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中堅メーカー商品開発担当の悩みどころ

元GEのJ.ウエルチ氏は業界シェア1,2位以外の事業はぶった切ったそうだが、中堅メーカーで働いている人も居る。彼らの悩みはなんであろう(彼らではなく自分なのだが)。そしてこの前提は消費財メーカーの話。関係ないけど商品開発担当は学生に人気のある職業だそうだ。実情を知らないからそんなこと言うんだろうね。

上位メーカーは商品単体当たりの開発費を安く抑えられる上、様々な部品の「型」の費用も安くできる。まさに大量生産方式を少なくとも中堅メーカーよりは実施しやすい。クルマで考えるとエンジン~シャシーを共通のプラットフォームにして派生車種を展開できればプラットフォーム開発費は単位台数当たりでは抑えられるし、その部品作成における金型も共通化できるので、部品当たりの投資額は小さくなり効率が高められる。生産ラインも台数が増えれば型替えの頻度が下がるので稼働率は上がる。プラットフォームが共通であれば型替えの変更点も少なくできる。

では中堅メーカーは儲けられないのか?自動車のように嗜好性の高い物はそんなことはないであろう。NISSANに強い愛着はなくてもGT-Rは別ということがあってもおかしくない、F1優勝メーカーのクルマはF1技術が詰まった商品だし。

 

前置きはここまでで、このように中堅メーカーはトップメーカーと戦えないことはないが、コスト面で不利な状況を甘受せざるを得ない。なので商品設計のメリハリを付ける必然性が生じる。技術屋としてはコストと効果を考慮して新技術の採用をして欲しいと思う。いくら商品の性能が良くても、赤字なら売るだけ損というものだ。なので基幹商品は利益率をきちんと取りたい。技術屋としての言い分は売れるか売れないかは水物で、コスト管理を商品設計者(商品開発担当者)がきちんと守れと言いたいわけだ。論理的に詰めれば売れるというなら論理で商品設計をすればいいが、感覚優先で売れるという保証も無い。確率で論じるのは不適当かもしれないがそうでもない。デザインで売れるかどうかを予想できるはずもないので、デザインはともかくコスト管理をきちんとして、見てくれに金を掛けなければ売れないという営業向けの社内論理を優先するというのが分からないのだ。しかも一方で中身が悪ければ売れないとも言うし、どっちだよというか突っ込みどころを消す方向に努力が向けられるだけ。

原価率が高くても売れればOKという人事考課ならば、誰だって金を掛けるであろう。失敗した(売れなかった)理由がデザインなら、大本のデザインが悪かったからであるという免罪符まで付いてくる。ここでコスト管理をきちっとしておけば外装に金を掛ければ中身に金を掛けないという判断もできうる。しかし、この状態で売り上げを伸ばせなかったら「中身が悪いから売れない」という口実を作るので、商品開発者は中身にもコストを掛けそのリスクを避けるのだ。その結果、利益率の悪い商品であふれ、さらにニッチ商品ですら投資を行い、売りが悪ければ投資回収できないため利益率がさらに悪化というか赤字という罠にはまる。しかし人事考課制度が売れる・売れないであるならばそれも致し方ない。担当者は売りが落ちなければいいという判断のみで商品設計を行うからだ。

売れなかった商品でも、戦略をきちんと立て、それでも売れなかった場合は、その商品開発担当者を労うと言うか褒める制度が必要であろう。たまたま原価率の高い商品がヒットしてその担当者が褒められるのは許されることではない、と技術屋は思うのだ。中身に金を掛け、見てくれに金を掛け、原価率を悪化させても、売れたらヒーローならばだれも原価率を守らない。失敗して、半製品在庫を積み上げても社内評価が下がることはあっても左遷まではないし。

企業では原価率というか利益率を上げて総利益を上げていこうというトレンドがあるが、商品開発担当者にはそのトレンドは全く関係ないのだ。原価率を気にして中身をケチったり、外見をケチったりする方が、営業の突っ込みどころが増えるだけで、しかも原価率を悪化させてもその上司は売れるかどうかが問題なのでペナルティにはならないのだ。これで原価率が下がると思う方が奇特といえる。技術屋は利益率は確定されるはずの単価なのでそれを優先する方がいいと思うのだが、売り上げ重視でトレーニングされているともう話は通じない。

商品開発部門の職長が単純利益・売り上げ重視を求められたら、当然部下にも求めるであろう。なので経営陣がその職長に利益率優先なのか、売り上げ優先なのか、利益額優先なのかを指示する必要がある。ところが利益額は宣伝販促やリベートで変わるのでそれも適当でないことが多い。なのでその職長は売り上げ重視に走ることが説明できる。そして社長は一応利益を出せる(=利益率重視)構造構築を求めている。

あれ?、誰がアホなのかはよくわからないがアホが居ることは確かだ。上位メーカーはそれでもパワーゲームで回るであろう、前年比を考えなければ。前述したが中堅メーカーは予算のメリハリが必要なのだ。中堅メーカーはそこで泥沼にはまるんだよなぁ、性能・見てくれ・宣伝量のどこかをも節約しないと儲けられないのに全部のバランスを求める。その黄金比があるわけでもなく。上手くいっているメーカーはニッチで絶大な支持を得ていることが多いのだが(しかしそこから外へは向かえられない)。しかも失敗すればどこかを突っつけばいいんだもの。経営陣は言動不一致極まりない、だって営業出身だもの。

確かにやってられない職業かも、中堅メーカーの商品開発担当者。

 

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