好調シャルケ、内田が感じた手応え
2010年11月26日(金)
■最近のシャルケは絶好調
フンテラールのゴールをアシストした内田。この日は右サイドで精力的に動き回った【Bongarts/Getty Images】
今季ここまでシャルケ04を見たのは2試合。8月28日のハノーファー96戦(1-2)と9月19日のドルトムント戦(1-3)だった。以降、足が遠のいていたのは、正直言ってシャルケ04の試合を見るのがつらかったからだ。当時のシャルケ04はチームとして体を成しておらず、成績ばかりか試合内容も悪かった。これがまだオランダ国内の試合ならいいが、わざわざドイツまでシャルケ04を訪れるには心身の負担が大きかった。
ところがだ。11月25日のチャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ第5節、シャルケ04は充実した試合内容で3-0とリヨンに快勝したばかりでなく、グループBの首位に浮上。3位のベンフィカがハポエル・テルアビブに同スコアで敗れたため、シャルケ04は1試合を残してCLのベスト16入りを決めた。
ブンデスリーガの前節でもシャルケ04はブレーメンを4-0と倒している。チームは今、明らかな向上の時期を迎えているのだろう。
リヨン戦は前半のうちにほぼ決着がついた。14分にファルファン、20分にはフンテラールがゴールを決め、シャルケはあっという間に2-0としたのだが、得点者2人にラウルを加えた豪華攻撃陣は絶好調のようだ。特に31分、自陣からのロングキックを後方から受け、振り向きざまの長距離ボレー&ロビングシュートを放ったラウルのプレーは美しすぎ、5万人をはるかに超す観衆たちが「ラウール! ラウール! ラウール!」と連呼した。
しかし、われわれ日本人にとってハイライトとなったのが89分、内田篤人の見事なクロスによるアシストだった。この日の内田はボールタッチ数こそ少なかったが、前半はブラジル代表のバストス、後半途中まではリサンドロ・ロペス、残り15分はカルストロムと対峙(たいじ)することが多く、安定した守備を見せていた。運動量も最後まで衰えず、残り10分になってから、エドゥとのワンツーからの突破を皮切りに何度も攻撃参加し続け、試合終了直前に速く低く鋭いクロスをファーサイドに入れて、フンテラールのダメ押しゴールをお膳立てしたのだった。
「フンテラールが逆サイドで手を上げていたので、(GKとDFの)間に速いボール――ですね。フンテラールは足元に(ボールが)入れば、(ゴールを)取れるんで。まあ、FWにいいボールを入れるのがサイドの仕事」と内田はクロスシーンを振り返った。
■Jリーグと“海外”の違い
後半、シャルケ04はリヨンの反撃に遭って劣勢な時間もあったが、守備に大きな破綻もなく相手を零封した。内田は「今日の相手は強いチームでしたけど、こういうサッカーができればリーグ戦も楽しいサッカーになる」と、リヨンの強さを肌で感じたようだ。だが元々、興味を持って海外サッカーを見ることがなかった内田にとって相手選手のことはほとんど分かっておらず、バストス、リサンドロ・ロペス、グルクフといった選手がそろうリヨンですら、「知らないですね。みんな同じに見えますから」と言って笑った。
そういえばハノーファー96戦はCLのグループ組み合わせ抽選の直後だったが、「みんなでデカいスクリーンで(抽選の様子を)見ていました。ラウルが『レアル・マドリー、来い、来い!』とか。(3チームの印象は)ぜんぜん分からないですよねえ。最初のシード(リヨン)しか分からない。フランスのチームですよね。海外のチームは見ないからぜんぜん分からない」と組み合わせに無頓着だったのがほほ笑ましかった。
しかし、内田の中でJリーグと“海外”の違いはハッキリした。シャルケ04戦後、内田は語る。
