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キャロル・スローン/バット・ナット・フォー・ミー

2008年10月28日 23時33分30秒 | JAZZ
 80年代後半にCBSソニーが、ニューヨークへ赴き、現地の新旧ジャズ・ボーカリストを起用して「ブラン・ニュー・スタンダード・ボーカル」という、いささかバブリーなシリースを10枚ほど出していて、その中にあったロレツ・アレクサンドリアの「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」がお気に入りだった....という話は、しばらく前に書いたけれど、キャロル・スローンをフィーチャーしたこのアルバムもその一枚である。メンツは、ロレツの時と同じくトミー・フラナガン、ジョージ・ムラーツ、アル・フォスターという鉄壁のリズム・セクション。多分、私はこのリズム・セクション目当てに購入してきたと思うのだが、こちらには曲によってフランク・フェスのフルートとテナーが入っている。

 キャロル・スローンは白人の女性ジャズ・ボーカリストだが、彼女の他のアルバムを私は聴いたことがないので、よく分からないところもあるのだが、このアルバム聴く限り、ややおっとりしてクセがなく、ちょい控えめでエレガントなヴォーカルが特徴だと思う。このアルバムは全編ガーシュウィン作品で埋め尽くされているが、ガーシュウィン作品のスムースで流れるような美しさのようなものと彼女のセンスは良くマッチしている。4枚組のガーシュウィン・アルバムで、ありとあらゆるガーシュウイン作品を有無をいわさずに自分の世界に引き寄せてしまったエラ・フィッツジェラルドとはあらゆる意味で対照的な作品といえようか。もっとも、キャロル・スローンのボーカルはエラ・フィツジェラルド的なフェイクとか、スキャットを時折みせるたりするから、系列的にはサラ・ヴォーンとかカーメン・マクレエあたりより、よほどエラ・フィツジェラルドっぽいのだが、なにしろ、あまりに落ち着き払って、シックでエレガントなので、いささか地味に聴こえてしまうのが、まぁ、良くも悪しくも彼女のキャラなのかもしれない。

 まぁ、そういうキャラクターの人なので、曲はミディアム~スローの作品ばかりとなっている。トミー・フラナガン、ジョージ・ムラーツ、アル・フォスターもロレツの時のように彼女に対峙するように小気味良くスウィングするというより、キャロル・スローンに寄り添っているという感じの演奏が多い(スウィングする作品なら「ラブ・ウォークトイン」あたりか)。時折入るフランク・フェスのとつとつとしたソロもそうした印象を倍加している。そういう意味で「エンブレイサブル・ユー」あたりはこのアルバムのハイライトだろうか、「エンブレイサブル・ユー」といえば、聴き飽きたというか耳タコの名曲だろうが、それをバースから丁寧に歌い、しっとりとした歌声でもって、最後まで味わい深く、しばし聴き惚れさせるのはさすがだと思う。
コメント (2)
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