All Photos by Chishima, J.
(コシジロウミツバメ 以下すべて 2015年7月 北海道十勝沖)
予算やスケジュールの関係でなかなか開始できなかった今年度の十勝沖調査。本日ようやく初回を実施することができました。今年の道東の夏は風物詩の霧が少ないまま推移して来ましたが、少し前から例年通り霧のドツボにはまってしまいました。風・波は悪くなさそうな予報だったので、一番の懸念はやはり霧。午前5時半前。漁港は500m以上の視界があり、思いのほか視界良好と思ったのも束の間。出航して30分もすると濃い霧のベールに包まれます。その後も所々「霧だまり」みたいな視界のほとんど効かない区域があるのにくわえ、湿度100%、霧以上雨未満の「ジリ」が容赦なく髪や頬を濡らし、苦戦しました。
沿岸部では鳥が少なめで、フルマカモメやハイイロミズナギドリ、ウトウ、ヒレアシシギ類などが散見される程度でした。この時期は割と岸近くまでウトウやハイイロミズナギドリの群れが観察されるのですが、この2年ほど、霧多布や根室沖も含め、夏の道東太平洋でこれら魚食性海鳥2種が激減したように感じます。
出航しておよそ2時間。水深130m前後の海域でクロアシアホウドリやオオミズナギドリが姿を見せ始めると、鳥影が濃くなって来ました。何羽ものコシジロウミツバメが波間を飛び交い、水面すれすれを飛びながら、足踏みするように一ヶ所にとどまって採食する姿もありました。この海域では合計100羽を越えるコシジロウミツバメが観察されましたが、こんなことは本調査が始まって以来のことです。余りにも霧が濃く、オオセグロカモメやトウゾクカモメ類に襲われる危険が少ないので、比較的沿岸にいたのでしょうか。
コシジロウミツバメ飛翔下面
船を止めると、これから操業する漁船と勘違いしたらしく、クロアシアホウドリやフルマカモメが続々集まって来ます。翼を広げると2mにもなるクロアシアホウドリが、両足を開き、尾羽を立ててブレーキをかけながら着水する姿は実に壮観です。今日はコアホウドリが1羽も観察されず、オオミズナギドリは例年の同時期よりかなり多かった点など8~9月前半の海鳥相に近く、釧路沖の暖水塊の影響を受けているのかもしれません。
カンムリウミスズメは2群5羽を観察できました。視界が良かったら、もっといたかもしれません。いずれも至近距離で観察できました。船頭さんもすっかり慣れて、鳥に逃げられずに近付く術を体得されたようです。ただし、必要最低限の観察を行った後は速やかに離れるようにして、非繁殖海域とはいえ、十勝沖で少しでも快適に過ごしてもらえるようにしています。
カンムリウミスズメ
沿岸に近付いて、霧の中から防波堤のようなものがうっすら見えて来ましたが、霧が濃く、双眼鏡で見てもよくわかりません。ふと、「防波堤」がバラバラになって広がり始めました!実は800羽ほどのクロガモの越夏群だったのです。十勝海岸ではかなりの数のクロガモが越夏していて、早朝には海岸から見えることもありますが、日中はやはり少し沖(とはいえ港から1、2km)に出るようです。換羽中なのか船が近付くと潜水して逃げる個体が大部分で、飛んだのは1羽だけでした。
間もなくたどり着いた本物の防波堤には、どこからやって来るのか十勝では秋に多くなるカワウの群れや、キアシシギの姿もあり、沖で出会ったヒレアシシギの群れと合わせて鳥の世界では既に秋が始まっていることを実感しながら船を降りました。
その後はいつものように番屋で旬の魚介に舌鼓をうちながら歓談し、適宜解散しました。今回は直前の実施決定だったにも関わらず、小学生や幼児を含む12名の参加者がありました(高校生以下は参加費無料なので、今後もお子さんの参加を歓迎します)。参加いただいた皆様、船頭さんとそのご家族様、どうもお疲れ様でした。そして、いつもありがとうございます。
確認種:クロガモ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ アカアシミズナギドリ コシジロウミツバメ ヒメウ カワウ ウミウ キアシシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ オオセグロカモメ トウゾクカモメsp. カンムリウミスズメ ウトウ エトピリカ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ その他:マンボウ
クロアシアホウドリ
(2015年7月25日 千嶋 淳)