1980年(昭和55年)にジョン・レノンが射殺された。おなじ年の7月25日、ロシアで、ヴラジミール・ヴィソツキーが亡くなった。ヴィソツキーは、ジョン・レノンよりふたつ年上の1938年生まれだ。42才で亡くなった。ヴィソツキーの有名な歌に「大地の歌」がある。詩の翻訳がある。
誰が言ったのだ、「すべては焼けた。
もう大地に種をまいても駄目だ……」なんて。
誰が言ったのだ、大地は死んだなんて。
違う、しばらくひそんでいるだけなのに……
母なる力は大地から奪えない。
抜き去れない、海の水を汲みつくせないように。
誰が信じたのだ、大地は焼け死んだなんて。
違う、黒ずんだだけだ、悲しみのあまり。
切り込みのように続く塹壕
爆撃の痕は……ぱっくりと開いた傷口。
剥きだしの大地の神経は
この世ならぬ苦しみを知っている。
大地はすべてを堪え忍び、時を待つ。
大地は不具者に数えるな!
誰が言ったのだ、大地はもう歌わないなんて、
永遠に黙りこんだなんて。
違う! 大地は鳴り響き、うめき声をかき消す。
すべての傷口、すべてのはけ口を使って。
だって大地は……俺たちの魂、
軍靴で踏みにじってはいけない!
誰が言ったのだ、大地が死んだなんて。
違う、しばらくひそんでいるだけなのに……
(「大地の歌 Песня о Земле 」 マリナ・ヴラディ著『ヴィソツキー あるいは、さえぎられた歌』から。詩の翻訳は、宮澤淳一氏)
ヴィソツキーは、この詩をこう歌う。
ヴィソツキー 大地の歌 Песня о Земле http://www.youtube.com/watch?v=5sDunY6ApMs&NR=1
フランスの大女優、マリナ・ヴラディが、ヴィソツキーの最後の奥さんだった。そのマリナ・ヴラディが、最愛の旦那ヴィソツキーを回想しているのが、『ヴィソツキー あるいは、さえぎられた歌』だ。本を読んで動揺する。こんな感情が揺さぶられることはないのだが……だから、先を読めない。400ページくらいの翻訳本に、もうひと月もかかっているのだ。
ヴィソツキー Кони (馬)http://www.youtube.com/watch?v=shi_TBr_TbI
ヴィソツキーが弾いてるギターは、7弦のギターだ。ロシアでは、ジプシー・ギターといわれ、ロシアン・セブン・ストリングス・ギターともいわれるらしい。
わたしは、ヴィソツキーが弾くギターをみるまえは、7弦のギターを知らなかった。無知だ。