会計スキル・USCPA

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為替と金はどうなるの HS DENT その2

2012-01-14 19:29:53 | マクロ経済

今年の米国経済について,ひいては世界の経済が,今年は厳しくなりそうだ,ということでしたが,

HS DENTが,今年に入って最新の動画をアップしているので,貼っておきます。
前回のインタビュー形式ではないんですが,まあ,内容はほとんど同じです。

Harry Dent January 2012 Youtube Update.wmv


いずれにせよ,FRBが量的緩和策を終えた影響が現れ始める第二Qから,失速をはじめると言っていて,もう,三ヶ月後のことなんですが,よほど自身があるんでしょうな。しかもかなり株価が落ちると言っているんで。

さて,ベビーブーマーの支出低迷→企業収益が悪化して,株価が落ちるのはわかるんですが,投資家に対して,ドルで持っとけ,とか,金もヤバイ,と言っているのはナンデだろうか,

FRBが紙幣を刷り過ぎてて,インフレになり、ドルの価値が下がり,ドル安になる,金も上がる,というのが,ピーターシフや,ロンボールや,ジムロジャースや,バフェットの主張で,結構そういう物言いに慣れてきた人間にとっては,やや唐突な感じがするんですけど・・・。

彼のサイトに,去年9月に書かれた,彼の主張の要約が貼ってありまして,

Deflation and a Deeper Downturn Are the Trends Ahead...Oh, That Means a Depression!



The point here is that we debased the US dollar in the bubble boom from 1983
to 2007 by allowing debt (which creates dollars out of thin air in the banking
system) to grow at 2.65 times the rate of economic growth for two and a half
decades! Creating more dollars than economic growth makes dollars less valuable. When we destroy such debt and dollars in the downturn and debt
deleveraging cycle ahead, dollars will become more scarce and, hence, more
valuable again.

83年から07年にかけて経済成長の2.65倍も債務を膨らませて,そのことは,ドル紙幣を刷り続けたということを意味し,ドルの価値を下げてしまった。

はいはい、ここまでは良いですな。

債務とドルのバブルを潰して,レバレッジを縮小させることになると,今度はドルの量が減るということになり,価値は再び上がるのだ。

なるほど、今は、状況が逆転しているということですね。

We see deflation, not inflation, due to massive private debt deleveraging beyond inevitable rises in federal US debt.

我々は,インフレでなく,デフレを予想しているのだ。なぜならば,連邦政府の債務が拡大するのは避けられないが,それ以上に私的部門での巨額の債務縮小が行われるからだ。

政府の刺激策など、問題でないほど私的部門の債務縮小が大きいってコト。FRBの資産が何兆ドルも膨らんだ、と騒いでも、それが問題にならないくらい全体では債務が縮小している、ということですね。

蛇足で補足しておきますと、債務縮小というのは、社会全体でみて、借入を返すということで、その分自由に支出できる金額、流通するドルが減ってしまうということですね。貸手は債務の返済を受けるのだから貸手の手持ちのドルが増えるだろうというハナシもあるんですが、銀行は返済を受けたらそれを使うわけじゃなくてバランスシートを縮小させるんで、通貨の流通量は減ってしまうんでした。金融の教科書に出てくる信用創造の逆ですな。

Even states and local municipalities will have to cut costs and pare down debt to survive, and those actions are deflationary as well. Deflation means that you need entirely different investment and business strategies,・・・

州政府や地方自治体も生き残るためにコスト削減や債務圧縮が避けられない。

デフレとなれば,投資やビジネスにおける戦略も全く異なったものになる。


We say that gold and silver are inflation hedges, not deflation hedges. Silver could fall from the $50 seen recently to as low as $6 to $10 in the years ahead. Gold could fall from $1,900-$2,000 to a wider range of $250-$750.

金や銀はインフレヘッジであって,デフレヘッジではない。銀は今の50ドルから6ドル~10ドルあたりまで今後数年で下げるだろう。金は1900ドル~2000ドル近辺から250ドル~750あたりに下げるかもしれない。

Oil could fall from a high such as $147 in 2008 to as low as $10-$40.

原油は,08年の147ドルから10ドル~40ドルまで下げるかも。

We advise being in safe assets like very-short-term US Treasuries and T-bills, and, better,the US Dollar Index, to preserve your capital―and even more so if you are overseas, to benefit from the likely rise in the US dollar vs. your currency in the years ahead. We think that the greatest risks among all assets to fall in the next 2 to 3 years during “The Great Crash Ahead” could be in silver and gold!

投資家へのアドバイスとしては,短期の連邦債で持つとか,ドルインデックス。海外に居るんならなおのこと自国通貨に対してドルが上昇するメリットを取るためにそうすべきだ。ここ数年の最も崩落するリスクが大きいのは,銀と金である。


というわけで,財政保守派や,FRB陰謀説論者とは一線を画し,むしろ,クルーグマンの見方に近いんですな。つまり,政府の刺激策は全く不十分で今後経済は失速するはというハナシ。

ただ,彼は,不足を政府が埋めるべきという考えには同意しておらず,刺激策は市場による健全な調整を遅らせるだけだ,という立場です。現状認識はクルーグマンでも,提言は保守派,という,まあ,現実的な線ではないでしょうか。


もう一つ,インフレ原因について,彼は人口動態の影響を主張していて,若い人間の労働市場にどれだけ多く入ってくるか,による,とも言っています。若い人は社会に出て支出を始めるが、実際にビジネスに貢献する以上に支出するから、というのが理由なんですが、給料以上に支出する、という意味ではなく、多分、生産性以上に給料をもらっている、という事を言っているようですね。

DENTは、過去のデータを観て、因果関係を見つける、という手法を取っていて、どうも、若者が社会に出る人数の多寡がインフレに一番関係しているようだ、というトコから出発しているんですな。


さて、金融を緩和し、中央銀行が紙幣を増刷すれば、インフレになる、というのは良く言われていますが、いま一つノレない感じで、日本で、日銀がどんだけ緩和しても、あんまし効果が無い、だからもっと緩和するべきだ、という主張も、ウーン。

DENTの説明は結構しっくりくる感じがしますが、どうなんでしょうな。

金と銀と原油が危ない、というのも、いつまでも右肩上がりは続かない、という常識に照らしてもそうじゃないか、という気がしてくるんですがね。

原油が下がるんなら、経済には良い影響が出るんで、予測も変わってくる可能性がありますがね。




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