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保存料無しは嘘か危険かのどちらかだ

標記の件、加工食品に詳しくは無いけれど、ど素人でもないという観点で。

アサ○飲料のサイダーのCMで「保存料ゼロ」と謳っていることを考えてみる。保存料というとなんか合成食品添加剤的なイメージがあるのか「無い方がいい」という扱いのような気がする。少し実態を紹介しよう。

このCMの表現は法律上はともかく科学的には間違っている。なぜなら炭酸がpH(酸性度)を下げているから雑菌の繁殖が抑えられるというわけで、炭酸が保存料なのだ。植物由来エキス(果汁等)を含まない酸性飲料は法律で殺菌の必要がないとされているほどの存在なのだ。ちなみに炭酸を含まなければこの飲料は殺菌の必要があるであろう。菌の混入率の高い果汁が含まれているものでは60℃×10分程度の殺菌が必要となる。一方中性飲料(牛乳分を含むコーヒー等)はpHでは菌の繁殖が抑えられないためレトルト殺菌(120℃×20分)程度が必要なのだ。同様の扱いとしてpH調整剤などもある。

菌を殺す能力は無いけど、一定以下に減らした菌を増やさない薬剤もある。簡単に言えばアルコールだ。なので酒精というものがそれに当たる。当然であるが普段飲む物だ。そして多くの場合は加熱するまで保たすことが目的なので、加熱調理をすれば揮発する。

他にもある。菌は水がないと増えられないので水(自由水)が無ければいいのだ。糖分を増やすことだ。従来からの保存食であるジャムなどの糖分が多い製品がそれにあたる。これに至っては砂糖(糖分)が保存料に該当する。なので糖分減少品は足が早い、保存料をケチっているわけで当然だ。

まだある。イオン濃度が低い方から高い方へ水は移動するので(浸透圧の原理)、塩分が高ければ雑菌内の水分が浸透膜を通って脱水症状をきたすため、傷み難い。塩蔵品や干物がそれに当たる。この場合は塩が保存料である。減塩品は足が早い、こちらも当然。

保存料という単語に脊髄反射することがいかに愚かであるかわかるであろう。もちろん保存料(保存料になりうる物質)の全てが安全というわけではない。しかし、間違った認識が正当な保存料を追いやり、食中毒リスクを高めたり、別の表現に逃げて結局消費者の不利にならないかということだ。

ステレオタイプの単純な化学物質忌避は馬鹿と断言できる。全ての物質は定義上化学物質だからだ。だから専門家も「馬鹿は放っておく」というスタンスになるし、正しい科学知識の上での主張でないとたしなめる気にもならない。まぁ馬鹿まっしぐら状態な訳だ。

不安を持つことは悪いことではない。しかし自分の思い込みに近い主張を持つ専門家だけの意見を聞くのではなく、他の主張も聞き、自分で勉強して判断して欲しいのだ。ほとんどは高校化学で理解できると思う。

不安と安心は安全とは違う概念であることを理解することが必要だ。

 

酸性にしろアルカリ性にしろ、菌は繁殖が不活発になる。ワインは酸性である果汁に酵母でアルコール発酵をしているが、これも酸性下では他の雑菌が生育不利であり、その影響を受けない酵母の独占を許すからである。ある菌が独占すると他の菌は繁殖できなくなる。納豆やヨーグルトなどの発酵食品が食中毒的に比較的安全なのはひとつの菌が独占すると他の菌が生育できなくなることが原因。そして酵母の独占的地位を補助するためにワインに亜硝酸塩を加える。なので亜硝酸塩を加えていないワインは一般的には菌管理が難しく高コストになり、菌・酵母管理が不安定なため味は不味くなる。

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