風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

首相退陣

2010年06月02日 | 雑感
相変わらず涼しい風が吹き過ごしやすい日々が続いていますが、世界的に見ればあちこちの火山が活発化しているようですし、
40度を超える暑さであえいでいる国もあるようです。
なんだか、経済的にも、軍事的にも、環境的にも、複合的にきな臭い臭いが世界中に漂ってきている感じが強くします。
一つ一つの問題を掘り下げていけば、どれをとってももはや手遅れではないかという感さえします。

そういうなかで、日本ではあいも変わらず、井の中での政変劇です。
たまたま、首相辞任の演説をテレビで生で見ていましたが、最後まで自分の理念を守り通した誇りさえ感じられました。
その理念が、現実の今の社会をどうしたのか、どのように方向付けたのかということには、あまり関心がないようでした。
自分の理念を貫くことができなかったくやしさはありましたが、現実生活が崩壊していくかもしれない人々の不安や憤る心は、
どこかへ置き去りにされていました。

理念はもちろん大切なのですが、現実に立脚しない理念は暴走するものです。
市井に生きる人々の心の機微を無視した政治は、いずれそっぽを向かれます。
今、政治の現場から、日本という国をどういうふうに持っていくのかという正直な声が聞こえてきません。
「美しい日本」という言葉にしろ、抽象過ぎてかえって胡散臭くなってしまいます。
「美しい日本」のスローガンのもと、コンクリートで川べりや海岸線や渓流が埋められて行ったのでは、ジョークにもなりません。
「東アジア共同体」という言葉にせよ、だれも積極的に賛同していない国々の中で、日本がなにを具体的にしていこうとしているのかが、
さっぱり目に見えてきません。
お金をばら撒くことだけは積極的だったのは知っていますが、果たしてそれが現状の日本人の望んでいることなのでしょうか。

「日本人が」とあたかも日本人という共通した特質を持った国民を前提にする時代は終わったという議論もあります。
移民を積極的に受け入れ、積極的に参政権も与えていくという政策を進めようとする政党もあります。
つまり、「日本」という枠組み自体が、時代遅れで解体すべきだというような考えです。
それはそれで一つの考え方ですから、否定するつもりはありません。
ただ、堂々とした公の議論をして欲しいわけです。
誰のために、どうメリットあるのかを、はっきり公衆の面前で問いかけ、それで選挙に臨めば文句はないのです。

世界の現実を見れば、美辞麗句で政治の責務が勤まるわけではないのは、大方の人が承知していることでしょう。
その泥沼のような現実から、どうやって立ち上がり、光を見出せるかというヴィジョンを国民に見せるのが、政治なのでしょう。
ますます泥沼化する現実を無視した空論の出番はもはやありません。
泥を生み出しているのはなんなのか、誰なのか、どうすればそれを止められるのか。
大資本投機的金融屋が元凶という人もいるだろうし、資本主義自体の行き詰まりだという人もいるだろうし、
モラルの欠如が原因だという人もいるだろうし、グローバル主義の美名に騙されているからだと訴える人もいるでしょう。
何でもいいのですが、ケンケンガクガクの論争がなければ、誰に投票していいのかなんか分かるはずかありません。

今日も首相退陣について、与党の新人女性議員がインタビューに答えていました。
なにを聞かれても「選んでくれた人々の思いを真摯に受け止め、頑張って行きたいと思います」というようなことを言っていました。
さすがにぼくも腹が立ちました。
自分の党の党首が涙目で最後に訴えたポイントがまったく理解していないのが丸わかりです。
首相の理念に関しては、その理念自体の是非についてはいろいろな考えがあっていいのですが、少なくとも彼が自負したのは、
自分の信念を結果的に曲げざるを得なかったことに対する悔しさと責任の重さです。
それを直に聞いていた議員が具体的な10個ほどの質問に対して、「頑張って行きたいという思いです」を繰り返すだけというのは、
もうなんというか、選んだ人たちを舐めきっているとしかぼくには思えません。

こういう党の危機の時に、自分なりの党の状況分析を語り、どの方向に、どういう行動をとっていくと、明快に語る能力があることを、
政治力というのではないでしょうか。
なにを聞かれても、アホの子みたいに目を見開いて「頑張って行きたいという思いです」とは、甘えすぎにもほどがあります。
「頑張ります」ならまだいいですが、「~という思いです」は首相に習った言い回しなんでしょうが、なおさらアホっぽいです。

ただ、政治によって国の方向がよくなるというような期待はあまり持たないほうがいいとぼくは思います。
政治の影響力は極力小さくて済むほうが、国が健全に機能している証拠だと思います。
なんか、今の政治は、国がよくなることというよりも、しなくてもいい事に手を突っ込んでかき回して、国民の自覚を促したんだみたいな、
そんな自己満足自己完結型の政治のような気がしてなりません。

人々の暮らしの足元を支え、どんな生き方であれ生き方の邪魔をできるだけしないのが、よい政府なんではなかろうかと思ったりします。