Photo by Chishima, J.
(夏の道東の海岸線を覆う濃霧 2010年8月 北海道根室市)
(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年7月20日放送)
夏の海岸線は、しばしば濃い霧に覆われます。内陸の帯広が晴れて暑いからと海辺に繰り出してみると、一寸先も見えない霧に包まれ、身震いするほど寒かったという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
霧というと釧路や根室が有名ですが、6~8月の3ヶ月の霧日数が50~60日のそれらに対し、広尾の霧日数は45日で、2日に1日は霧の発生する計算になりますから、十勝の太平洋岸もなかなかに霧の多いエリアです。
夏に北海道の太平洋岸で霧が多く発生するのは、親潮と黒潮が強く関係しています。まず、春から夏にかけて北上する黒潮で暖められた空気が、南風で北海道の近くまで運ばれます。北海道東部の太平洋岸には一年を通して寒冷な親潮が流れていて、その親潮に触れた暖かい空気が冷やされることで霧が発生するのです。ですから、海水温が気温より低い夏に霧が出やすくなり、道東の太平洋岸は日本でも有数の霧地帯となっているわけです。
視界を遮って海上交通の妨げになったり、洗濯物を干せなかったり、何かと厄介者の海霧ですが、悪いことばかりではありません。日照が限られ、夏でも低温の十勝海岸にはコケモモやガンコウランなど、本来は高山に生育する植物が群落を成し、独特の生態系を作っています。そして、霧の発生しやすい親潮と黒潮の接する海域は、プランクトンとそれらを食べる魚介類が豊富です。十勝沖の豊かな海の恵みは、夏の海霧がもたらしてくれると言っても過言ではありません。
(2015年7月14日 千嶋 淳)
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