「こっちは結構何をしてもファウルにならないです。まあ、つかんだりしなければね。球際は練習中からそうですけど、180、190(センチ)ぐらいのデカい人たちとガツガツやりながらやっていけば、自分の癖になっていつか力になると思います。(欧州は)結構行っても倒れないから、遠慮せずにいける。変な意味でJリーグはファウルをもらいにくる選手が多い。こっちはホント、ちょっとぶつかろうが引っ張ろうがビクともしない選手ばかりだから」
■好調の要因は新加入選手が慣れてきたこと
周囲とのコンビネーションもかみ合い出し、内田のパフォーマンスも上がってきた【Bongarts/Getty Images】
内田はこの日、何度も前線の献身的な守備に感謝のコメントを残している。例えばこんな具合だ。
「センターバック2枚がホント強くボールに行ってくれて、危ないボールが少なかった。それは前の選手が追って限定してくれたから、後ろが頑張れた。後ろだけではなかなかディフェンスはできない。前がパスコースを限定してくれたりすると、後ろが狙いを持っていける。そういう意味ではチームがよく走って戦っていた。だからフランスの選手も有名らしいですけど、無失点で抑えられたんじゃないかと思います」
思えばハノーファー96戦後、内田はチームの不調についてこう語っていた。
「(ラウルのような選手でも)そんな簡単じゃないですよ、急にチームに入って。あれだけの経験があっても簡単じゃない。それでも(自分も)しっかりやらないといけないんだろうけど」
それが、3カ月経って内田のコメントはこう変わった。
「おれがそうなんですけど、今年新しく入った選手がすごいいるんですけど、そういう選手が慣れてきたというのもあるし、お互いの特徴をつかみ合っているというか。こういうところがいいプレーができるとか、(チームが好調なのは)そういうところじゃないですか。もともと、いい選手はたくさんいましたからね。勝てないチームではなかったので、これが普通だと思います」
スタジアムを出たのは深夜0時半。真っ暗なアウトバーンを飛ばして250キロ先の家まで車を走らせる。それでも内田のクロスのシーンに思い出し笑いが止まらず、疲れは感じない。「このままだと内田のクロスが夢に出そうだな」と思いながら布団にもぐり込んでも、熟睡しすぎて夢は見なかった。それでも、いいものを見ることができたという満足感とともに朝を迎えた。
労働者のチーム、シャルケ04のサポーターも昨夜見た素晴らしいサッカーと、夢のような結果にきっと同じような朝を迎えたはずだ。今日も一日頑張るぞ、というエネルギーをサッカーから授かりながら。
<了>
好調シャルケのコラムである。
確かにCLリヨン戦のクロスは素晴らしかった。
あのクロスが有れば我等が四連覇を成し遂げられたのではないかと、悔しい思いをする。
しかしながら、素晴らしいプレイが出るようになってきたのも、チームに馴染んできたため。
篤人が申すように、今季のシャルケは新入団の選手が多く、序盤は連携が不十分であった。
今、ここに来て好調になったのは、試合を重ね、選手を固定できるようになったところで、連携が熟成されたためである。
よく「若手選手を試合に出して成長させて欲しい」という話を耳にするがそれは間違いである。
試合に出すことによって、若手選手が成長して活躍するのではなく、試合に出ているから連携が深まり活躍するのである。
よって、成長しておらぬ選手を無理矢理試合に出したところで成長するどころか、試合に敗れ、内容も悪くなり、チームが崩壊へ向かうことになるであろう。
練習を重ね、戦力となれば自然と試合に出場することが叶うのだ。
今季のJリーグを見てもコロコロと選手を入れ替えたチームは調子が上がらずに苦しんでおる。
リーグ優勝を果たした名古屋など、選手を入れ替えたナビスコ杯では予選リーグすら勝ち上がれずにおる。
とはいえ、サッカーに正解はない。
何事も結果が全てと言って良かろう。
今季優勝できなかった理由に若手である、ヤスやジウトン、大迫など若手に頼らなければならなかったところが有ったような気がせぬでもない。
来季は
新たなサイクルの年、気持ちを新たに戦っていきたい。