やっと昼間の気温がプラスになって、雪もすこしづつ融けてきた。やっと春近し、という気分だ。
だが、すぐにまた、冬。
母が亡くなった直後は、『この冬だけ我慢して、夏がきて母の一周忌法要を済ませたら、父に施設に入ってもらって、娘たちや孫たちが暮らす東京に帰ろう』と、思っていた。
しかし、そうもいかず、2年目、3年目の冬を越してきた。
『もうゴメンだ! この長い暗い冬も、父との無言の、この陰鬱な暗い生活も、もうウンザリだ。今年こそ、母の命日が過ぎたら、東京にもどろう!』
と、固い決意だった……のだが……………。
いま春が来て、すぐに夏。はっきり決めなきゃな。今日から5ヶ月後、8月半ば、お盆をすぎると冷たい秋風が吹き、すぐにまた冬だ。
1月に90歳になった父は、ますます元気で、毎日酒を飲み、タバコをバクバク吸って、気ままに生きている。施設に入って、この優雅な生活を送ることは不可能だろう。
しょうがない。あと1年でも2年でも3年でも、4年でも…………5年でも、わたしの手に負えなくなるまで、とことん付き合ってやるか!
と、覚悟を決めつつある、今日この頃だ。またすぐ冬だからね…………。
きっぱりと、この町に骨を埋める覚悟で、この家の二階も改装して住環境を冬仕様にして、わたしの手に負えなくなるまで、とことん父親の介護をしようか?
臨終間際の母に「じいさんのこと、頼むね」と言われ、「できるだけのことはするよ」………………と応えた、あの約束を最後まで果たすか。
(春になったら東京にもどるんだ、と、仮の宿と思うから、この三年、長い冬を超厚着で十度以下の室温に耐えてきた。だが、この先何度かの越冬が続くなら、二階の部屋の仕切り壁をぶち抜いてワンルームにして、灯油のファンヒーターを設置する。そう決断した今日であった)。