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ロシア語の映画がみたくなって、レンタル屋から『Адмиралъ (The Admiral 邦題・提督の戦艦)』を借りてきた。これがなかなか感動的な映画なのだ。恋愛話の体裁だが、実在したロシアの男女がモデルだ。共産革命の犠牲者へのオマージュといえるだろう。
ロシア海軍の提督アレクサンドル・コルチャークは、ロシアに10月革命がおこると、白軍を率いてボリシェヴィキの赤軍と戦った総司令官だ。映画は、コルチャークの愛人で、後に結婚したアンナ・ティミリョーバとの恋が主題になっているが、赤軍との悲劇的な戦いは壮絶だ。
映画で描かれたように、白軍を率いてイルクーツクに向かう途中、同盟軍のチェコ軍の裏切りにあって捕らえられ、ボリシェヴィキ軍に引き渡される。そうして、1920年2月7日、アンガラ川の河畔で共産軍に射殺された。
妻のアンナは、コルチャーク将軍の妻だったということで、ソ連政府に何度も逮捕されて、収容所におくられた。釈放されても、危険な反革命分子ということで、翌年また逮捕される。なんどもなんども、長い年月くりかす執拗さだった。
アンナには、ひとり息子がいた。先の結婚のときの子供だ。画家になったが、1938年、ソ連政府に捕まり、 銃殺された。処刑のわけは、抽象画家で、コルチャーク将軍の義理の息子というだけの理由だった。
アレクサンドル・コルチャーク
コルチャークの銅像。ボルシェヴィキのレーニンの像は引き倒されて、アレクサンドル・コルチャーク提督の像が建てられる時代になったわけだ。この像の建立は、2003年だという。コルチャークが、共産主義者に処刑されて、83年の時が過ぎている。
コルチャーク提督の半生を描いた映画、『Адмиралъ (提督の戦艦)』の公開は、2008年のことだ。ソ連崩壊は、1991年大晦日。映画の制作は、ロシア連邦成立から16年がたっていた。
アンナ・ティミリョーバ
映画『提督の戦艦』で、アレクサンドル・コルチャークを演じるのは、ロシアの38才の俳優、コンスタンティン・ハベンスキーだ。世界で、いまもっとも知られているロシアの俳優という。
ハべンスキーの『ハ』は、日本語にない音なので、なかなか発音がむずかしい。ロシアのキリル文字では、Хабенский と書いて、Ха は喉の奥から『ハッ』と発音する。(ローマ字では、ハベンスキーを Khabenskiy と表記している)。
コンスタンティン・ハベンスキー。
アンナ・ティミリョーバを演じるは、25才のロシアの女優、エリザベータ・ボヤルスカヤ。
それにしてもロシア語というのは、美しい言葉だ。つくづくそう思う。ひさしぶりに超大作のロシア映画を堪能して、その言語の美しい響きに感動した。
『提督の戦艦』予告 http://www.youtube.com/watch?v=CjKHYENLThw&feature=channel
コンスタンティン・ハベンスキーは、歌も歌う。舞台俳優だけあって歌もうまい。歌は、ヴラジミール・ヴィソツキーの作品、『モスクワ・オデッサ』。
コンスタンティン・ハベンスキー Москва-Оедсса http://www.youtube.com/watch?v=GcYMUGvm2a0&feature=related