先日友人から子宮頸癌ワクチンについて相談をうけました。昨年の10月に日本で認可され、今年の春には、栃木県大田原市で小学校6年生女子に対する集団予防接種(任意、全額公費)が始まったというニュースがありました。今回よい機会だと思い、少々調べましたので、私なりの考えをまとめてみます。
子宮頸癌は子宮頸部にできるがんです。膣から子宮への入り口部分です。子宮体部にできる腫瘍(例えば良性の子宮筋腫など)とは原因も性質も全く異なるものです。子宮頸癌はほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)によるものであることがわかっています。HPVは100種類以上の型が報告されていますが、その中で子宮頸癌がんをおこす高リスク型はおもに16、18(欧米)52、58(日本)型といわれています。
東京都健康安全研究センターの2007年年報によると検査に持ち込まれた検体の約40%にHPVが検出され、その約半数は高リスク型でした。この検体は何らかの検査の必要性があった患者さんからのサンプルと考えられますので、この数字は一般的な女性の感染率を反映しているとは思えませんが、参考にはなります。ところで、この高リスク型の内訳でありますが、上位から16、53、58、18、39、51型(以下省略)となっており、欧米型と言われてきた16、18型が上位に位置し、これまで日本型と言われていた58型は3番目に位置していますが、52型はずっと下位です。つまり、現在は日本でも16、18型のHPVがかなりメジャーになってきていると言えると思います。
今回日本で認可され接種可能なワクチンは英・グラクソ・スミスクライン社のワクチンで16、18型のHPVに対するものです。(もう一つ萬有製薬=メルク社も申請中です。こちらは16、18型のほか、尖圭コンジローマなどの原因となる6、11型も対象としています。)そのため、日本での予防効果については疑問を呈する方もおられるのですが、上記の報告などをみますと効果は期待できると思われます。
次にこのワクチンのアジュバントですが、これは既にあちこちで指摘されている危険はあります。しかし、これについてはワクチンによる効果と天秤にかけて考えるしかありません。
結論として次のようにまとめることができます。
「1)不特定多数の男性と行為をされる方、またはパートナーの男性が不特定多数の女性と行為をされる方で、
2)まだ16、18型HPVウイルスに感染していない方
への接種が医学的には意味のあることだと考えられます。」
したがって全ての少女がワクチン接種をする必要はないと思います。また、既に感染がある場合は接種の意味はないということです。1)の条件に関しましてはそれぞれの女性、あるいは親がよくよく考慮すべきと思います。
どうぞご自分の境涯に合った選択をされるよう願っております。