
All Photos by Chishima,J.
(ミミカイツブリの冬羽 2007年3月 北海道広尾郡広尾町)
昨日、一昨日とアザラシ関係の用事で、襟裳岬を訪れた。風速10m以上の日が年間300日近くに及ぶ「風の岬」らしく、両日とも強風が吹きすさび、海面には白波が立っていたが、出産期の開始まで一月半を切った上陸岩礁では100頭近いゼニガタアザラシが休息していた。
襟裳岬のゼニガタアザラシ
2007年3月 北海道幌泉郡えりも町
岬の先端から沖合い2kmまで続く岩礁帯の、主に後半部分が上陸場。中央の広い岩場に80頭近くが上陸している。

アザラシ絡みだったとはいえ、行き帰りや空いた時間には若干の時間を、鳥見に割くこともできた。温暖で流氷の張り出しも少ない今冬はウミスズメ類、特に流氷の縁付近に多いエトロフウミスズメやコウミスズメをあまり見ることができないのが残念である。それでも漁港や海上には海ガモ類をはじめ、馴染みの海鳥たちがいて、それなりに楽しませてくれる。
今回印象的だったのはカイツブリ類の多さで、いくつもの漁港にミミカイツブリやハジロカイツブリが入って来ており、海上に目を転じるとアカエリカイツブリの小群が散見された。ミミカイツブリ、アカエリカイツブリの2種は道東沿岸では冬期も普通種であるが、これほどの数・頻度で港や岸近くで見られることはあまり無いと思う。ハジロカイツブリは外海より湖沼や内湾を好む性質から、それらが結氷する厳冬期には数を減らす。えりも在住の鳥見人と話す機会があったので、この話題にふれたところ、「確かに厳冬期(2月頃)には漁港に入らない。3月に入ると港内等で見る機会が増える。」とのことだった。
ハジロカイツブリ(冬羽)
2007年3月 北海道幌泉郡えりも町

アカエリカイツブリ(冬羽)
2006年3月 北海道根室市

厳冬期には南下していた、非繁殖期を海上で暮らすカイツブリ類が北上(一部のアカエリカイツブリは北海道でも繁殖するが)を開始しており、この時期沿岸での数が増えるのかもしれない。とすると、ガン類やウミネコ、アオサギ等の帰還ほどの派手さは無いが、カイツブリ類の北上もまた早春の風物詩といえそうである。
4月後半から5月にかけて、これらのカイツブリ類は地味な冬羽と同種であるのがにわかに信じられないくらい美麗な夏羽に衣替えするが、5月いっぱい渡りの続くアカエリカイツブリ以外はその頃にはもう、大部分が更に北へ移動している。
潜水(ミミカイツブリ・冬羽)
2007年3月 北海道広尾郡広尾町
ジャンプして勢いを付けて潜水する。

真っ赤な目(ミミカイツブリ・冬羽)
2007年3月 北海道幌泉郡えりも町
ミミもハジロも黒(褐)色と白を基調とした地味な冬羽の中で唯一、虹彩(とミミでは目先)だけが鮮やかな赤色をしている。

(2007年3月17日 千嶋 淳)
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