先日、私の記事に一瞬表れていたコメントをご記憶の方もおられるでしょう。多分そこに書かれていた内容について気になっている方も多いかと。
そこで、折角ですので、この機会に「ある種の典型例」として取り上げさせて頂こうと思います。コメント主の方には大変申し訳ないのですが、お名前は伏せさせて頂きますので、コメントを利用させて頂きたいと思います。
別の見方をすれば、私のコメント主の記述に対する返答、とも言えますでしょう。
さて、件のコメントは次のようなものでした。
「素晴らしいまとめですが…ちょっと残念に思うことは、
コウモリやハクビシンのウィルスが変異し人へうつる、との説?の根拠です。・・・(中略)・・・第一、コロナも誰かが2018年すでに特許を取っているとか(数人ネット情報)、主犯は分かりませんが…仕事人は日本にもいる等、実名入りで載っていましたよ。
インフルエンザとHIVのウィルスを合体させる等、遺伝子組換えのプロ中の、
プロしか出来ない高度な裏術です。
コウモリ⇒変異⇒人は、歴史を都合のいいようにネジ曲げたと同じように、
私は真逆ではないかと思います。・・・云々」
まず最初。
- ちょっと残念に思うことは、・・・・(中略)・・・・説?の根拠
「SARS, MERSがコウモリを起源とし、それぞれ自然変異を経てハクビシンやヒトコブラクダからヒト界へ入ってきた」という説は、遺伝子配列の分析など多くの論文としての根拠もある説であり、後に再度述べますが専門家の多くが同意しています。
逆に何を根拠に疑問だ、と主張されるのでしょうか?具体的に説明頂きたい。どのような反論をされるのか非常に興味があります。
- 第一、コロナも誰かが2018年すでに特許を取っているとか(数人ネット情報)、
ネット情報の裏は取ったのでしょうか?「ネット情報である」ということは根拠になりません。この部分特に悪質です。特許の事実はありますが、全く別の目的です。こちらに
詳細な検証と
その解説があります。是非お目を通して頂ければ幸いです。
- 遺伝子組み換えのプロ中のプロしかできない高度な裏術
とはどういうものを言うのでしょうか?こう言われるからには、「遺伝子組み換えのプロの技」がお分かりになるはずかと思います。詳細に説明頂きたい。
- コウモリ⇒変異⇒人は、歴史を都合のいいようにネジ曲げた
とのことですが、何を根拠にそう言われるのでしょうか?これも説明頂きたい。
今回の「新型コロナウイルスが人工物である」という言説に関してはNature誌などでも明白な反論が行われています(詳細は後掲の解説を参照)。またHIVとの関連云々については先日の記事でもデマであることを書きました。
この小さなコメントに対する反論や「なぜこの新型コロナウイルスが自然物と考えられるのか」を説明するには
かなりの時間を費やすことになりますし、何よりも
専門的な基礎知識を土台とした議論となるため、一般の方に明確に説明するためには、それこそ数年かけて遺伝学、分子生物学を学んで頂く必要があります。
そこをどう乗り越えるのかは、生命科学者としての私の能力を超えるものがあり、大変憂慮していました。
そんな中、今回「東洋経済online」に
良い記事が書かれているのを見つけました。かなり長い記事ですが、是非ご一読頂きたい。素晴らしくよく説明されています。
この記事について分かり難い部分がありましたらお知らせください。
できる限り説明させて頂きます。
そういうことで私は結論のみ書かせて頂きます。
1)新型コロナウイルスは完全に自然の産物である。
2)新型コロナウイルスはHIVウイルスとは関係ない。
本来、ウイルスへの対策に邁進しなくてはならないはずの研究者がこれらのデマへの対応で時間を浪費し、疲弊します。それはすなわち、ウイルスへの対策がさらに遅れることを意味し、社会的な損失を招いています。
今は様々な情報がネット空間に漂っています。今までは大学や研究室の内部について窺い知ることもできなかったのに、それについての情報も出されています。それは素晴らしいことです。
しかし、だからこそきちんとした情報をつかまえ、己の考えをまとめきる「力」が必要な時代となっています。
公の場所に何かを書く場合、必ず責任が生じます。個人の自由な意見表明だから、とおっしゃられると思いますが、その意見が「デマ」であったり「社会不安を煽る」ものであったり「他を誹謗中傷する」ものであった場合、訴訟の対象になります。
先日のコメント主におかれましては、ご自分のやっていることは愉快犯を通りこした犯罪であることを認識して頂きたい。
根拠のないデマを拡散することは止めてください。