無知の知

ほたるぶくろの日記

微生物について 1

2020-02-17 08:11:32 | 生命科学
以前、高校生の自然科学分野への男女別興味を日米でグラフ化し、比較したものについて議論したことがあります。そのときに日本の高校生に顕著だった特徴の一つとして「人体」への興味の低さというのがありました。アメリカの高校生の興味はまず男女差のなさが驚くべき点なのですが、それはともかく、人体への興味が他の分野に比して圧倒的に高い。

ところが、日本ではかなり低い。特に男子で低い。

日本の高校生、ひいては日本人は、現実に生きて行くための自然科学に興味を持っていない、と私には感じられました。自然科学と実際の生活が今ひとつ、つながっていないようです。

その中の一つで、重要なのが微生物に対する認識。特に今回のようにパンデミックになるかどうか、といった感染症の抑え込みの際、人々の理解度は非常に重要です。

武漢では昨年の暮れには「普通と違った肺炎が流行っている!」ということが何となく知られ始め、圧倒的な人数が病院へ押し寄せました。

我先に、という感じだったと思います。ここをまずは抑える必要がありました。

かなり早い時期にコロナウイルスの同定が行われた事からして、中国当局は何が起こっているのか、を知っていたと思います。問題は人々にどのように伝えられたのか、でしょう。
発熱し、咳が出始めた時点では、闇雲に病院へ行かず、まずは家で安静にして、他人にうつさないようにするのが正しい行動だったはず。しかし、人々は不安に駆られ、ともかく病院へ病院へ、と向かってしまったようです。その結果本当に治療が必要であった重症患者さんの治療ができなくなり、医療関係者は疲弊し、症状を悪化させ、医療崩壊が起きてしまったのでしょう。

もしも、武漢の方々が、もう少し「ウイルス」についての知識を持っていたら、ここまでのパニック行動は起さなかったのではないでしょうか。



殆どの上気道感染症は「ウイルス」感染症です。治療の根幹は「自己の免疫力」。軽い症状では病院に行っても何もできないですし、治療の必要がないのです。


繰り返しますが、普通の風邪のほとんどは「ウイルス」感染です。鼻や喉の粘膜からウイルスが侵入し、熱が出て、頭が痛くなって「風邪をひいたな」と感じます。これは身体の中では免疫システムの初動が始まっている証拠。

ウイルス感染した細胞を認知した免疫システムが「サイトカイン」と総称されるいくつもの生理活性物質を放出し、その影響で起こっていることなのです。熱が出たら、「お、免疫システムが始動したな」と思ってください。

怠くなることもあります。関節痛がすることもあります。それら全てサイトカインの仕業。そうやって、からだをぐったりさせて休ませよう、としている。

だから、素直に休むのが正しいのです。
免疫システムは身体の総力を上げて
1)ウイルスに感染した細胞を排除するT細胞
2)ウイルスを無力化する抗体を作っているB細胞
を選別し、増幅させています。

これは全て、感染したウイルスに特異的なもの。その他の微生物に対する免疫系の力は相対的に弱まります。ここで熱があるのに無理をして身体を疲弊させますと、今度はその他の微生物が増え始めます。

呼吸器系は常に微生物と接しつつ稼動していますが、普段は免疫系システムによってコントロールされています。ところが免疫系が弱ってきますと、これらの微生物が増え始め「肺炎」をおこします。この時の微生物の主体は大体が「細菌」。

普通、風邪をこじらせて「肺炎」に至る場合、ほとんどの場合は上記の経過で起こります。そこでは、抗生物質が効果します。(でもここまでに至る方はごく少数。通常の風邪に抗生物質は要りません!)

さて、コロナウイルスの場合は状況が違います。免疫系システムが弱い方の場合、一気に肺炎までおこすのです。現在、この「コロナウイルス肺炎」の詳細な病理が明らかではないのですが、ある種の抗ウイルス薬が効くことが報告されているので、おそらくはウイルスが直接肺で増殖し、肺の上皮細胞を破壊している可能性が考えられます。

ですから、抗生物質は「効きません」。

ウイルスに対抗するためには特効薬を期待するよりも、自分の免疫力を温存するべきでしょう。身体を冷やさないこと。疲れ過ぎないこと、は特に大事です。

風邪をひいたら、どうするのがよいでしょう?通常ウイルスに対抗する免疫系システムの体制が完了するまで3日程度。熱が下がるのがその目安。その後は免疫系システムとウイルスとの闘いがあり、壊れた細胞の処理や、壊れた部分の修復などに1週間。計10日程度かかると考えられます。とくに最初の3日間は重要です。ここでしっかりとした抗ウイルス体制を作り、しかも体力を疲弊しないためには安静にするのが大事。まあ、熱が下がるまで、と考えてもいいかもしれません。

しかし、ウイルス自体はいなくなっても、上気道の粘膜細胞は酷く破壊されています。いつもより、細菌には弱くなっていますから、ここからのケアも非常に大事です。マスクをしたりして、乾燥から守ったり、引き続き体力温存には注力するべきでしょう。

まだ寒い日は続きます。「ウイルス」に備えて元気に春を迎えましょう。

2 Comments

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Unknown (せいらん)
2020-02-20 15:41:43
福岡でも感染が確認されましたね。
ここも時間の問題だねと職場では話しています。
免疫力を温存しなくちゃ。
お互い気をつけようね。頑張ろうね。
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温存♡ (ほたるぶくろ)
2020-02-20 19:27:37
何はともあれ体力温存です!
と、いいつつ、私は昨夕殆ど完全徹夜状態です。(笑)
いえいえ、仕事じゃなくて、家族会議。

こどもの言い分を聞いていたらそういうことに。

普通の時間にはなんだか話しづらいんですね。夜中に「あのね、、、」ということになる。でもこれにつき合うのが大事、ってわかるので、仕方ないですね。

で、今日はもう眠い眠い。しかも明日の朝は6時台の新幹線に乗って関西へ!うーん。頑張りまーす。
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