Ommo's

古い曲が気になる

きのうは、バカ暑い。きょうは、寒い。

2014-06-06 | 日記・エッセイ・コラム

 

  十日まえは、あまりの寒さにストーブをたいた。この数日、30度超えのバカ暑い日がつづいた。(隣町音更町駒場では、38度を超えた )。しかし、きょうはまた一転して、寒い。北海道は、まさにクレージー・ランドだが、地球は激しく生きているということかな。

 この激烈な気温変化のせいで、わが老体は、そこらじゅうが痛い。この左上腕の筋肉の激痛から天気予報をすると、おそらく明日は、雨だ。

 

 トラックの生産ラインで、溶接ロボットの前段の床板を打っていた。恐ろしく長い巨大なスポットガンを使う。上下の動きはバランサーで吊っているから、重さを感じず動かせるのだが、数カ所ガンを斜めにひねらないと打てないところがある。男二人でやっと持ち上がるような重量のガン。それを一人でひねる。瞬間だが強烈な腕力が必要だ。それを一日何百回とやる。左の上腕に凄まじい負荷がかかる。その仕事を6年やっていた。娘たちの養育費と学費を稼がなくちゃならなかった。

 その工員生活の後遺症が、バネ指と、この左腕の痛みだ。

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 これがバランサー。これはバネの力だが、テンションはセットできる。いろんなタイプ、いろんな構造、小さいものから、とんでもなく巨大な力のバランサーも、日本にはある。

 

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 スポット溶接のガンはいろいろあるが、基本的にはこの形状、原理だ。二枚の鉄の薄板を、エアーの圧で銅合金の接点が強く押しつける。その瞬間、接点に高圧電流を流す。二枚の鉄板のその一点は、電気抵抗で高温になって溶けてひっつく。これが基本原理だ。だが、これだけだと、接点の銅も溶解してしまう。だから、この接触する銅は常に流れる水によって冷却されている。

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 大型のスポット溶接ガンは、水のホース2本、エアーのホース、そして、2本の電気ケーブルがセットだ。このケーブルは激しく動くから、可動部は細い銅線が何百本も入って、ゴムで被覆された太いケーブルなのだ。中の細い銅線がある程度の数切れると、流れる電気量が下がるから、溶接されているように見えても、はがれる。慣れるとすぐわかるので、その太いケーブルを交換する。

 そしてその銅の接点も、冷却されてるといえ、電気をショートさせているのだから、瞬間千度以上になる。だから、燃焼するというか、燃えて消耗するわけ。先端がギザギザ溶け、残滓が付着した状態になり、同じ圧、同じ電流かけても、微妙に溶接できてない。つまり、はがれがでる。だから、何十点か打つと、ヤスリで銅の接点の先を磨いてやる。そしてこまめに交換する。

 トラックのボデー(キャブという)を打つ溶接工は、この天井から吊るされたガンをいくつも使って0.7ミリの薄板を溶接していく。

 わたしは、溶接ロボットのラインの前段で、ロボットのために床板を打っていた。つまり、仮どめというか、ロボットがあっという間に何百点、何千点と打つ、その部分をまず何十点かで溶接してやるんだ。それをロボットラインに流す。ロボットは、アームをブンブンさせて、バチバチ打っていくわけ。

(ロボットは、年式、型式の違う部品を選んでセットすることはできない。そういうシステムをつくることは、可能だろう。しかし、それは、あまりに費用がかかるだろう。人にやらせてほうが安い。だいたいロボットが、年式、機種の違うトラックの床板(3枚に分かれてる)を治具にセットする、システムをつくるだけでも鬱陶しいだろ。(今はやってるかも知れないが‥‥‥‥)

 日本のトラックメーカーは、世界中に売っているから、国によって微妙に部品がちがう。それに、日本のメーカーは、誠実だ。かなり古い車種の床板とかが、国内や海外のディーラーから注文があれば、つくって納品する。つくるのは、わしらだ。

 朝礼後、プリントアウトされた、長い指示書が渡される。型式のコード番号だけのものだ。大型も中型も、同じラインを流れる。この工場のラインに流れてエンジンを組まれて走り出す製品になるのが大半だが、床板の部品として海外にいく物、国内仕様の物なども指示書にある。その書かれた順番どうり、わたしの工程の床板をひたすらつくる)。

 わしら、キャブの生産ラインが、何百メートルもあるトラック生産ラインの、まず最初なのだ。運転席・助手席の床からトラックのキャブ生産は、はじまる。(エンジンとか、トランスミッションのラインは別よ)。

 

 しかし、盆正月の休みのとき、わたしは工場のメンテナンスに出勤していた。汚い掃除仕事だが、日当がいい。それに、ほかのラインがみれる。

 わたしは板金課、キャブのラインでみることのできない、別棟のエンジンのラインの清掃にいった。シビレた。できたばかりのエンジンが、休暇になったベルトラインにならんでる。その美しいこと。10トン車のディーゼルエンジンだ。古いエンジンでもその外形が好きなのに、車体に組み込まれるまえの、まっさらなエンジンだ。

 その美しいこと。あらゆうものに、あらゆるボルトに、あらゆるパイプに、虚飾はない。機能だけだ。必然があるから、こういう形状をして、こう配管される。巨大な内燃機関で、人に貢献する、その道具なんだろうけど、じつに美しいな、と感動したものだ。

 

 もし(そんなことはないが)、わたしが貧乏人から脱して、部屋に絵画を飾るなら、三菱ふそうの工場直送エンジンを、部屋の真ん中に飾る。10トン車のエンジンを。新しいエンジンは、あまりに美しい。


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