鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然99 オジロワシ

2016-12-14 22:36:40 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.

オジロワシ成鳥   2012年1月 北海道十勝川中流域)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年12 月1日放送)

 オオワシと肩を並べる冬の猛禽がオジロワシです。その名の通り、成鳥では尾羽が真っ白なのが特徴ですが、オオワシの成鳥も尾羽が白いので、注意が必要です。また、幼鳥や若鳥の尾羽は白黒のまだら模様で、完全に白くなるには5、6年かそれ以上かかります。嘴の黄色や体の茶色は、冬枯れの景色に溶け込むように淡く、派手なコントラストが人気のオオワシに対して、通好みの渋さを持つ鳥といえるでしょう。

 東アジアからヨーロッパまで、ユーラシア大陸北部に広く分布しますが、特にヨーロッパでは家畜へ被害をもたらすとして銃や毒餌で殺されたり、農薬汚染による繁殖失敗が続いたりして、20世紀半ばまでに絶滅・激減した地域も少なくありません。それらの一部では、人為的な再導入や手厚い保護によって回復傾向にあります。個体数は少し前には5000~7000つがいと推定されていましたが、現在はヨーロッパだけでも10000つがい前後がいて、もう少し多そうです。

 オオワシ同様、ロシア極東で繁殖して越冬のため北海道に渡って来る一方、一部は北海道の主に東部と北部で繁殖し、一年中見られます。繁殖つがい数や夏に残る若鳥は近年増えており、十勝でも1990年代には3ヶ所しかなかった繁殖地は現在、可能性のある場所も含め、少なくとも10前後あります。

 繁殖期は早く、つがいによってはまだ雪深い3月はじめに卵を産みます。そのせいか、冬でもつがいと思われる2羽でいるものが、オオワシより多いように感じます。樹上や地上に並んで、時に「カッカッカッ…」とよく響く声で鳴き交わす2羽をじっくり見ると、大きさにかなりの開きがあるのがわかります。大きい方がオスと思われがちですが、実は大きいのはメスで、オスは平均して大きさで15%、体重では25%もメスより小型です。オスがメスより小型な傾向はワシ、タカなどの猛禽類に広く見られ、その理由として、小型ですばしこいオスが獲物を捕まえる、巣で卵や幼いヒナを温めるメスは大型化が進んだと理論的には説明されていますが、例外や矛盾する事例もあり、完全には解明されていません。


(2015年11月29日   千嶋 淳)

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