちは人一倍強い。以前の指揮官であるオズワルド・オリヴェイラに対し「監督は俺のことが嫌いなんだと思う」と言いながら「なぜだかわからないけど最後は監督の言うとおりになる。監督のために優勝したい」と、男気を見せてきた。父性の強さはペトロヴィッチ監督も引けを取らないように感じる。鹿島のときと同じように忠誠心を尽くすはずだ。
以上
2013.02.18 Reported by 田中滋
鹿島番の田中氏による興梠評である。
2008年より鹿島のレギュラーを務め、2TOPの相棒であるマルキーニョスに影響を受けた模様。
PA内でのプレイが特徴と豪語するだけの結果は出してきた。
多くのタイトルにも恵まれたのは興梠の才能もあるが、鹿島という日本国内では無比のクラブに在籍しておったからこそ。
今季より、プレッシャーの強いクラブへの移籍を決断した。
彼の地にてどのような結果を残していくのであろうか。
更なる活躍にて再び代表に呼ばれるまでに成って欲しいと思う。
そして、そのとき、それは鹿島で育まれたことを忘れないでいて欲しいと願う。
遠くから見守っておる。