Photo by Chishima, J.
(ダイサギ冬羽 2015年11月 東京都江戸川区)
(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年11月9日放送)
サギをご存知ですか?日々ニュースや新聞を賑わす「振り込め」とか「オレオレ」といった類の犯罪ではありません。嘴と首、足の細長い優雅な水鳥です。本州以南から十勝に移り住んだ方は、身近なサギの大部分が灰色のアオサギであることに驚かれたかもしれません。本州以南の水辺で見られるサギのほとんどが「白(しら)サギ」と総称される、全身純白の数種類だからです。
白サギは十勝では繁殖せず、春から秋に少数がふらっと飛んで来るだけの珍しい鳥です。その中でも最大のダイサギは割とよく見られ、十勝川下流域や海岸部の湖沼で4月から11月に毎年少数が見られるほか、旧帯広温泉横の池でアオサギと一緒に冬を越したこともあります。アイヌの聖地チョマトーに隣接したこの池は、市街地の国道沿いにありながら多くのカモやサギが訪れる水鳥の楽園でしたが、残念なことに近年、その大部分が埋め立てられてしまいました。
浅瀬や干潟を歩き、あるいはじっと佇んで、餌の魚を見付けると長い首を素早く伸ばし、長い嘴で捕えます。伸縮自在な首の動きを可能にしているのは首の骨、頚椎(けいつい)。私たちヒトを含む哺乳類の頚椎は、ナマケモノやマナティなど少数の例外を除き7個です。キリンでさえ7個なので、首をしなやかに動かすことはできません。一方、鳥は11~25個の頚椎を持ち、首を器用に動かせます。サギ類は16~20個で、中央付近のいくつかの骨を極端に動かせるので、首を折り曲げることもできます。飛ぶ時には首をS字型に折り畳み、それも高い可動性を持つ頚椎があってこそ。形の似たツルやコウノトリの仲間は長い首を伸ばして飛びますが、サギは頭や首に対して体が小さく、首を伸ばして飛ぶと重心が前に偏ってしまうため、首を折り畳むと考えられます。
このように、生き物の暮らしを理解するには行動や生態をよく観察すると同時に、骨や筋肉、鳥であれば嘴や翼といった形(かたち)に注目することも大切です。
(2015年11月6日 千嶋 淳)
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