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古い曲が気になる

「太陽がいっぱい」と「リプリー」

2009-03-06 | 日記・エッセイ・コラム
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 まみこさんのコメントに、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」のテーマをピアノで弾いている、とあった。「太陽がいっぱい」の音楽は、イタリアの作曲家、ニーノ・ロータだ。

 
 ニーノ・ロータは、フランシス・コッポラ監督の「ゴッドファーザー」の音楽でよく知られているだろう。もともとクラシックの作曲家で、オペラや交響曲の作曲ですでに名声を得ていたが、映画監督のフェデリコ・フェリーニに出会い、映画音楽の作曲家として世界に知られるようになった。160本いじょうの映画作品がある。きのうのブログに書いたオードリー・ヘップバーン主演の「戦争と平和」も、音楽はニーノ・ロータなのだ。本業のクラシックでは、オペラが10作、バレエが5作品、4曲の交響曲、そのほか協奏曲、管弦楽曲、オラトリオなど多数ある。

 

 ニーノ・ロータの経歴をみると、みごとにクラシックの人だ。祖父は、作曲家でピアニスト、祖母と母も優れたピアニスト、11才でオラトリオを作曲して天才といわれ、ミラノ音楽院に入学する。卒業してローマのサンタ・チェチーリア音楽院で作曲を学び、17才で卒業。すぐに奨学金でアメリカに留学して、フィラデルフィアのカーティス音楽院で2年間、作曲法と指揮法を学んだ。その間、ニューヨークで大指揮者トスカニーニや作曲家コープランドの教えをうける。

 

 イタリアに帰国して、ミラノ大学芸術科で文学と哲学を専攻する。卒論が、ルネッサンスのヴェネツィアの作曲家・音楽理論家ジョゼッフォ・アルリーノの音楽美学に関する論文だという。学問の人だ。大学を卒業して、音楽院の教師をやりならがオペラと交響曲を発表していく。こういうキャリアの人が、熟練の中年になって、本格的に映画音楽をつくるのだから、強力だ。伝統のイタリアオペラの専門家だ。歌心の何たるかを熟知している。

 

 わたしが小学低学年のころにもニーノ・ロータの映画音楽が流行っていた。フェリーニ監督の「道 La Strada(The Road)」のテーマ、「ジェルソミーナ」だ。

 

 フランス映画「太陽がいっぱい」(1960年)は、ルネ・クレマン監督の1960年の作品だ。この映画のアラン・ドロンは、衝撃的にハンサムだ。最近のイケメンなんて軽い言葉では、とうてい表現できない圧倒的な二枚目だ。この映画一本でアラン・ドロンはスーパースターになるのだが、それはとうぜんだろう、とだれも反論できない超越した二枚目だ。

 
 

 役は、大金持ちの放蕩息子の友人を殺してしまう貧しい青年だ。放蕩息子のガールフレンドに恋心を抱く。これが観客の女性たちの同情をさそった。放蕩息子は許しがたいほどゴウマンだった。あんなやつは殺されてとうぜんだ。あまりに貧しく、あまりに美しい青年に、お客は共感した。ほんとうは悪知恵の犯罪者なんだが……。

 

 あれが中途半端なイケメンだったり、ちょっとハンサムでマッチョだったりしたら、ただの凶悪な犯罪者になってしまう。出川のような男だったら、客の憎しみの対象だ。しかし、アラン・ドロンの美しさは、お客を映像のなかに感情移入させ、殺人者への同情とシンパシーをさそった。そして、ニーノ・ロータのせつない音楽が心をうつ。ルネ・クレマン監督のみごとなキャスティングと演出だ。

 

 これよりまえ、ルネ・クレマン監督のヒット作品に「禁じられた遊び」(1952年)がある。このテーマ音楽も大ヒットした。作曲・演奏は、スペインのギタリスト、ナルシソ・イエペスだ。いまはスタンダードの名曲になっている。

 

 フェデリコ・フェリーニ監督映画「道」のテーマ ニーノ・ロータ作曲 http://www.youtube.com/watch?v=W_dF0IUQ5bs

 ルネ・クレマン監督「太陽がいっぱい」 ニーノ・ロータ作曲 http://www.youtube.com/watch?v=cpNSsvSmBpo&feature=related

 ニーノ・ロータ ゴッドファーザーのワルツ http://www.youtube.com/watch?v=F9r6gV9XY7o&feature=related

 ニーノ・ロータ ゴッドファーザーのテーマ http://www.youtube.com/watch?v=hkTQdEZbjQA&feature=related

 ナルシソ・イエペス 禁じられた遊び http://www.youtube.com/watch?v=UN6tcdiqELk&feature=related

 

 「太陽がいっぱい」は、アメリカのミステリー作家、パトリシア・ハイスミスの小説 The Talented Mr. Ripley が原作だ。おなじ原作をもとにして1999年に「リプリー」が制作された。監督はアンソニー・ミンゲラ、マッド・デイモンとジュード・ローが出演した。この場合、原作がおなじでも、リメイクといわないらしい。なんだかよくわからない。原作の小説はおなじでもシナリオはちがう、ということなのかな。

 

 パトリシア・ハイスミスは、わたしが好きな作家のひとりだ。スリラー、ミステリーだ。1921年、テキサスで生まれ、1963年からヨーロッパに移り、1995年にスイスで亡くなった。映画化された作品も多い。ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」やヴィム・ヴェンダース監督の「アメリカの友」もパトリシア・ハイスミスの小説が原作だ。

Beautiful Shadow: A Life of Patricia Highsmith Beautiful Shadow: A Life of Patricia Highsmith


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
幼いころ、母が古い映画のサントラをよく聴いてい... (まみこ)
2009-03-08 16:57:29
幼いころ、母が古い映画のサントラをよく聴いていました。
「道」は母の大好きな映画です。

どの曲もせつなくて心に響いてきます。

youtubeにいろいろ映像があるんですね。
どの映画もスクリーンで見たことがないので大きな画面で見てみたいです。

映画は見たことがないのですが「黒いオルフェ」の曲が好きです。
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「黒いオルフェ」は、ジョージ・ガーシュイン作曲... (ommo)
2009-03-08 18:42:12
「黒いオルフェ」は、ジョージ・ガーシュイン作曲のミュージカルですね、
「サマータイムSummertime 」が「黒いオルフェ」の挿入歌です。

ぼくらの世代では、ジャニス・ジョップリンのアルバム「チープスリル」の「サマータイム」が衝撃的でした。
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