tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ファンドの欲望・アルゼンチンの対応

2014年06月23日 15時43分50秒 | 国際経済
ファンドの欲望・アルゼンチンの対応
 今日、新聞の朝刊にアルゼンチン政府の全面広告が出ているのをご覧になって、驚いた方は多いと思います。私も正直驚きました。
 一国政府が外国の新聞に全面広告を出すといったことは、あまり見たことがありません。余程困って、世界の世論に訴えたいということなのでしょう。

 主な内容は、
・アルゼンチンは2001年のデフォルト以来、経済再建に努力している。
・大部分の債権者は債務カットに協力してくれている。(注:92パーセント)
・一部のヘッジファンドがアメリカの連邦裁に提訴し、全額返済を認められた(グリーサ判決)。
・ファンドはデフォルト債を安く買って、17倍に増やそうとしているのだ。
・これを認めれば、債務カットの応じた債権者は黙っていない。
・そうなればアルゼンチンは再びデフォルトで、再建努力は水泡に帰す。
・多くの国、国際機関、専門家も、判決に懸念を表明している。
・公正でバランスの取れた司法判断を期待する。

 同様な全面広告はウォールストリートジャーナルが皮切りだそうですが、マネー資本主義の、カネ、カネ、マネー、マネーの醜い面丸出しの事件のように感じます。

 何年か前、このブログで、「ファンドの敗北」というタイトルで書か出ていただきました。また、「労『資』関係の復活?」というテーマでも書かせていただきました。
 
 資本主義勃興の初期に露わだった、資本の強欲が労働者や他のすべてを犠牲にしても資本の増殖だけに邁進するという「カネに弱い人間性」の側面は、マルクス思想、福祉国家の理念、企業における経営者革命などなどによって、超克されてきたと思われてきました。

 しかし近年アメリカ主導のマネー資本主義、その手段としての金融工学の発展などが、再び「資本原理主義」とでもいうべき、カネで金を創るという作業に専念する人達(例ヘッジファンドなど)を生んだようです。

 折角、資本主義の進化が、資本主義は経済成長を進め、技術革新を促進して、「人類社会を豊かで快適なものにする」ためという方向を見出してきた20世紀後半から21世紀にかけての人類社会の進歩の中で、「資本の強欲の復活」は許されるべきではないでしょう。

 勿論アルゼンチンの行動も、多少確りしていません。頑張って債務返済に努力して来たのに疲れたのでしょうか、ここ3年ほどは経常収支が赤字になり、外からのファイナンスが必要になっています。

 しかし対応すべき方向は、そこから金をむしり、デフォルトにして再建努力を水の泡にするのではなく、「稼ぎの範囲で生活し」借金をより早く返せるように努力することを支援するという事でしょう。
 関係する方々の、資本の強欲と支配ではなく、「人間が主人公」の世界経済の健全化、人類社会全体の着実な前進を見据えた対応を期待したいところです。