無知の知

ほたるぶくろの日記

想い出の中の名店

2018-04-15 15:45:56 | 個人的日記

花粉症の続きをと思いつつ、今日もまた想い出の名店について書いてしまいます。
このところ遠い想い出の中のいろいろが気になって仕方なかったりするのです。春は何となく人を乱調に陥れます。私のこの気分もそんな春の気候のなせる技かもしれません。

前回は私が行きたいな、と数十年思っていて、とうとう行きそびれた名店。
今回は過去に何度か行っていて、その味の素晴らしさが忘れられない。でも今はもう無く、情報も見つからない名店の話し。

※ あまり手入れをされていない、鉄道会社所有の敷地に咲く鮮やなツツジ。


東 京、中村橋に『笹目寿し』というお寿司屋さんがありました。表向きはお寿司屋さんなのですが、実は素晴らしい割烹料理を出されていました。もう今から半世紀前のことです。両親の知り合 いに、独身の実業家女性がおりまして、その方、お一人で美味しいものを食べに行っても美味しくないから、とおっしゃって、我々家族をあちこち食事に誘ってくださいました。

その中の一店が『笹目寿し』でした。
私はまだほんの子ども。小学校の中学年から高学年の頃だっ たでしょう。先の実業家女性は大将と懇意だったようで、我々そこではメニューをみてあれこれ決めた覚えがありません。おそらく大将のお任せで旬の魚を使った一通りのお料理を頂いたのだと思います。お刺身から始まって、焼き物、吸い物、煮物と魚料理が続くのですが、飽きることはなく、その味のバラエティには子どもながら感動しました。

そこで私は衝撃的な味に出会いました。どのお料理も素晴らしかったのですが、特にお吸い物の味が素晴らしく、その味は頭の奥にしみ込んで、一生忘れられない味となりました。

昆布が ベースなのだとわかるのですが、昆布臭さは一切なく、お出汁も、使われるどの素材の香りも立つことがない、渾然一体となった旨味の汁。本当に美味しく、衝撃的 でした。いや、子どもですから、本当はそのとき衝撃を受けたのではないのです。ああ、美味しいな〜と深く感動したのでした。それが衝撃的なものだったと分かるのはもっとずっと後のことです。

大人になって、美味しいと言われる様々な和食のお店にうかがってはお吸い物を頂き、その度に「美味しいな。でも、あの味とは違う。」といつも少しがっかりする。そんな経験を重ねて、いかにあの記憶の中の味が「奇跡の味」であるのかを後になって理解した、ということです。

そんなある日、もうかれこれ10年くらい前でしょうか。京都、四条の『日本料理 桜田』さんへうかがう機会を頂きました。この『桜田』さんは非常に高い評価を得ていた京都の日本料理店です。

そ こでお吸い物を頂いた瞬間!「ああ、この味!」 長い間探していた幻の味がそこにありました。その頃には、一口に昆布だしとはいえ、昆布にもいろいろあること(昆 布の産地や種類のことだけではなく)を知っていましたし、その味はおそらく「蔵出し」昆布のお味なんだろう、くらいの想像はできるようになっていました。 しかし、そう単純なものではないでしょう。昆布を含めその他の全ての材料のバランスがある地点に着地している。その着地点が絶妙なのです。

そしてこのような素晴らしい名店で初めてあの懐かしい味に出会えた。つまりあの『笹目寿し』のお料理はそんなにもすごいお料理だったのだ、とそのときに改めて衝撃を受けたのでした。私は本当に希有な幸運を得ていたのだと、感じ入りました。

もちろん、今回もまずは父の記憶を頼りに『笹目寿し』さんを探しましたが、既にお店は閉められているようで、それらしい店は見つかりませんでした。それでもあれだけのお料理を出していた『笹目寿し』です。きっと人々の記憶 に残っていて、珈琲店「もか」のようにどなたかがブログやコラムなどに書かれているかもしれない、と随分ネット上の情報を探索しましたが、とうとう見つけられませんでした。

なんとも残念なことです。もっとも私がお料理を頂いた のは半世紀も前のこと。あの頃大将は父より上の年代の方で、お客様はそれ以上の年代の方です。ネットに書かれる年代よりはもう少し上の方達かもしれません。雑誌のコラムなどを探す方が見つかる確率は高かったかもしれません。そのうち心当たりをしらべてみることにいたします。

また、今回『日本料理 桜田』さんのことを調べるうちに、なんとこの『桜田』さんも2015年に惜しまれつつ閉店されていたことを知りました。またまた、あのお吸い物の味が幻の味となってしまったわけです。お弟子さんが店を持たれているようですから、今度はそちらを訪ねてみましょう。もしかすると、あの味に出会えるかもしれません。楽しみにしています。

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11 Comments

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Unknown (せいらん)
2018-04-15 23:21:58
これまた名店ですね。
惜しまれながら閉店をされた、覚えてます。雑誌で読んだのかな?

そんな忘れられない「味」を持っているっていうのは幸せというか、いいなと思う。
私はどうだろうと思い返してみても未だ無いよ。
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惜しいです (ほたるぶくろ)
2018-04-17 07:50:58
私、多分閉店間際に撮影された動画をどこかで観たような気がするんです。そのときには気づきませんでした。それが閉店前の記録だったなんて。。。

ともあれ、一期一会です。

>私はどうだろうと思い返してみても未だ無いよ。
いやいや、岡山ですと果物あたりにありそうですが。
私、根っからの食いしん坊なんです。。それだけ。
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Unknown (93)
2018-04-24 19:37:58
はじめまして。
93と申します。
ホタルブクロとは、お花の名前ですね。
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そうです (ほたるぶくろ)
2018-04-25 08:02:37
山野草の名前です。
昔は林の周辺によく咲いていました。
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Unknown (93)
2018-04-25 12:18:49
あの、この部屋型掲示板って
とても不思議なのですが。
そう思われません?
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のーコメントです (ほたるぶくろ)
2018-04-25 21:26:19
何とも言いようがないです。

まあ、不思議っていえば不思議かな〜〜
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Unknown (93)
2018-04-26 05:09:30
そうですか。
ありがとうございます。
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93さん (ほたるぶくろ)
2018-04-28 09:18:53
ひょっとして真客さんのページのつくり方が誤解を生んでいるかもしれません。

部屋型掲示板は下の方の並びです。上の方は人々のブログへのリンクです。
「部屋型掲示板」とはあのページの題名なんですよ。
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上記コメント内容の図説 (Unknown)
2018-04-28 10:57:48
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/6e/8c01bf94343891e56da8fa8b1a0ae019.png?random=7ace06e08ae7ce55f027a2e1c9668cb3

お節介御免なさって
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Unknown (93)
2018-04-28 13:52:36
ほたるぶくろさん。
教えて頂き、ありがとうございます。
年齢的に切り替わる時期なのか、最近いろいろとオカシク感じるようなのです。
一応エクエル飲み始めたのですけど。。。
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