年金試算を超える経済社会へ
厚生労働省は今後100年を見通した年金財政の状況について報告しました。田村大臣も、100年先まで見通せるものではないという趣旨のことは言われたようですが、こうした見通しを国民としてどう受け取ればいいのでしょうか。
これまでの日本が、少子高齢化、「失われた20年」のゼロ成長経済に呻吟してきただけに、甘い見通しは禁物で、国民も気持ちを引き締めて考えてくださいということなのかもしれません。
今回の試算の内容を見ると、何とか所得代替率50パーセントを維持しようと苦労されたようで、実質0.4パーセント以上の成長が出来れば、なんとか50パーセントが確保できるという結果になっています。
年金制度というのは、最も基本的には、日本経済の生み出したGDPの内どれだけを公的年金制度に分配するかという問題で、年金専門家の細かいテクニックはあるにしてもそれで安心出来る年金が保障されるわけではありません。
老後、年金で安心して暮らせるためには、日本経済がきちんと成長しなければなりませんし、無暗に少子高齢化が進まないといったことが最も大事でしょう。
そういう意味では、こうした日本経済の最も根幹の部分についての本格的論議が本当は大事なのでしょう。
今回の試算は、最も高い経済成長のケースを実質で1.4パーセントとしています。円高の桎梏を脱出し、正常な経済活動が可能になった日本としては、もう少し意欲的な成長率を掲げられそうですし、その実現の可能性の方が高いと思います。
少子化問題にしても、30年、50年、100年先を考えたら、今、多少回復基調にある合計特出生率がさらに底上げされるような、国民意識の変革、それを支える日本経済・社会に対する明るい将来展望を持てるような積極的な政策が必要でしょう。
少なくとも、子、孫の代には今の親の代より生活が良くなるという意識を国民が持つことが必須でしょう。
これからの日本経済は順調に回り始めると私は確信しています。その為にはギクシャクしている政治、国際関係も、出来るだけ早く安定させなければなりません。現政権の最重要の課題でしょう
そうすれば、公的年金を補完する、財形制度や私的年金の多様な発展も可能になり、自助、共助、公助、のバランスの取れる社会が実現できるはずです。
日本は1980年代まで、そうした経済・社会、国づくりを目指して、かなりの成功の実績を上げて来ていました。「ジャパンアズナンバーワン」はそれへの評価でしょう。それを破壊したのは為替操作を含むマネー融資本主義です。
今一度日本は、政府も企業も国民も、良きビジョンを掲げて、新しい時代の開拓に取り組み、あるべき姿を内外に問いかけるときのように思います。