Photo by Chishima, J.
(ホシハジロのオス 背後はオオバン 2015年11月 北海道中川郡豊頃町)
(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年11月16日放送)
国際的な野鳥保護団体「バードライフ・インターナショナル」が作成する絶滅のおそれのある鳥のリスト、レッドリストに今年、カモの仲間のホシハジロが新たに加わり、驚かされました。ホシハジロは、オスでは赤茶色の頭、黒い胸に灰色の体がよく目立つ中型のカモで、潜水して水草やその種子を食べます。ヨーロッパからアジアまで、ユーラシア大陸に広く分布し、日本でも普通の冬鳥として都市公園の池などで見ることができます。
ところが、ヨーロッパではこの20年あまりで個体数が30~49%も減ってしまったことから、新たに絶滅危惧種に指定されたのです。激減の決定的な理由はよくわかっていませんが、狩猟や水面のレクリエーション利用、湖沼の富栄養化などにくわえ、地域によっては外来種のミンクによる捕食も影響を与えています。ヨーロッパほどではないものの、日本や韓国を含むアジアの個体群も減少傾向にあります。
たしかに、十勝では春と秋を中心に十勝川やその周辺の湖沼で割と普通で、15年以上前の湧洞沼では秋に1万羽を超える大群が水面を埋め尽くさんばかりでしたが、最近では多くても数百羽程度のまばらな群れしか見られなくなりました。市街地にありながら少数が子育てしていた釧路市春採湖での繁殖も、20年近く途絶えたままです。これらも世界的な減少傾向の反映かもしれません。
それなのに日本では依然として狩猟鳥のまま、銃口が向けられています。同様に減少著しく近年、国際自然保護連合のレッドリストにノミネートされたクロガモも、日本では未だに狩猟鳥です。日本のレッドリストは、国内繁殖数が少ない種や昔から希少な鳥は網羅していますが、これら2種のカモのように、最近になって危惧されるようになったものの整備が進んでいません。種の保全を目指すのであれば世界的な傾向に目を向け、それらをすみやかに国内での保護に反映すべきです。
(2015年11月15日 千嶋 淳)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます